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三星インキ株式会社
ブリードについて ②

ブリードについて ② - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

今回は顔料を使用したインキを用いた印刷物でもブリード現象が発生することがあるということについて書かせて頂きます。

染料タイプの色材を使用していないインキ = 顔料を使用したインキを使用すればブリード現象は発生しないと考えがちですが、実はそうではないのです。
実は顔料でも耐性の弱い(ブリードが発生しやすい)ものがあり、比較的鮮明な色調を有する顔料が該当します。

皆さんも耳にされたことがあると思いますが、インキメーカーがブリード現象発生に関してよく注意勧告しているのが『マゼンタ』と呼ばれるインキです。
当インキは色調的に鮮明な紫色の色調を有しており、意匠性を持たせるために使用されます。
実はこの『マゼンタ』に使用している顔料は、染料を基本として処理をすることで顔料化しているのですが、どうしても染料の性能がなくならないために一般顔料に比べると耐性が劣る傾向となります。
この『マゼンタ』インキ以外にも蛍光インキなどもブリード現象を発生させることがあり、特長ある印刷効果(高鮮明)を有するインキに使用している顔料は耐性が弱い傾向があるものもありますので、使用時は注意して下さい。

でも、実は皆さんが広く使用されているインキにも耐性の弱い顔料を使用しているものがあるのです。

それは墨インキです。

いやいやちょっと待てと。
墨インキは耐光・耐性が良好な顔料であるカーボンブラックを使っているのに、なぜブリード現象が発生することがあるのかとご指摘を受けるかもしれません。
しかし、本当に発生する可能性があるのです。

実は墨インキに使用しているカーボンブラックは真っ黒ではないのです。
どちらかというとちょっと黄色っぽいんです。
したがって、色調的に黒味とする(黄味を消す)ために赤味・青味の色材を補色することがあり、補色する色材には着色力が強い青味・赤味を有する『アルカリブルートナー』と呼ばれる色材が使用されることがあります。
そしてこの『アルカリブルートナー』こそが耐性の弱い色材なのです。

墨インキを使用した印刷物に、ニスなどの後加工を施した際、青くブリード現象が発生した場合は墨インキ中の『アルカリブルートナー』の影響による可能性がありますので、有機溶剤やアルコールなどが接する可能性がある印刷物を印刷される場合は、インキメーカーに『アルカリブルートナー』の使用有無の確認や、相談を行って『アルカリブルートナー』を使用していない墨インキを紹介してもらって下さい。
ただし、着色力の強い『アルカリブルートナー』を使用しないということは、黒色感がどうしても低下してしまいますので、この点はご了承下さい。

また、今回挙げた顔料以外にも耐性の弱いものがありますので、印刷物の使われ方や後加工の方法などでブリードの心配がある場合は、できるだけ耐性の強い顔料を使用したインキ(耐性インキ等)を使用するようにしてください。

なお、ブリード現象は皮膜が完全に形成していない(半液状)状態で溶液と接触することで起こりやすくので、後加工までの時間を多く取る(溶液と接触するまでの時間を多く取る)、または後加工時に使用の溶剤や糊成分を変更する、あるいはドライヤーなどを添加して皮膜形成の促進と強度を上げるなどの方法も検討してみて下さい。
ただし、あくまでも起こりにくくする方法でしかありませんので、完全に抑制するにはインキの選択が必須となりますので、是非インキメーカーに相談して下さい。

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