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図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]112
Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。)

タイトルにかかげたのは1931年にインドの図書館学者ランガナタンが著書『図書館学の五法則』で図書館のサービス原則として五法則を提示している内の第三法則です。

五法則とは
第一法則:Books are for use.(図書は利用するためのものである。)
第二法則:Every reader his or her book.(いずれの人にもすべて,その人の本を。)
第三法則:Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。)
第四法則:Save the time of the reader.(読者の時間を節約せよ。)
第五法則:A library is a growing organism.(図書館は成長する有機体である。)
というもの。

大学での図書館司書課程や司書講習での図書館概論の講義で必ず聞かされているはずのものです。筆者の受講生としての経験は1963年当時、教員経験は2013年頃です。が、現在ではどうなのでしょう? 

2026年の今日この原則を突然思い出したきっかけは私の愛読コミック『税金で買った本』の最新18号に登場したからでした。

『税金で買った本』の主人公ヤンキー石平くんは小学生のとき図書館から借りた本を返してないと督促を受け、小学生の時ぶりに図書館を訪れ、紆余曲折を経て、図書館でアルバイトをすることになりました。現時点ではアルバイトを続けながら大学の司書資格課程で学んでいます。

最新18号では石平くんのアルバイト先の公共図書館に電子図書館サービスを導入することになりました。電子書籍を配信で貸し出すサービスを行う全国の公共図書館が2026年1月1日現在3310館中1821館で、55.0%(一般社団法人電子出版制作・流通協議会 電子図書館・コンテンツ教育利用部会による)、全国の公共図書館中約半数になっています。

従来の紙の本を貸し出すサービスに重点を置いていた時に纏わる様々な図書館員にとっての面倒な仕事も電子図書館ならクリアーできるものもあり、また電子図書館であるがゆえに紙の本より費用が必要になったり、かえって人手がかることになる場面もあります。

☆電子図書館サービスの利点は
・何といっても簡単なキーワード検索で読みたい本を探せる
・返却、延長は自動(返却の督促不要、貸出期間延長も自宅のPCやスマートフォンから)
・破れなどの修理不用
・弁償なし(ものとしての実態がない)
・バリアフリー(図書館に出かけなくて良い。視覚障がい者への読み上げ機能あり、身体障害があっても重い本を持ったり、ページをめくったり、読書のために座るなどの姿勢を保たなく良い)
などの利点があります。

これまでの本好きは図書館員に限らず紙の本を好む傾向があります。
しかし、作家市川沙央氏は芥川賞受賞作『ハンチバック』で難病の主人公が負う、上に挙げたような電子図書館がクリアーしているバリアーを示し、紙の本の読書にたいする痛烈な批判をしています。これは図書館関係者にも衝撃を与えた。とのコマが『税金で買った本』18号にも登場します。
筆者も御多分にもれずハッと気付かされました。

このような電子書籍サービス、と従来の紙の本の貸出しサービスとどちらかではなく、どちらも提供するのが、さまざまな個性をもつ図書館利用者にとって良いのだ!
とヤンキー石平くんは気づきます。
そこで彼は 「時代や環境でグニャグニャ変わってくのが…」「『成長する有機体』…図書館じゃん!?」と叫ぶのです。そう!図書館学の五法則の第五法則です。
正直、今まで筆者にはこの第五法則がピンと来ていなくて、単に「そうねェ~蔵書はドンドン増えるしネ」くらいの理解でした。

筆者は現役図書館員を20数年前に引退し、現在では図書館の蔵書の修理や将来でもキチンと読むことができるように本(主に紙の)を保存するのには、どのような修理や書庫管理をすべきかなどのテーマに「図書館資料保存ワークショップ」や「修理系司書の集い」の仲間とともに取り組んでいます。

これらは、一見電子図書館とは無関係な時代遅れのテーマと思いきや、
Every reader his or her book.=誰にでもその人が必要とする本を図書館は提供しなければならない。
Every book its reader.=すべての本にはその本を必要とする読者が存在する。
時空を超えた、この2原則こそ“図書館資料保存”のバックボーンである!!とヤンキー石平くんに気付かせてもらいました。

*『税金で買った本』についてはWEB MAGAZINE「図書館に修復室をツクろう!」88図書館の引き算サービスで紹介しました。なお今年の夏、NHK総合テレビでドラマ化されるそうです。

あとりえ二頁
堤 美智子

写真3 | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。) - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

インドの図書館学者Ranganathan生誕100年を記念してインドで発行された記念切手
出典:S. R. Ranganathan 1992 stamp of India(India Post, Government of India)/Wikipediaより引用

写真1 | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。) - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

1931年に出版された『図書館学の五法則』標題紙
出典:『The Five Laws of Library Science』1931年初版(S.R. Ranganathan 著/Madras Library Association)/Wikipediaより引用

写真2 | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。) - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

『図書館学の五法則』第2版の日本語版 1981年発行 標題紙

写真4 | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。) - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

出典:『税金で買った本』第18巻(ずいの・系山 冏/講談社)

写真3 | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。) - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

インドの図書館学者Ranganathan生誕100年を記念してインドで発行された記念切手
出典:S. R. Ranganathan 1992 stamp of India(India Post, Government of India)/Wikipediaより引用

写真1 | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。) - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

1931年に出版された『図書館学の五法則』標題紙
出典:『The Five Laws of Library Science』1931年初版(S.R. Ranganathan 著/Madras Library Association)/Wikipediaより引用

写真2 | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。) - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

『図書館学の五法則』第2版の日本語版 1981年発行 標題紙

写真4 | Every book its reader.(いずれの本にもすべて,その読者を。) - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

出典:『税金で買った本』第18巻(ずいの・系山 冏/講談社)