平和紙業株式会社
紙に歴史あり 「新バフン紙N」
「新」が付くかと思えば、「N」が付く紙もあります。
それどころか、「新」と「N」の両方が付く紙の代表選手が「新バフン紙N」です。
もともとは「新バフン紙」として、1999年に発売されました。
問題は「バフン紙」です。どう考えても「馬糞紙」でしょう。まさか、馬の糞を紙にしたとは思えません。紙を抄紙機で作るようになった時の原料は、今のような木材パルプからではなく、稲わら、麦わらといった、藁パルプ等が主流だった時期があります。見た目に藁パルプの繊維が見え隠れするような厚紙の事を、「バフン紙」と呼んだようです。
こう書きながらも、私自身、実際に「バフン紙」を見たことはありませんので、その紙が、具体的にどんな表情なのか、厚いのか、薄いのかも分かりません。
イメージとしては、ボソボソとした風合いで、繊維が紙の表面に見え隠れする紙。
素朴であり、郷愁を誘うような紙だったのでしょう。
こうしたイメージをもとに、今風に、新しいコンセプトで仕上がられたのが、「新バフン紙」と言うわけです。
発売当初は5色3連量(90㎏、120kg、270kg)の15アイテムの紙でしたが、その後濃色10色を追加。同時に180㎏の厚みを追加して、15色4連量の60アイテムの商品になりました。
これまでにもザラザラした紙や、ボコボコした紙はありましたが、「新バフン紙」は、その名の通り、ザラザラ、ボコボコしながら、更に細かな繊維が表面に見え隠れし、まるで土壁のような表情の、素材感たっぷりの紙でした。
この紙の色の中には「ゆげ」と言う色名もあり、“バフン”で“ゆげ”という、なんともシュールな組み合わせがあり、この紙を進める際に苦笑したものです。
書籍のカバー、表紙、見返しから、カード、タグ、名刺 等々、その用途は多岐にわたり、どんな場面でもしっくりと収まる不思議な魅力のある紙として、多くの方に愛されてきました。
中には、名前が悪いので、使わないと言う方もいらっしゃいましたが…。
2009年には、15色のうち、1色を廃色としましたが、根強い人気は、衰えることが無く、多くのグラフィックシーンで活躍を続けることとなりました。
こうした中、思いもかけぬ出来事が起こります。2015年に、この紙を作っている抄紙機が、メーカーの都合で停機せざるを得ない状況になってしまったのです。
一時は、他のメーカーに同等の商品を作ってもらう道を選ぼうかと考えていましたが、同じメーカーの別の抄紙機での生産が可能とのことから、新たに抄紙機を変えての生産に移行しました。
毎度申し上げるように、作る機械が変わると、同じ紙は作れないもので、極力これまでの紙と、同じようなものを作らざるを得ないのです。
「新バフン紙」も同様で、従来の紙と全く同じにはならないけども、極力近いものを作ることで、生き延びる道ができたのです。
とは言え、紙を作る際の処方が、従来のものと違ったり、微妙な色の違いなどから、これまでの「新バフン紙」とは、区別する必要が生じ、その結果商品名も「新バフン紙N」とせざるをえなかったのです。
そして、この年の10月以降は、新しい処方での紙作りが始まり、「新バフン紙N」として順次生産が始まることになりました。
処方が変われど、多くの方は、この紙を見捨てることなく、これまで通りご利用いただき、私たちも一安心したものでした。
バフン紙を今風の新しい紙に仕立て上げたので「新バフン紙」ができ、処方を変更しなければならなかったので、「新バフン紙N」となり、それでも未だに多くの方に愛される紙。
何時の時代でも、土壁のような穏やかな表情を持った紙が、安心感を与えてくれるのかもしれません。
新バフン紙の詳細はこちら
https://www.heiwapaper.co.jp/products/details/0700480.html