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平和紙業株式会社
「続報」

前回触れた、出版界における紙書籍と電子書籍について、今年の上半期(1~6月)の販売実績がまとまったので、少しお話させていただきます。

この上半期における出版の中で、紙媒体(紙書籍+紙雑誌)は、前期比で減少し、電子媒体(電子コミック+電子書籍+電子雑誌)は、前年比微増と言う結果となっています。
紙の書籍は3,526億円で、前期比95.7%、紙の雑誌は2,434憶円で、前期比88.2%。合計で5,961憶円となり、前期比92.5%でした。
一方、電子コミックは2,097憶円で、前期比110.2%、電子書籍は230億円で前期比99.6%、電子雑誌は、46億円で前期比86.8%。合計2,373億円で、前期比108.5%でした。

紙媒体と電子媒体の合計では、8,334億円となり、前期比96.5%となっています。
つまり、全体的に販売金額が減少していて、特に紙媒体が前期比で7.5%減少しています。
中でも紙の雑誌は、前期比で11.8%減少していて、雑誌の減少は歯止めが効かない状況となっています。それを象徴するかのように、この半年間で月刊誌の創刊は「0」になっています。

電子媒体の出版は、これまで二桁成長が続いていましたが、今期は8.5%増となり伸び率が縮小しています。
特に電子コミックが10.2%増にとどまった背景として、20年、21年とコロナ禍での巣ごもり需要と、相次ぐメガヒット「鬼滅の刃」や、「呪術廻戦」の翌年であるあることが鈍化の原因と思われます。

このことは、コロナ特需で増加したユーザー数の伸びは落ち着き、市場は成熟期に入ったように感じます。しかし、電子コミックにおいては、従来の横スクロールから、縦スクロールへと移行しつつあり、この影響もあって今後の動向には注視が必要だと思います。

いずれにせよ、紙媒体の縮小は継続しており、電子媒体への移行が進んでいることに変わりはありません。電子媒体が成熟期を迎えるのは、もう少し先になりそうですから、まだまだこの傾向は続くものと思われます。

とは言え、紙を扱う弊社としては、紙の書籍が減少しているのは、残念であると同時に脅威でもあります。紙の書籍が年々減少すれば、その分、紙の使用量も減少することになります。
最近では、紙の書籍のメガヒットも生まれず、紙業界にとっての特需はほぼ目にしなくなりました。特に弊社の扱うファンシーペーパーなどは、書籍の本文用紙ではなく、カバー、表紙、見返しの部分に使われることが多く、ただでさえ使用量は少ないのに、書籍の減少は大きな痛手となります。

また、ここにきて、原材料の値上げ等が、最終製品の単価にも反映することとなってきます。前回書いたように「作家買い」が続くなら少しはこの状況も少しは緩和されるのかもしれませんが、書籍の単価がこれ以上高騰すれば、自ずから購入を控えることに繋がり、結果として更なる販売の縮小につながってしまいます。

紙の書籍と言う文化が今後も継続するのか、紙を捨て、電子媒体の書籍に移行していくのか、行く末を案じなければならなくなりました。
「その昔、紙の書籍があった」と言われる日が来るかもしれないのです。

最近の作品の中で、弊社の取り扱う紙が使われている書籍を少しだけご紹介しておきます。
もし興味があれば、是非お買い求めいただき、本の内容と共に、使われている紙にも、少し興味を持っていただければ、紙屋冥利に尽きるというものです。

作家:宇佐見りん  書名:「くるまの娘」 出版社:河出書房新社 装丁:鈴木久美
使用紙:「トーンF CG2(表紙・扉)」
第一作目の「かか」で第56回文藝賞と、第33回三島由紀夫賞を受賞し、デビューした22歳の小説家。第二作目では『推し、燃ゆ』で、第164回芥川賞受賞。そして第三作目が『くるまの娘』です。

作家:高野隼子 書名:「おいしいごはんが食べられますように」 出版社:講談社
装丁:名久井直子 使用紙:「トーンF CG3(表紙) TS-9 N-9(扉)」
2019年『犬のかたちをしているもの』で第43回すばる文学賞を受賞し、デビュー。
第167回芥川賞受賞作品です。

作家:池井戸潤 書名:「ハヤブサ消防団」 出版社:集英社 装丁:岩瀬 聡
使用紙:「かぐや」
2022年9月5日発売予定です。
半沢直樹シリーズや、下町ロケットシリーズなど、既にご存知の方も多いはず。
その池井戸氏の最新作が、この9月に発売予定です。こうご期待。

(写真1) | 「続報」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)2022年1~6月までの出版推定販売額です。前年同期比では、全体の金額は減少しており、特に紙の雑誌の減少に歯止めがかからない状態となっています。

(写真2) | 「続報」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)宇佐見りんの「くるまの娘」の表紙と見返しに、「トーンF CG2」が使用されています。物語の情景と、装丁が上手く調和した一冊です。装丁家は鈴木久美さん。

(写真3) | 「続報」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)高瀬隼子の「おいしいごはんが食べられますように」の表紙に「トーンF CG3」が使用されています。扉には「TS-9 N-9」が使われています。装丁家の名久井直子さんらしい柔らかな装丁です。

(写真1) | 「続報」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)2022年1~6月までの出版推定販売額です。前年同期比では、全体の金額は減少しており、特に紙の雑誌の減少に歯止めがかからない状態となっています。

(写真2) | 「続報」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)宇佐見りんの「くるまの娘」の表紙と見返しに、「トーンF CG2」が使用されています。物語の情景と、装丁が上手く調和した一冊です。装丁家は鈴木久美さん。

(写真3) | 「続報」 - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)高瀬隼子の「おいしいごはんが食べられますように」の表紙に「トーンF CG3」が使用されています。扉には「TS-9 N-9」が使われています。装丁家の名久井直子さんらしい柔らかな装丁です。