三星インキ株式会社
抗菌インキについて
今回は抗菌インキについて
前回は抗菌加工について説明しましたが、今回は抗菌効果を有する印刷インキ、一般的に抗菌インキと呼ばれているものについて説明致します。
前回説明した通り、抗菌剤(抗菌効果を有する金属等を加工して製造された材料)などを処方・添加し、印刷物に塗布する事で印刷物に抗菌効果を付与できる印刷インキを抗菌インキと呼びます。
抗菌インキに使用される抗菌剤の種類及び添加量等はインキメーカーによって異なりますが、抗菌剤が細菌と接触する事で抗菌効果が発揮される事から、一般的に多くの抗菌剤が細菌と接触する環境であればあるほど、抗菌性は高くなります(抗菌効果の強さは抗菌剤がどれくらい存在しているか、そしてどこに存在しているかが重要)。
従って、印刷方法を間違えると、たとえ抗菌インキを使用したとしても、満足した抗菌性を得られない事があります。
間違った方法として挙げられるのは、印刷時に印刷適性を改善させる、あるいは価格面の調整のため 等から抗菌性を有しない材料を用いて希釈・混合された場合は、抗菌剤量が不足して目標とする抗菌性を得られない事があります(何らかの調整が必要な場合は、インキメーカーに確認の上、推奨材料をご使用下さい)。
またインキ盛りが少ない場合も同様であり、インキ盛りが少ないと抗菌剤の絶対的な存在量が少なくなり、満足する抗菌効果を得る事ができない事があります。(写真1)
ではインキ盛りを大きくすれば抗菌剤の割合も増量でき、より抗菌効果の高い印刷物を得られるだろうと思われますが、実はそんなに上手くいかず、インキ盛りに比例して抗菌効果は高くならないのです。
では何故インキ盛りを大きくしても抗菌効果は高くならないのでしょうか?
抗菌剤は金属を加工して製造されているため比重が重く、更にインキへの分散や印刷適性を有する(印刷の邪魔にならない)ために、ある程度細かな粒径のものを使用しています。
この事から、粒径が細かく比重の重い抗菌剤は重力に引っ張られてインキ皮膜下部へ沈降しやすく、インキ盛りが大きくなると、底に沈降した抗菌剤の上にインキが覆う(抗菌剤と細菌との接触が減る)状態になることから、抗菌効果が効率よく発揮されません。(写真2)
つまり、抗菌インキを印刷する際、抗菌剤がインキ皮膜から少し頭を出すような状態にするのがベストの皮膜状態であります。(写真3)
この事から、抗菌インキを印刷した上から抗菌性を有しないフィルム貼り加工等を行えば、折角抗菌インキを使用したにもかかわらず、抗菌効果は得られないという事になります。
なお、多くのインキメーカーはOPニスやコーティング剤を中心に抗菌インキを製造・販売していますが、これは最終的に印刷物の最外部に存在する事が必然的に多くなる(細菌の接触する可能性を高くする)のはOPニスやコーティングであるためであります。
以上の事から、抗菌インキを上手く印刷する方法をまとめると、
①粒径が細かく比重の大きい抗菌剤は経時によって沈降する可能性が高いので、使用前は必ず撹拌してから使用すること
②抗菌性を有していない材料で希釈し過ぎないこと
③抗菌インキは盛り過ぎず、かすり過ぎず、適正な膜厚となるように印刷すること
④決して印刷物最外部に抗菌効果のない加工等を行わないこと
上記の点に留意して印刷して頂ければ、抗菌効果を有する印刷物を得ることができると思います。