平和紙業株式会社
ありそうで無い紙
世の中には存在しない紙が、あたかも存在しているかのように思われている紙があります。
その多くは、誤解からくるものがほとんどですが、その最たるものが、「タブロイド紙」でしょうか。
時折り、「タブロイド紙」が欲しいとか、「タブロイド紙」のような紙は無いか?とかの問い合わせを受けることがあります。
「タブロイド紙」と言う言葉を聞いて、「タブロイド紙」という紙があるのだと思っている方が多くいるようです。
「タブロイド紙」は、新聞の半分の大きさの「タブロイド判」という判型で作られた新聞や、大衆誌のことを指します。
「タブロイド判」は、国際的には11*1/4 × 15*3/4インチ≒285×400㎜のサイズです。
日本では、日本の新聞の判型545×406㎜(新聞全面は812×545㎜)の半分の大きさ、273×406㎜を、「タブロイド判」と呼んでいます(写真1、2)。
(写真1)日本のタブロイド判の寸法は、273×406㎜です。
一般の日刊新聞の大きさの半分の大きさです。
(写真2)日経新聞と比べてみると、丁度半分の大きさだということが分かります。
コンパクトな分、持ち運びもし易く、また、写真やイラストも豊富なため、大衆向けのイメージが強く、ゴシップ、スキャンダルなども取り上げられることも多いのが特徴です。
この「タブロイド判」の大きさで作られた、新聞や大衆紙を「タブロイド紙」と呼び、20世紀初頭にイギリスで登場し、その後アメリカでも浸透していきます。当時の「タブロイド紙」は、主にゴシップやエンタメ、スキャンダルなど要点を簡潔に、写真や挿絵などを使って、大衆的な情報を掲載した新聞として認知されています。そのため、タブロイドという言葉自体にやや大衆的でスキャンダラスな印象を持たれることが多くなりました。(写真3)
(写真3)海外では、タブロイド判の新聞が、数多く発行されています。
こうしたタブロイド紙の影響や、イメージから、「タブロイド紙」という紙がある、もしくは、タブロイド紙向けの紙があると思われている方も多くいらっしゃいます。
海外のタブロイド紙も、それぞれ使われている紙は違いますので、一概に用紙を特定することはできません。
「タブロイド判」は、コンパクトで、持ち運びも便利で、読者の関心を惹く内容が多く、日本でも普及していく事となりました。「日刊ゲンダイ」や、廃刊してしまいましたが、「夕刊フジ」などもタブロイド判の読み物です。また、釣りや、競馬などの読者ターゲットを絞って発行されているものもあります。
日本のキオスクでは、「Asahi Weekly」や「the Japan times」も手に入ります。(写真4、5)
(写真4)日本のキオスクで手に入る「Asahi Weekly」「the japan times」。
日本にいながら、海外に行った気分にさせてくれます。
(写真5)特定の趣味をターゲットにしたものも多く作られています。
釣りや、競馬などが代表的なものでしょうか。
こうした「タブロイド誌」は、あくまで新聞の一形態でもあったため、使われる用紙自体も、新聞同様、上質な紙を使用することはなく、一過性の用途を果たすのに十分な用紙が使用されていました。
そのため、非塗工の少しザラついた紙が多く用いられていたようで、「タブロイド紙」に使われている紙の印象が優先して、「タブロイド紙」という紙のイメージが定着したものと思われます。
しかし、「タブロイド判」の大きさで作られたものが、「タブロイド紙」であることを考えれば、実は用紙は何でもいいことになります。
つまり、上質紙であろうと、コート紙であろうと、「タブロイド判」で作られたものは、「タブロイド紙」として成立するわけです。
そこで本題です。
「タブロイド紙」という紙は、銘柄として存在しません。
「タブロイド判」の大きさの紙ということであれば、273×406㎜に近いサイズとして、A3サイズ(297×420㎜)があります。
もしくは、菊判(636×939㎜)を4つに切った、318×469㎜でしょうか。
用紙について言えば、「タブロイド判」の大きさで作られたものが、「タブロイド紙」であり、使われる用紙は限定されるものではないので、人によって、「タブロイド紙」のイメージは、千差万別と言ってもいいことになります。
ただ、一般的には、上質紙のように白くはなく、ザラついた手触りで、新聞紙のような厚みの紙が、概ね求められる紙質のようです。
とは言え、これも人それぞれ。具体的な見本や参考になるものもなく、「タブロイド紙」からイメージされる紙質を、イメージとしてお伝えいただいているということになります。
実際に「タブロイド紙」には、様々な用紙が使われていて、「タブロイド紙」という特定される銘柄が無いので、「タブロイド紙」=「この紙」とは、断定できないのが現実だということをご理解ください。
「タブロイド紙」をお探しの方は、イメージする紙について、少し詳しくお伝えいただければ、ご希望に近い用紙をお探しすることはできますので、是非ご相談ください。
世の中には、この他にも、何となくそう呼ばれている「紙」が存在します。こうした「紙」については、またいずれの機会に。
(写真2)日経新聞と比べてみると、丁度半分の大きさだということが分かります。
コンパクトな分、持ち運びもし易く、また、写真やイラストも豊富なため、大衆向けのイメージが強く、ゴシップ、スキャンダルなども取り上げられることも多いのが特徴です。
(写真3)海外では、タブロイド判の新聞が、数多く発行されています。
こうしたタブロイド紙の影響や、イメージから、「タブロイド紙」という紙がある、もしくは、タブロイド紙向けの紙があると思われている方も多くいらっしゃいます。
海外のタブロイド紙も、それぞれ使われている紙は違いますので、一概に用紙を特定することはできません。