三星インキ株式会社
『印刷インキ・色イロ』 05.特殊インキについて
このコラムの最初でお話しさせて頂いた通り、最近の印刷は情報提供だけではなく、人の五感に訴える事が必要となってきており、その為に通常のプロセスカラーだけでは不十分となっています。
そこで何か人に訴えかけるツールとして、特殊な印刷効果を得る事ができるインキが開発・設計されてきました。ここでは様々な特殊インキについてご紹介致します。
・メタリックインキ
一般的に金・銀インキと呼ばれており、色材として金属顔料を使用したインキであります。金インキには真鍮、銀インキにはアルミが使用されており、これら金属顔料は比較的大きな粒径(3~20μ、但し目的に応じてさらに大きな粒径の顔料も使用)で鱗片状の形状をしており、この金属顔料が皮膜表面に配向(きれいに並ぶ)事で光を反射(乱反射)させる事でキラキラと輝き、更に重厚な印刷効果を得る事ができます。
・パールインキ
パールインキに使用しているパール顔料は、薄く板状にした雲母の表面に二酸化チタンをコーティングして作られており、メタリックインキ同様、パール顔料が配向する事で真珠のような光沢感を得る事ができます。更にニ酸化チタンの厚みによって虹彩色(干渉色)を有するパール顔料にもなります。メタリックインキと違い、表面に塗布している二酸化チタンは安定で耐性面が強い為、食品包材などにも使用される事があります。但し、パール顔料はメタリックインキよりも隠蔽性が劣り、下地を隠す絵柄などには向いていません。
・蛍光インキ
蛍光インキには、赤外線と紫外線のどちらの影響を受けて発色するかによって2種類のインキが存在します。赤外線を受けて発色するタイプは、一般の色に比べて明度・彩度が高く、パステルカラーのように人の目を惹く印刷効果を得る事ができます。但し、濃度感が出にくい、耐光性が弱いといった点があるので注意して使用して頂きたいと思います。また、紫外線を受けて発色するタイプは自然光や蛍光灯などの光源下では無色ですが、ブラックライト等で紫外線を当てると鮮明に発光するので、偽造防止用途などに使用されています。
・蓄光インキ
蓄光インキは紫外線等のエネルギーを蓄える事ができる蓄光顔料を使用したインキで、暗がり等でも蓄えたエネルギーによって一定時間発光し、最近では電源がなくても発光する特長から防災面・防犯面で使用される事が多くなっています。尚、高い効果を得るためには膜厚を厚くする必要があるので、印刷方式を検討する必要があります。
・香料インキ
香料インキは視覚以外で人に訴える事ができるツールであり、香料を閉じ込めたマイクロカプセルを混ぜた香料インキを印刷し、指などで印刷部を擦ると外力によってマイクロカプセルが弾けて香料が広がります。尚、高い効果を得るには膜厚を厚くする必要があり。更に印刷時に強い外力が掛かるとマイクロカプセルが弾けてしまう事から、印刷方式を検討する必要があります。
・示温インキ
示温インキは温度によって色調が変化する材料を使用したインキであり、特定の温度になると色が変化(有色⇔無色、有色⇔有色)します。
その他にも、帯電防止インキ、紫外線カットインキ等もあります。
以上の通り、特殊インキにも様々な種類がありますので、どのような目的を持った印刷物を得たいのかを検討頂き、インキメーカーに可能かどうかご確認下さい。