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図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]⑭
和古書の装丁と和綴じ

新年にあたり、今年は和綴じの修理用糸と巡り合えますようにと願って、再び和綴じについて書かせていただきます。

2017年4月のWEB MAGAZINEにも和綴じの修理用絹糸を探していることなどについて投稿しましたが、未だ欲しい糸を探しあてることができていません。

今回は和古書の製本や装丁の中での和綴じについて少し勉強しようと思います。日本の古典籍などを研究する「日本書誌学」の分野で著名な学者川瀬一馬が著した『日本書誌学用語辞典』に載っている製本や装丁、「和綴じ」に関係することをまとめてみます。

私たちが「和綴じ」と呼んでいる綴じ方はこの辞典には「袋綴」という言葉で載っています。この製本法は中国から伝えられたもので、中国風には「線装本」と呼びます。
本文紙を二つ折にし、折山の反対側に綴じ穴をあけて、糸綴じします。折山が袋状になっているので「袋綴」という呼び名になったようです。

中国では明時代に始められ、日本にも伝わったようです。しかし、日本ではいつこの綴じ方が初めて使われたのかは不明。江戸時代には日本でもこの綴じ方が普通になっています。

「線装本」が伝わる以前、日本の冊子としての製本・装丁方法として、古い順に「折本」、「旋風葉(せんぷうよう)」、「粘葉装(でっちょうそう)」、「綴葉装(てつちょうそう)」という製本方法があります。詳しく説明するのは難しいのですが、いずれも本文紙を二つ折にして綴じています。
「折本」は現代では御朱印帖として親しまれています。

「折本」の背に糊を付けて密着させたものが「旋風葉(せんぷうよう)」。「旋風葉(せんぷうよう)」の各紙の折山を切り離したものが、「粘葉装(でっちょうそう)」。「綴葉装(てつちょうそう)」は数枚の紙を一まとめにして二つ折りにし、数括りを糸綴じしたものです。ここで初めて糸で綴じる製本方法が登場します。この綴じ方はパンフレットやノートのように折山を糸で綴じています。その糸は結んで、長いまま本の中に残しています。

糸を使って綴じる方法に注目してみますと、現在図書館に所蔵されている和古書の綴じ方を見ても、先にも書きましたように、袋綴じ、それも「四つ目綴」が大部分を占めていますので、江戸時代までに大変に普及したようです。
「線装本」が日本に伝わったと思われる以前に書かれた写本なども、後に修理のために「四つ目綴」に綴じ直されたものが多く見られます。

前回のWEB MAGAZINEにも書きましたが、この「四つ目綴」の綴じ方は、最初に針を入れた綴じ穴の隣の綴じ穴に順に針を進めて行けば自然と縫い上がるという簡単なものです。どんどん普及したのもうなずけます。

綴じ方のバリエーションがいくつかあります。

「四つ目綴」
一番一般的な綴じ方。折山の反対側、端から1㎝ほどのところに四つ綴じ穴をあけて綴じるのでこの呼び名がついた。朝鮮の本は5つ穴が多い。
やはり綴じ穴が四つ目であることから、日本に古くからある「大和綴」の変形という説もある。

「康熙綴」
四ツ目綴の上下の端の部分の綴じ代にもう一つの穴をあけて六目にして、上下の角のめくれを押さえるように考えた綴方。中国清時代、康熙年間にこの綴じ方が多く行われるようになったので、この呼び名がついた。

「麻の葉綴」
綴じ代の部分の真ん中のもう一つの綴じ穴をあけ、麻の葉の模様に糸をかがっている。
麻の葉はとても丈夫なので、赤ちゃんの産着にも麻の葉模様の布が使われたりするようです。本も傷まず、長く読まれることを念じてこの模様綴じをしたのではないかと勝手に思っています。

「亀甲綴」
四ツ目の綴じ代に横に渡っている糸を亀の甲羅に似た形に綴じている。
亀甲はお目出度い模様なので、やはり、縁起をかついでこの綴じ方が考えだされたのではないでしょうか。

これらの各バリエーションの写真は図書館資料保存ワークショップの仲間小梅さん撮影のものを掲載します。参考にご覧ください。

四つ目綴 | 和古書の装丁と和綴じ - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

四つ目綴

左から「康煕綴」「亀甲綴」「麻の葉綴」 | 和古書の装丁と和綴じ - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

左から「康煕綴」「亀甲綴」「麻の葉綴」

『日本書誌学用語辞典』は雄松堂出版から1982年初版が出版されました。私の手元にあるのは1990年出版の第4刷です。

図書館資料保存ワークショップ
M.T.

四つ目綴 | 和古書の装丁と和綴じ - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

四つ目綴

左から「康煕綴」「亀甲綴」「麻の葉綴」 | 和古書の装丁と和綴じ - 図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

左から「康煕綴」「亀甲綴」「麻の葉綴」