三星インキ株式会社
金・銀インキの設計について
金・銀インキは、金属顔料を薄い木の葉や魚の鱗、あるいは硬貨のような形状とし、皮膜表面に綺麗に配向させる事で金属発色を持たせており、金属顔料の形状(大きさ・薄さ・表面状態など)や表面処理によって様々な印刷効果を得る事ができます。
一般的に高輝度な印刷効果を得る為には、①粒径が大きい ②厚みが薄い ③金属顔料表面状態が滑らか ④金属顔料をできるだけ皮膜表面に配向させる表面処理を施している 等の金属顔料を使用するのが最善であります。
但し、版式によって使用できる粒径の限界がある為、求められる輝度感が非常に高い印刷効果を得る為には、孔版(スクリーン)や凹版(グラビア)など、大きな粒径の金属顔料が使用できる方式での印刷について検討して頂く事が必要であります。
まずは金インキの設計から。
金インキは主として色材に真鍮を使用しているタイプと、銀インキに使用しているアルミニウムと色インキを混合して金色を再現したタイプ(疑似金、イミテーションゴールドなどと呼ばれています)があり、使用目的に応じて使い分けされています。
金色を再現したタイプは後で説明させて頂く事として、まずは真鍮を使用したタイプのインキについて説明させて頂きます。
真鍮は黄銅とも呼ばれる金属で、銅と亜鉛からなる合金であります。真鍮は身の回りに多く存在する金属であり、昔はタライや水道管などに使われていました。今でも金管楽器や仏具、トロフィーやメダル、銃の薬きょうなど金色に輝くものの多くに使用され、使われているもので最も身近で有名なものとして硬貨(5円・10円)があります。
尚、金管楽器を使う音楽グループの事をブラスバンドと言いますが、このブラス(Brass)は楽器に使用している黄銅(真鍮)を語源にしているとの事です。
硬貨についてですが、5円硬貨に使用している真鍮は銅と亜鉛の割合が60-70%:30-40%の割合のもので、どちらかというと黄味が強い色をしています。それに対して10円硬貨は純銅に近い合金(青銅と呼ばれる銅と亜鉛の割合が95%:3-4%)で鋳造されており、銅-亜鉛の合金は銅の割合が増えるにつれて赤味となります。
このように、銅と亜鉛の割合を変える事で黄味(青味)と赤味の2色の真鍮が色材用として製造されており、金インキとしては青金・赤金と呼ばれています。
金・銀インキは金属顔料をインキ皮膜表面に配向させる事で金属発色を発現させようとしていますが、色材である真鍮は比重が重い金属(8~9)であり、真鍮表面に処理を施して何とか皮膜表面に浮かせようとしてもなかなか浮きにくい色材であります。
従って、金属発色を発現させる方法として、インキ中の金属使用量を多くする事で皮膜表面に金属顔料を多く存在させるという方法を取っています。
なお、平版印刷用インキの場合、金属顔料の使用量は一般色インキの2~3倍量(インキの約50%程度が顔料)と非常に多くなっています。
以上の通り、金インキは色材である真鍮を多く使用する事で、一般の顔料では再現できない金属特有の重厚感のある発色を得る事ができます。
但し、これが一般の色インキに比べて印刷しにくい要因となっています。
次回は金インキをうまく印刷する方法について検討していきます。