三星インキ株式会社
金インキの上手な印刷方法
金インキが金属特有の発色を再現している時は、金属顔料が皮膜表面付近に多く存在し、かつ水面に木の葉が浮かんでいるように、金属顔料が皮膜表面に配向して平滑に浮かんでいる状態であります。
この状態を再現する方法としては、インキ面では前回書かせて頂いた通り、金属顔料をワニスとの反発を利用して皮膜表面に浮かせようとしていますが、インキ以外の要因によっても大きく左右されます。
まずは用紙
皮膜を平滑にしようとする場合、やはり下地も平滑な方が良いのです。
従って、高輝度感(キラキラ輝く効果)を得たい場合紙はできるだけ平滑にコーティングされた用紙を使用する事をお薦めします。
ただ、逆に平滑でない用紙を使用した場合、金属顔料が平滑に配向しないので皮膜表面で正反射せず、乱反射を起こす事で滑らかさがない重厚感のある効果を得る事ができますので、目的に応じて用紙の使い分けを考えて下さい。(写真1)
次は印刷
何度も書かせて頂いていますが、金インキを輝かせる為には、できるだけたくさんの金粉を、いかに平滑に配向させるかが重要であります。しかし、金インキを印刷する時だけ印刷速度を遅くするなどできないという声も多く聞かれます。
では、非常に印刷速度が速くなった場合、金インキの印刷はどういった状態になるのでしょうか?
その場合、以前のコラムにも記載した通り、金粉が印刷についていけず(原反に移らず)に残ってしまい、金属顔料特有の重厚感(濃度感)を得る事ができません。つまり、せっかく金インキを使用しているにもかかわらず、濃度感のない印刷物となってしまいます。
そこで、インキ面からも検討を行い、金インキに金属顔料だけではなく、一般の色インキに使用している顔料を併用使用し、金属顔料が転移しなくても粒径の細かい一般の顔料は転移して、濃度感の再現を行う方法(一般的にトーニング処方と言われます)を行っています。(写真2)
※)トーニング処方ありは印刷速度を上げても濃度感があまり変化しませんが、トーニング処方なしの場合は濃度感が低くなります。
トーニング処方は原反への転移を良く見せる為だけではなく、鮮明で明るい色調(但し、金属特有の重厚感及び隠蔽性は低減します)の金インキを得る方法の1つであります。
別にインキメーカーにお願いしなくても、印刷する際に色インキを混ぜてトーニング処方を施してみようという方もいらっしゃるかと思います。
ただ、金インキに使用しているワニスと一般の色インキに使用しているワニスは、今までコラムを読んでこられた方は周知だと思いますが、品質・性能的に異なる事が多い為、相性の悪い色インキを混ぜると輝度感の低下(酷い時は全く輝度感がなくなる場合もあります)や変色の発生、逆に転移性が悪くなったりします。実際に行う場合は、必ず少量で混合テストした上で、実機での印刷に移って下さい。
以上の通り、同じ金インキを使用しても、用紙や印刷方法(速度)が異なれば、得られる効果も異なりますので、その点十分考慮して下さい。
次回は、金インキを使用した印刷物でよく起こる現象(変褪色現象)について書かせて頂きます。