図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]㉜
表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~
京大内の某図書室勤務の方から修理本のご相談。
今までは受入業務をされていて、この春から閲覧担当の職場に異動になられた方からです。
閲覧担当とは、みなさんがよく図書館の仕事と聞いてイメージする、バーコードをピッピッと読み込み「返却期限は○月〇日です。」と伝える、あのカウンターの業務、あれらを行う担当です。
(※ 実際はそのようなピッピ作業だけに留まりません。)
だいたい閲覧担当というと、本の修理も並行して行うことになるものです。
その図書室に溜められていた破損本の修理に着手するため、相談にいらっしゃました。
WSの私たちとしては、新しいお仲間ができ嬉しい限り。
早速3,4冊ほどの破損本を持ち込まれました。
名前の通り、私たちの活動は基本的にワークショップですので、相談に回答して終了、ご指導して終了、修理依頼を受けて直して、お返しして終了、ではなく、「ご自分の手で直したい方」に向けて、修理の仕方を一緒に検討し、持ち込まれた方ご自身に直していただくことを大事とし活動しています。
ワークショップですので。
ということで、今回お持ちいただいた本のうちの1冊。
まずは直しやすいものから取り組みだして頂きました。
新書ほどのサイズの無線綴じ
表紙が背のぎりぎり手前で外れてしまっています。
表紙・裏表紙・背に使用の紙質はそれほど厚みはありません。(写真1〜3)
写真には写っていない裏表紙と背はまだきちんと繋がっています。
背の幅は1センチ足らずほど。
背に十分な厚みがあれば、表紙との接合部の角の部分を中心に帯状の和紙で細く補修をするのですが、背に厚みがないので表紙から背の裏表紙接合の角ギリギリまで和紙で補修することを決めました。
この時、気になるのは背に書誌情報があるのかどうか、
① あるならそれを見えるように修理すべきか、
② または、強度を優先、そこにある書誌情報はパソコンで打ち出すか、あらかじめコピーを取っておくかし、印刷したものを貼り付けることとするか、
のどちらかを選択すること。
今回は、②を選ばれました。
理由は、
背の幅から、印字の書誌情報を避けて補修するにはあまりにスペースが無い、原物の背の印字を活かすなら、背文字が透けて読める程度の薄さの和紙が必要だが、強度や耐久性に不安を感じることからです。
という修理計画を、本を広げながらお話しののち、早速取り掛かられた作業は、背ラベル剥がし。
糊で和紙を貼る部分からは、なるべく糊気のあるものは取り除き、修理の糊の定着を促します。
しっかり貼りついたブッカー生地のシール。
調査したことはありませんが、数十年ほど前のこのブッカータイプのシールは風化して糊が乾燥、硬化、の為、比較的剥がしやすいものです。ですが慎重に!
カッターの背(刃でない方)などを使い、ラベルの端から少しずつ丁寧に剥がしてゆきます。
その際の手がかりは接着面に対し折り返すように、ゆっくりゆっくり剥がしてゆきます。
この日の作業は、このラベル剥がしと、表紙と背の角を補修するための和紙の寸法調査とその大きさに合わせた和紙のカットまで。(写真4)
この後、和紙で表紙と背表紙を繋げ、それでも強度が足りなければ、内側の背と表紙の接合部分ののどにも同様に和紙を蝶番のように張り付け、背に書誌情報を貼り付ければ完成です。
続きの作業と修理完成の姿も、またこちらでお伝えしたいと思います。
資料保存WS
小梅