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京都大学図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]㉞
表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2

[図書館に修復室をツクろう!]㉜で書いた新書サイズの本の修理についてのつづきをお伝えしたいと思います。

㉜では、
「この日の作業は、このラベル剥がしと、表紙と背の角を補修するための和紙の寸法調査とその大きさに合わせた和紙のカットまで。」
で締めくくっています。

その後は、そのカットした和紙で背と表紙、裏表紙を繋ぎ合わせて乾かし、体裁を整える作業になります。

和紙は、背と表紙、裏表紙を繋ぐのに十分な幅、そして長さに切ります。
幅(横)の採り方は、十分と言ってもただ広目に採ればよいというのではなく、表紙や裏表紙の元々のデザインを損ねないように、必要最低限の幅にします。
デザインだけでなくその部分に文字がある場合もあります。
情報を隠すことはできるだけ避けたいものです。
可能な限り元の状態を活かし、かつ耐久性も考えながら幅を採ります。
今回は、表紙の外れた部分から小口側に向かって1cm程を取ることにしました。

長さは、背の長さより上下に少しはみ出るくらいにします。
完成直前にカッターやハサミで本体の端に合わせて切りそろえます。

和紙の寸法を測る際は、和紙を背の角にあてて折り目を軽くつけます。
先の尖っていない鉛筆でうすく当たりをつけても良いでしょう。

さぁ、和紙を切ってゆきますよ。
ここではカッターやハサミは使いません。
さっき寸法採りをした和紙の下にパラフィン紙やオーブンペーパーなど水分をはじく紙を敷き、水を含ませた細筆や刷毛で切りたい部分を定規などをあてながらなぞり、濡れているうちに指で裂くように切ってゆきます。
このコラムでも何度かふれた「喰い裂き」をここでも活かします。

参考:
⑱ ワークショップに見学者あり~直したい!その同じ思い~
⑬ 和紙だからできる!「喰い裂き」を活かした補修

まずは表紙の外れた部分から幅1cm分ほどに速やかに生麩糊を塗り、切った和紙の喰い裂き側から重ねパラフィン紙等を乗せ、上からヘラでよくこすり定着させます。
乾いたら、和紙のくっついた状態の表紙を表紙の外れた部分の切り口がきれいに合わさる位置に持って行きます。
この瞬間はパズルを合わせるような気持ちですね。
表紙がずれないように抑えながら背に生麩糊を塗ったら、背を包むように貼り、またパラフィン紙を上にのせて同様に定着。
また乾いたらその要領で裏表紙まで貼りつける。

その後はパラフィン紙で糊付けした背の部分を包むようにし、さらにその上から包帯で本全体を包みます。
この時背がきっちり本体に密着するイメージで巻きます。

今回の本は、ペーパーバックなので、あまりきつく包帯を巻くと、包帯の引く力に本が負け、筒状に丸まってしまうので力加減が難しいものでした。
糊が乾かぬうちに包帯で固定したい、が、強く巻きすぎると丸まってせっかく貼り合わせた背がずれる!というハラハラドキドキ感を伴いながらの作業。力加減が難しい!
包帯が巻けたら手を離さずに(持つ手をゆるめたり離したりすると本が丸まってしまいます。)プレスへ素早く挟み込みました。(写真4)
ふっ~っと一息。
これで一晩ほど寝かせたらプレスから外し、ここでもまたなるべく丸まらないように手でしっかり押さえながら素早く包帯を解きます。

大丈夫、ちゃんと背はきれいにつながっていました!

糊をつけて、どんな風に乾くのか、プレスから外したらどんなふうに固まっているか、包帯を解いた姿は?
ここを確認するのはいつも少し緊張の瞬間です。

当初、和紙に隠れて見えなくなっても構わないと言われていた背の書誌事項は、少しぼやけてはいますが、このままでも見えるようです。
さて、背タイトルを印刷して貼り付けるのか、このままにするのか。
この後は、書架に並ぶ手前の姿まで追っていきます。

手順イラスト1 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

手順イラスト1

手順イラスト2 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

手順イラスト2

写真1 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

写真2 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

写真3 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

写真4 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

資料保存WS
小梅

手順イラスト1 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

手順イラスト1

手順イラスト2 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

手順イラスト2

写真1 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

写真2 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

写真3 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

写真4 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ その2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所