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白須美紀
頼もしい本づくりのプロたち
藤原製本株式会社

写真1 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

本が生まれる場所

工場のなかに足を踏み入れると、ふわっと紙の匂いがしてきた。あたりには折りや裁断、丁合の大きな機械が盛んに動いており、大勢の人が作業に取り組んでいる。それぞれの機械のそばにはパレットがあり、各地の印刷所から運ばれてきた印刷済みの紙がうず高く積まれて、本に生まれ変わるのを待っていた。

藤原製本株式会社は京都の西区、桂川沿いにある製本会社だ。近郊にあるさまざまな印刷会社から持ち込まれる紙を加工して、本の形に仕上げるのが主な業務である。二つ折りした紙の中央をホッチキスで止める中綴じ製本から、たくさんの紙を折って断裁し、糊づけして表紙をつける無線綴じ製本までを請け負っている。
「1枚の紙を二つ折りしただけの4ページ物から、厚み6.2cmくらいまでのページ物まで、製本が可能ですよ。教科書や参考書の依頼が多いので、11月から3月まではもう大忙しです」
と快活に話してくれたのは、営業統括本部長の宮部雄大さんだ。

読書をしているときは特別考えもしないけれど、実は本や雑誌は、1ページずつ印刷されているわけではない。複数のページを1枚の大きな紙に印刷し、折りたたんで端を切ってページ物にしているのだ。このとき最後にちゃんと順番や上下が合うよう配置することを面付けという。実際に刷り上がった印刷物を見てみると、続きのページが逆さになっていたり、離れたところにあったりで不思議な心地になる。
面付けした1枚の紙からできるページを折り丁といい、その折り丁をページ順に重ねることを丁合(ちょうあい)という。16ページの折り丁を10束分丁合し、上から表紙をまいたら160ページの本ができるのだ。
実際に藤原製本の工場にも、自動で折り丁を積み重ねて本にしていくラインがある。長いラインを紙が運ばれ、みるみるうちに本ができていく様子は、本好きにはたまらないワクワク感があった。工場をフル稼働すれば、1日に最大7〜8万冊の製本が可能だという。

「わたしたちは本づくりの最後の工程を担っているわけですが、印刷全般の知識が必要な仕事でもあるんです。そのため、一から本作りの企画を相談されることも多いんですよ」
と話しながら、宮部さんがアーティストの作品集を見せてくれた。布貼りの表紙に凝った加工技術が多用されていて、豪華な装丁が目をひく。

「お客さまの相談を断ることはありません。まず、一緒に考えて挑戦してみるんです。大変ですけど、工場のメンバーも一緒に頭をひねって、いろいろ試作してくれます。製本だけでも、企画・デザインから印刷まででも、小ロットでも対応しています」

藤原製本に印刷機はないが、印刷会社との豊かなネットワークがある。たくさんの印刷会社から仕事を受けているため、逆にいえばどの会社が何を得意としているかも熟知しているのだ。蛇の道は蛇とはよくいったもので、印刷を相談したいときにこれ以上心強い味方はいないだろう。どんな依頼もひとまず相談に乗ってくれることや、やろうと思えば1日7〜8万部製本できる企業なのに小ロットにも細やかに対応してくれるというのも、何とも頼もしい。事実、さまざまなクライアントから頼りにされており、日々いろいろな案件が持ち込まれているのだそうだ。

写真2 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真3 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真1 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真2 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真3 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

手貼りの折本技術も大切に

工場の一角に、刷毛を使って和紙を貼り合わせている女性がいた。和綴じ本などに使われる折本製本を担当しているという。流れるような手さばきから一見楽々と作業しているように見えるが、刷毛の使い方はもちろんその日の気温や湿度にあわせて糊の調節も必要だというから、かなりの職人技だ。昨今の御朱印ブームにより折本製本の需要は高く、注文は途絶えることがない。製本まわりの最新マシンが目をひく工場のなかで、こつこつと昔ながらの手製本が行われているのがなんとも興味深く、そしてそれは、とても大切なことのように思えた。

藤原製本では、2年ほど前から幅広い製本技術を生かしたオリジナルアイテムの企画もはじめている。その一つが京都の伝統工芸とコラボした御朱印帳だ。中身はもちろん工場で手貼りされた和紙を使い、表紙周りは伝統工芸にまつわる素材を使う。布はもちろんのこと畳までさまざまな素材を表紙にしてしまえるのは、やはり製本を知りつくした企業だからこそだろう。

藤原製本を訪問して驚いたことは、会社の人々がみんなとても明るく元気があることだった。営業さんも事務の方も工場の人達もみな笑顔で挨拶し、親切に説明してくれる。当たり前で簡単なことのようだけど、ここまで明るい印象を受ける企業は実はあまりない。そして、会社全体のこの明るいパワーこそが、藤原製本の何よりの強みのように思えた。どんな相談も笑顔で対応し、自社の高い技術と幅広い仕事仲間との連帯を生かし、楽しみながら価値を創造していく。きっと間違いなく、こうした場所から「新しい何か」は生まれるのだ。

写真4 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真5 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真6 | 頼もしい本づくりのプロたち 藤原製本株式会社 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

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住 京都市西京区牛ケ瀬新田泓町6番地の1
電 075-381-7509
http://fujiwara-bb.co.jp/

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