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白須美紀
文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙
神戸派計画

(写真1) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

シンプルだけど個性派のノート

神戸派計画のオリジナルノートは、どれも個性的だ。シンプルなデザインの表紙だけを見れば、一体どこが個性的なのかピンとこないかもしれない。だが、実際に使ってみたり、ノートに関する説明を聞いたりすると、視点の新しさに驚いてしまう。すべてのシリーズが考えつくされ、こだわり抜いた仕様を持っており、独自性があるのだ。

その代表格ともいえるのが「GRAPHILO(グラフィーロ)」シリーズだろう。様々な判型のノートや便箋、メモ帳が揃い、ノートは無地、罫線、方眼の3種類から選べる。特筆すべきは使用されている「紙」だ。それらのノートはどれも、万年筆の書き味にこだわり抜いて開発されたオリジナルの紙「GRAPHILO」を使用している。世の中のほとんどのノートが既存銘柄の紙を使っているなかで、用紙そのものをオリジナルで開発するというのは珍しい。

神戸派計画は印刷会社の大和出版印刷が立ち上げたブランドだ。広報を担当する楠はすみさんによれば、はじめて手がけたオリジナルのノートは、罫線を活版印刷で仕上げた分厚い「上製本ノート」で、そのときは既成の用紙から選んだ紙を採用した。

「当時もかなり厳選して紙を選んではいたのですが、やはり既存の紙は印刷用が中心で、筆記に特化したものがなかなか無かったんです。そこで文房具好きで万年筆愛好家の代表が『自分たちが納得のいく紙をつくろう』と決意し、2009年に「GRAPHILO」の前身の、Liscio-1(リスシオワン)を完成させました」。

Liscio-1は好評を得たものの、発売4年で紙を漉く機械が寿命を迎えて廃番になってしまう。そこで代表は再び、筆記に特化した新たなオリジナルの紙づくりに着手。どうせやるなら徹底的にと、製紙メーカーや万年筆愛好家などの開発メンバーを招集した。そしてまず少しずつ配合や製法を変えた数十種類の紙をつくり、それらをベースに筆記テストと微調整を繰り返して究極の紙を追求していった。こうして、2014年に完成したのが「GRAPHILO」だった。

(写真2) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真3) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真1) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真2) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真3) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

スムーズな書き心地と、美しい発色

「GRAPHILO」のノートには書籍のような帯がついていて「万年筆ぬらぬら派」というキャッチコピーが書かれている。「ぬらぬら」は、かすれやひっかかりのない滑らかな書き心地を表現している言葉だ。一体どんな風合いなのかと撫でてみると、しっとりとしつつも指先に少しのひっかかりがあった。実際に万年筆で筆記してみると、滲みが少なくすべりもよく、小さな文字も書きやすい。そして何より驚いたのは発色だった。今まで普通の用紙に書いたものと見比べると、色が全く違うのだ。紙によってここまで変わるのかと驚き、自分が愛用しているインクが本当はこんなに美しい色だったのかと目が開かれる思いがした。今はブームのおかげで魅力的なインクがたくさん出回っているので、様々なインクで「GRAPHILO」に書きつけてみたくなる。

楠さんによれば、ひっかかりのないインクフローもこだわりのひとつだという。

「思ったことを指先からスムーズにアウトプットできるので、文章を書いたりアートをされる方にも好評です。企画のアイデア出しにも良いですよ」

「GRAPHILO」は万年筆好きの理想を形にした紙だけあって人気が高く、文具店とのコラボ品やシステム手帳の中身などにも使われているという。これらの製品は用紙提供だけでなく、印刷から製造を受注しているというから、オリジナルの紙は本業の仕事のプラスにもなっているようだ。

(写真4) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真5) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真4) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真5) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

目移り必至のラインナップ

神戸派計画では、「GRAPHILO」シリーズ以外の既存の紙を使ったノートも人気だ。

例えば「recto(レクト)」シリーズは方眼にこだわりぬいており、1mmから8mmまで8種類から選べる。方眼のサイズにも人それぞれ好みがあり、使ったときに「この方眼細かすぎるなあ」「もう少し方眼が小さかったら書きやすかったかも」といった思いがふと頭をよぎる。「recto(レクト)」はそのモヤモヤを見事にすくい取っているのだ。

他にも、読むときのことを重視して白い罫線を印刷した「CIRO(シロ)」や、50色展開のカラフルな「iiro(イーロ)」などたくさんの素敵なノートが揃っており、目移りがして仕方がない。そこで、製品に詳しい楠さんに、個人的なお気に入りを尋ねてみた。

「いま愛用しているのは、『recto』A3サイズのレポートパッドです。企画を考えたり、写真撮影のアイデアをスケッチしたりするのに使っています。真ん中に小さな点が印刷してあるのですがこれが意外と便利で、その点をガイドにして線を引いて2分割や4分割しても使えるんですよ。コロナ禍で在宅仕事が増えて持ち運びを考えなくて良くなったので、大判ノートの出番が増えてきました」

私が試し書きをした「GRAPHILO」はA5スリムの厚めのノートだけれど、糸綴じ製本されているため平らに開いて書きやすい。でも「recto」のA3パッドも使ってみたいな……と、思わずそそられてしまう。やはり目移りするのは仕方ないのだろう。それもまた、神戸派計画のノートの大きな特徴なのだ。

(写真6) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究

(写真7) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真6) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究

(写真7) | 文具ブランドが生み出した、万年筆のための紙 神戸派計画 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

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