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白須美紀
紙とものづくりを愛するすべての人たちのために
ペーパーボイス大阪
[What A Wonderful Paper World vol.6]

写真1 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

紙を探すならここへ

「ペーパーボイス大阪」は、大阪心斎橋からほど近い南船場のオフィス街にある。店内には紙が収納された木棚が整然と並び、多くの人たちが出入りする。アイテムは約4000種を揃え、1枚から買うことができるというから、紙を求める人たちにとって何とも頼もしい存在だ。

この店を運営するのは、1946年創業の平和紙業株式会社。さまざまなメーカーの色・柄・風合い豊かなファンシーペーパーを取り扱う商社であり、ディープマットや五感紙といった自社オリジナル商品も開発している。大阪本店の1階にペーパーボイスの前身となるショップ「PAP」を開いたのが1982年というから、かれこれ40年近くこの地で親しまれてきた。

案内してくれた販売推進課課長の大柱元人さんによれば、そもそもは販売目的ではなく「紙のことをもっと知ってもらいたい」との思いからオープンしたという。
「ファンシーペーパーというのは本当にたくさんの種類があるのですが、一体どんな種類があるのか、実はあまり知られていないんです」

確かに多くの種類と量の紙があることは、たくさん並んだ木の棚からもしっかり伝わってくる。この引き出しの中すべてに個性豊かな紙が眠っていると思うと、それだけで楽しくなってしまうほどで、紙好きにとってはこんなに嬉しい場所はない。きっとここで大勢の人たちが新しい紙との出会いを果たして来たのだろう。

とはいえ、品揃えは4000種だ。このなかから目当ての1枚を見つけるというのは、至難の業ではないだろうか。

「初めてご来店の方は、スタッフにご相談いただくのがいいですね。何に使いたい紙なのか、厚い紙がいいとかエンボスがあるほうがいいとかのご希望を伺って、いくつかご提案します」

ショップにはスタッフが常駐しており、図書館司書のように目当ての紙を探し出してくれる。これなら初めてでも安心だ。

写真1 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真3 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

訪れる客の中心となるのはやはり印刷物や紙の製品をクライアントに提案するグラフィックやプロダクトのデザイナーたち。そして、美大や専門学校の学生たちだ。もちろんプロたちも用途にあわせてスタッフに専門的な相談をする。印刷や加工に際しての細かな情報を得るためだ。そうしてクライアントに提案する見本の紙を選んだり、試作に使ったりする。

「最初から使用する紙が決まっている場合は、ご自身で見本帳から探していただくことも可能です。選んでいただいた後、実際の紙をスタッフが棚から取り出してお渡しします」

たくさんある見本帳はとても機能的に整備されており、色から探せるもの、厚みから探せるものなど検索テーマ別に編集されていた。紙はA4、四つ切が揃うというが、商品によって在庫があるものとないものがあって、それらも見本帳にわかりやすく印字されている。長年さまざまな顧客に寄り添い、より分かりやすく探しやすくを追求してきたことが伝わってくる仕組みだった。

写真4 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真5 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真1 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真2 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真3 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真4 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真5 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

クリエイターを支える存在に

ペーパーボイス大阪では、紙を扱うクリエイターの情報発信の場となれるようギャラリースペースも併設している。そこでは、さまざまなデザイナーの協力を得て、毎年11月に紙の展示会を開催するという。また、日本グラフィックデザイナー協会や日本パッケージデザイン協会などが主催する作品展の会場としても活用されている。長年の実績により、利用するクリエイターの数も幅も広がり、認知度も高い。

「『学生時代にここの展示を見たんです』とおっしゃるお客様とデザイン事務所でお会いすることもよくあるんですよ。長く続けてきたかいがありますね」
と、大柱さんがにこやかに語ってくれた。

見本帳の側にはJAGDA年鑑など閲覧書籍が揃っており、クリエイターとおぼしき女性が腰掛けて一冊ずつじっくりと目を通していた。大柱さんによれば、若いクリエイターや学生には高価で購入が難しい書籍を、自由に読めるようにしているという。細やかな見本帳同様に、訪れるクリエイターへの気遣いが伝わってくるようだ。顧客への思いやりが満ちているせいか、居心地もとてもいい。実際に店内やギャラリーでは、多くのデザイナーや学生たちが紙を選んだりギャラリーを見学したりと思い思いに時間を過ごしており、ものづくりの静かな活気に満ちていた。

手ざわりのある美しい紙は、その存在だけでも創作意欲を刺激する。ギャラリーでさまざまな作品に触れたら、頭と心に風が通り抜けてよいアイデアが浮かぶだろう。パソコンの前で行き詰まったら、ペーパーボイス大阪を訪れてみたい。ここはデザイナーだけではなく、ものづくりする全ての人たちのオアシスのような場所なのだ。

写真6 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

写真6 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

ペーパーボイス大阪

写真7 | 紙とものづくりを愛するすべての人たちのために ペーパーボイス大阪 - 白須美紀 | 活版印刷研究所

住 大阪市中央区南船場2-3-23
電 06-6262-0902
営 9時〜17時
休 土曜・日曜・祝日休み
交 (地下鉄)大阪メトロ御堂筋線「心斎橋駅」1番出口より徒歩7分
  大阪メトロ堺筋線・長堀鶴見緑地線「長堀橋駅」2B出口より徒歩2分
http://www.heiwapaper.co.jp/

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