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三星インキ株式会社
温度の影響について②

温度の影響について② - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

前回『活版印刷』に使用するインキには温度変化を見越して硬さを調整したインキの準備が必要かどうか?という案件の答え合わせから。

各インキメーカーにもよりますが、基本的には『準備していません』という回答が多いと考えられます。
活版印刷向けインキは成分的に常温下で揮発する成分をほとんど使用しておらず、かつ固形分が多いことから温度の影響を受けやすく、本来であれば温度変化を見越して硬さを調整したインキを準備する必要があります。
ですが、他の印刷方式に比べて印刷速度が遅く、ロングラン印刷を行う事もあまりないことから、わざわざ事前に硬さの異なるインキを数種類も準備して使い分けるということをしない傾向があります(着肉状態の違いも活版印刷の魅力の1つかもしれません)。
ただ、全く印刷できない状態であれば、インキメーカーへ問い合わせして下さい。

次は『オフセット印刷』です。

前回・今回の流れから考えると、『オフセット印刷』向けのインキには温度変化を見越して硬さの異なるインキを準備する必要があるかどうかすぐにお分かりですよね。

オフセット印刷向けインキは活版印刷向けインキ同様、常温下で揮発することがほとんどない成分を高い割合で使用しており、かつ印刷速度が速く、ロングラン印刷を行うことが多くあります。
またオフセット(平版)印刷は水とインキの反発を使用した印刷方式であるため、温度の影響による粘度変化によって乳化バランスが崩れると全く印刷できなくなることがあります。
これらの点を踏まえて、各インキメーカーは季節に適応した硬さに調整したインキを事前に準備していることが多いです。

メーカーにもよりますが、大きく分類すると以下の通りとなります。

夏 ⇒ 硬め ⇒ Hタイプ、Aタイプ、硬口 など
冬 ⇒ 軟らかめ ⇒ Sタイプ、Cタイプ 軟口 など
春・秋 ⇒ 中間 ⇒ Nタイプ、Bタイプ など

ただし、最近は印刷会社の作業環境(空調設備の充実)や印刷機の改善(機械温度変化の軽減)などにより、印刷時に受ける温度変化の影響幅が小さくなってきており、中間タイプ(春・秋用)のインキだけを一年中使用(現場で助剤添加で対応)されている印刷会社も増えてきています。
そのため、インキメーカーも夏用の硬め設計品と春・秋用の中間設計品の2種類だけを準備しているところもあります。
したがって、夏場・冬場の極端な温度環境面で印刷される際、インキの調子面で困ることがあればインキメーカーに相談して頂ければと思います。

なお、孔版印刷(スクリーン印刷)用インキについては、温度変化を見越したインキを準備していることはないと思われますが、粘度変化によってメッシュの通過性が変わり、膜厚の変化や発泡・ピンホールなどの発生が懸念されます。

このように、どの印刷方式向けのインキに関しても、粘度変化による印刷適性の変化は必ず発生しますので、適温条件下での使用に留意して下さい。

温度の影響について② - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所