平和紙業株式会社
紙離れについて考える②
前回も書かせていただきましたが、紙の本と雑誌の推定販売金額が減り続けていると言うことは、紙の本や雑誌そのものが売れていないということでもあります。
本が売れないと言うことは、本を扱う書店の経営を圧迫すると言うことにつながります。
現実に、書店の数は年々減少の一途を辿っています。特に個人経営の、いわゆる街の本屋さんが、姿を消しつつあります。
2003年には全国で20,880店舗ほどの書店があったのですが、20年後の2023年には、10,918店舗と、10,000店舗ほどの書店が姿を消しています(表1、2)。
300坪以下の書店は2003年には、約13,000店舗あったものが、2023年には、約7,000店舗となり、ほぼ半減しています。
一方、300坪以上の書店は、2003年には、約580店舗だったものが、2023年には、約1,000店舗に増加しています。
単純に考えれば、街の小さな書店が半減する一方、大型書店が倍増しているということになります。
街の書店が、大型書店に淘汰されている現状です。
また、全国1,741市町村のうち、書店が1店舗もない自治体が2024年3月時点で482市町村に増え、全体の27.7%に上ることが出版文化産業振興財団の調査で分かりました。
書店が1店舗だけの市町村は、343となり、合わせると825の市町村には、書店が1店舗以下と言うことになります。全体の割合では、実に47.4%となります。
特に、沖縄(56.1%)、長野(53.2%)、奈良(51.3%)の3県では、書店の無い市町村が過半を占めることなっています。
人口減少やインターネット通販の普及が背景にあるとはいえ、もはや、この国では、書店で本を手に取って選ぶことが難しくなってきているのが分かります。
本を手に取って選ぶことのできるのは、都心部の大型書店だけということになりつつあるといってもいいのかもしれません。
そもそも近所に書店が無いとか、書店はあってもわざわざ足を運ぶのが億劫とか、ネット通販で本を取り寄せればいいとか、電子書籍で読めば事足りるとか、様々な理由はあるでしょうが、本を手に取って選ぶ行為も無く、読みたいものを読むだけであれば、もはや、本は、「文字の印刷された紙の束」になってしまうのではないのでしょうか。
また、先般、文化庁が公表した2023年度の「国語に関する世論調査」では、月に1冊も本を読まない人が6割超に上ることが分かりました(表3)。
文化庁は読書離れが進んだ要因を「スマートフォンやタブレットなどの普及に伴い、利用できるアプリやサービスが多様化して利用頻度が高まり、読書の時間に取って代わっているため」と推測しています。
私たちの暮らしの中で、既にネットとの関係は、切っても切れない関係になっているのは、十分承知していますし、便利な方へ流されていくのも分かりますが、何だか切ない思いになるのは、私だけでしょうか。
本だけではなく、商取引では、当たり前のように利用されてきた、手形や小切手なども、電子決済に切り替わろうとしています。
2021年に政府にて閣議決定された「成長戦略実行計画」には、「5年後の約束手形の利用の廃止に向けた取り組みの推進」「小切手の全面的な電子化」が挙げられており、2027年3月までに、手形・小切手が利用廃止になるようです(表4)。
2024年9月6日の新聞には、3メガバンクは、2025年度中にも紙の約束手形、小切手の発行を終了するとの記事が掲載されており、他のメガバンクも終える予定としています。
これまでにも思い返せば、高速道路の通行券は、ETCへと移行し、電車の切符も、ICカードに置き換わってきました。社会インフラはデジタルの世界に徐々に移行しています。
今後も紙は、デジタルとWebに飲み込まれていくと思った方が、間違いないと思います。
紙でなければできない事、紙だからこそ必要なものを、見つけ出していかないと、紙は今後も身の回りから無くなっていく、そんな危機感があります。
こうした危機感の中で、私たちの生活に直結する紙の在り方や、時流の中で移り変わる紙の機能などを、次回から取り上げてみたいと思います。