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平和紙業株式会社
和紙風の名前を考える

先日、和紙風の商品名を考える機会がありました。和紙ではないけど、和紙っぽい雰囲気の紙なので、和紙風の紙の商品名を考えるというものでした。そのため、そもそも和紙の名前ってどのように付けられているのかを考えることになりました。

そもそも「和紙」と言う言葉自体、明治時代に入った頃に付けられたものです。近代国家を目指す日本において、紙の需要が増加し、欧米から紙を輸入するにあたって、日本で作られていた紙と区別するために、輸入した紙を「洋紙」と呼び、それまでの紙を「和紙」と呼ぶようになったものです。つまり、欧米から紙が入る前は、「和紙」は、単なる「紙」だったのです。
と、言うことは、「和紙」とは西洋から紙が入る前に、日本で作られていた紙のことと言ってもいいかもしれません。
同時に、和紙の名前は、その原材料や、産地、用途、作り方によってその名前が付けられているようです。

和紙の原料は、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)などです。楮はクワ科の植物で、成長も早く繊維自体太くて、長くて、強いため、和紙の原料として古くから使われ、幅広い用途に使われています。
三椏は、ジンチョウゲ科の植物で、枝が三つに分岐しながら成長するため、「ミツマタ」と呼ばれています。繊維に強度がありながら柔軟で、紙幣にも使われています。
雁皮は、ジンチョウゲ科の植物で、その繊維は細く短く光沢があるのが特徴です。

また、和紙の産地は、日本国中多数あるものの、有名なところでは、美濃和紙(岐阜)、越前和紙(福井)、越中和紙(富山)、因州和紙(鳥取)、石州和紙(島根)、阿波和紙(徳島)等があります。
これら生産地は、和紙の原材料が手に入りやすく、水が豊富な土地であることがその要因の様です。

用途としては、公文書を記録するための紙として使われたのが、奉書(ほうしょ)です。
そもそも「奉」の字には、例を尽くして目上に仕えるとか、うやうやしく差し上げるなどの意味もある通り、儀礼的な場所や、神事などでも使われることも多いのが特徴です。
楮が主な原料で、少し厚手の紙のことを指すことが多いのも特徴です。
鳥の子と呼ばれる和紙は、雁皮を主な原料としていて、光沢があり、きめの細かい肌合いの紙です。紙色が薄黄色いところや、きめ細かい肌合いから、鳥の卵のようであることから、「鳥の子」と呼ばれ、版画用紙や、襖紙等に多く利用されています。
この鳥の子に似せて、原料を三椏に変えて作られたのが「局紙(きょくし)」です。他の和紙に比べ歴史は浅く、明治初期に内閣印刷局で製造され、淡黄色で、紙の厚みもあり、肌合いは、きめ細かく、耐久性もあり、証券用紙や、賞状用紙などに使われています。

作り方では、紙を漉く際に、竹で編んだ簀の子を使って、紙を漉き上げますが、その際に、この簀の子の柄が紙に写ったものを「簀の目(すのめ)」とか「竹簀(たけす)と呼んでいます。
また、紙の表目にちりめん状の皺をつけた「壇紙(だんし)」や、単一の原料だけで漉き上げた「生漉(きずき)」、楮の皮の部分を敢えて入れることで、意匠性を持たせた「皮入り」など、作り方やその風合いの出し方など、多くの工夫が見られます。

和紙の名前は、産地、原料名、用途、作り方などを組み合わせた名前が多いようです。
越前奉書や、美濃楮紙、楮紙皮入りに、竹簀鳥の子、楮皮入り生漉などなど、実に分かり易い。
とは言え、和紙独特の世界がここにあります。伝統や格式、文化と言ったものを感じさせるものです。越前ならではの和紙、阿波ならではの和紙が存在するように、その産地ごとに、発展してきた紙づくりが現在に繋がっているのです。

さて、肝心の和紙風の名前を考えることに関して、こうした和紙の名前の付け方を参考にすることは、なかなかできないことに気づかされました。
和紙の歴史や存在感とは少し距離を取って、原料とか、技法とかではなく、紙の雰囲気を重点に置いた名前でありながら、どことなく和紙を匂わせる名前。
いずれどこかでご紹介できると思います。

そして、名前を考えるうちに、和紙について、もう少し掘り下げてみたいと思い始めました。
次回からもう少し、和紙の奥深さを探っていきたいと思います。

ちなみに、弊社取り扱い商品の中にも、美濃和紙がありますので、ご紹介しておきます。

「まんだら」
https://www.heiwapaper.co.jp/products/details/6800020.html

「万葉抄」しわつけ、地肌、刷毛目
https://www.heiwapaper.co.jp/products/details/6800053.html
https://www.heiwapaper.co.jp/products/details/6800051.html
https://www.heiwapaper.co.jp/products/details/6800052.html

「エアクリーンペーパー」
https://www.heiwapaper.co.jp/products/details/6800070.html

(写真1) | 和紙風の名前を考える - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)白くて穏やかな表情を持つ「奉書」。日本の伝統的な和紙です。

(写真2) | 和紙風の名前を考える - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)楮の皮を敢えて入れて、意匠性を高めたものです。楮紙皮入りとか、楮紙カス入りとか呼ばれています。

(写真3) | 和紙風の名前を考える - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)弊社関連会社で、和紙を扱う(株)辻和が作っている見本帳。多くの和紙が収録されています。

(写真4) | 和紙風の名前を考える - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4)楮の皮の部分の裏側の繊維を主に使います。この状態から紙になるまで、多くの工程を経なければなりません。

(写真1) | 和紙風の名前を考える - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)白くて穏やかな表情を持つ「奉書」。日本の伝統的な和紙です。

(写真2) | 和紙風の名前を考える - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)楮の皮を敢えて入れて、意匠性を高めたものです。楮紙皮入りとか、楮紙カス入りとか呼ばれています。

(写真3) | 和紙風の名前を考える - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)弊社関連会社で、和紙を扱う(株)辻和が作っている見本帳。多くの和紙が収録されています。

(写真4) | 和紙風の名前を考える - 平和紙業株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4)楮の皮の部分の裏側の繊維を主に使います。この状態から紙になるまで、多くの工程を経なければなりません。