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白須美紀
【活版クリエイター紹介 vol.6】
活版で、まだ見ぬ“おもろいビジネス”を狙う
明晃印刷

【活版クリエイター紹介 vol.6】活版で、まだ見ぬ“おもろいビジネス”を狙う - 明晃印刷

他にない製品

野田阪神駅の近く、どこか懐かしい下町の住宅街に昭和28年創業の明晃印刷はある。活版とは別の仕事をしていた高崎健治さんが、家業を継いだのは7年前のこと。ビルの老朽化にともない、長年操業していた福島から今の場所に移転したのは3年前だ。現在、会社にある活版印刷機は、ドイツ製のハイデルベルグプラテンが1台とテキンが2台。8万字ほどあったという活字も引っ越しの際にスペースの関係で半分は譲渡した。
現在はマグネシウム版を中心に印刷している。

印刷は社長である高崎さん自らが行う。インキを練ったり、デザインを担当するのは、高崎さんの片腕である中本優さんだ。中本さんは、イラストレーターとしても活躍しており、出身地のあわら温泉のキャラクター「ユコちゃん」の生みの親でもある。

ふたりがつくる明晃印刷の製品は、名刺やポストカードなどが中心で活版印刷では定番のものだが、金箔を貼ったポストカードや何枚も紙を張り合せた名刺など、他にない独自の作風が目をひく。オリジナルの素材を形にできるのは、独学でハイデルと向合い、コツコツと研鑽を重ねてきた高崎さんの印刷技術のたまものだ。取材に訪れた日は、薄い杉板への活版印刷を試行錯誤していた。高崎さんなら面白がって挑戦してくれるだろうと思う人が、色々な話を持ってくるのだ。顧客も国内海外を問わず、会社経営者からアーティストまで幅広い。口コミやSNSで見つけて注文をくれるのだという。

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他にない経営者

【活版クリエイター紹介 vol.6】活版で、まだ見ぬ“おもろいビジネス”を狙う - 明晃印刷

「俺は活版印刷というより商売が好きなんよ。いまどこか海外の優良企業が高値で買ってくれるんだったら、明晃印刷を売却してもええと思ってるくらいやで(笑)」。

そう語る高崎さんの経歴は、印刷屋さんとしてはかなり異色だ。車で移動し焼きたてを売るメロンパンの会社や、占いの館、ネットカフェのチェーンなど、若い頃からいくつもの事業を起こしている。うまくいったもの、失敗したものといろいろだが、どの事業にもさまざまな紆余曲折、栄枯盛衰のドラマがあり、つい聞き入ってしまう。活版印刷にたずさわる人々のなかでも、ここまで独特な経営経験がある人はなかなかいないに違いない。そして実は、明晃印刷の独自性は、そこにこそある。高崎さんが長年にわたる経営者人生でつかんできた経験やセンスを武器に、「独自の製品」だけではなく「独自の活版ビジネス」という大きな視点から、ものづくりを仕掛けることができるのだ。

活版に限らずビジネスのなかで大切にしているのは「群れないこと、そして自ら挑戦すること」だと高崎さんはいい、「失敗したらそれはそれでまた笑い話のネタになるやん」と笑う。どんどん活躍の場を広げていく社長に、片腕である中本さんは「大胆というか大雑把というか。フォローしていくのもたいへんですよ」とぼやく。だが、石橋を叩いて渡る性格の自分にはない高崎さんの行動力に、刺激を受けてもいるのだ。

【活版クリエイター紹介 vol.6】活版で、まだ見ぬ“おもろいビジネス”を狙う - 明晃印刷

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「活版は玉手箱」

ビジネスの話について聞けば聞くほど「高崎さんは商売は大好きだけど、お金自体はそこまで好きじゃないのかも知れないな」と思う。なぜなら、成功すると会社を手放してまた新しいことを始めてしまうからだ。

「努力して仕掛けて勝負して、これは上手くいくぞ…! と、見えてくるときがすごく楽しい。結果が分かってしまうと興味がなくなり、もういいかと思ってしまうんや」

だいたい3年でそういう気持ちになるのだというが、活版印刷はかれこれ7年取り組んでいる。活版印刷の何がそこまで高崎さんを惹きつけるのだろうか。

「活版は玉手箱のよう。実際に普段は出逢うことのないようなたくさんの業種のいろんな人に逢える。つながりもできるし、新しいビジネスの展開もある。俺にとって活版は、世界と繋がれる異次元ポケットなんやわ」

高崎さんは昔からよく「高崎のまわりには人がわく」と言われるそうだが、その“わく”は果たして“湧く”と“沸く”のどっちだろう。異次元ポケットから人が湧き、高崎さんの仕掛けでみんなが盛り上がり沸き上がるのだから、両方かもしれない。今も虎視眈々と活版でのビジネス戦略を練っているというから、とても楽しみだ。明晃印刷が切り開く活版の未来は、本人が意図しなくても結果的に活版業界までもを沸かせてしまうのではないだろうか。そんなふうに密かに期待してしまうわたしもまた、高崎さんのまわりにわく人間のひとりだ。

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明晃印刷

高崎健治 中本優

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