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白須美紀
深くて楽しい、ダンボールの世界
クラフトマンエッセンス

(写真1) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

ダンボールに魅せられて

あらためて考えてみると、ダンボールというのは不思議な存在だ。紙だけでできているのに、箱にすれば引越しの荷物や野菜といった重量のあるものを入れて運ぶことができる。頑丈さの秘密は、表面の紙と紙の間に挟まっている波形の芯。この三角形の部分が加わった力を分散しているのだそうだ。芯の紙の厚みや波の密度によって、強度が変わるという。なかでもこの芯を何重にも重ねた強化ダンボールはとても頑丈で、椅子やベッドなどの家具にも使われている。

「ダンボールは木材に比べて軽いですし、何度もリサイクルできます。組み立てに工具も釘もいりません。木箱や木のパレットをダンボールに変えるだけで運送のコストをさげることもできるんです」

と教えてくれたのは、ダンボール製品を商う会社「クラフトマンエッセンス」の代表で、ネットショップ「ダンボールクラフトストア」を運営している小寺誠さんだ。

小寺さんの実家はダンボール工場だ。だが少年時代は全く興味がなく、ダンボールとは無縁の人生を送ってきたという。そんな小寺さんがダンボールを生業にするきっかけを得たのは、大学生の頃。バイト先でふいに「自分のやるべき道はダンボールだ」という直感が降りてきたのだ。小寺さんはその直感を信じ、卒業後はダンボールメーカーに就職。企画や商品デザインを担当したのち、26歳の若さで起業してクラフトマンエッセンスを立ち上げた。

「箱だけじゃなくて多様な用途があるところに、可能性を感じています。猫の爪研ぎまであるんですよ。外の板紙と間に挟む芯だけでできていてシンプルな構造ですけど、紙の色を変えたり手触りを変えたり印刷をすれば見た目は大きく変わりますし、成形も無限大です」

(写真1) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

魅力的なダンボールのおもちゃ

小寺さんがクラフトマンエッセンスのオリジナル商品を手がけるようになったのは、2015年のこと。西宮の景色を描いたものをダンボールに印刷し裁断して立体絵にした「西宮風景箱」を手がけたのがきっかけだった。
「6種類の絵を各20個つくりたいという依頼だったのですが、メーカーさんの場合金型をつくるので最小ロットは300〜500個になってしまい、到底対応できなくて。でもなんとか力になりたいと思い色々調べてみたんです。すると、一般人がレーザー加工機を利用できる施設が見つかりました」

そこで小寺さんは自分自身でレーザー加工機を使い、印刷されたダンボールを裁断して商品を仕上げた。この経験は、小寺さんにとって、二つの成果につながった。一つは小口のニーズに応えられるようになったこと。ロットの大きなダンボール加工の世界で、少量対応ができるサービスは会社の大きな特長となる。

そしてもう一つが、オリジナル商品開発の足がかりになったこと。レーザー加工機のおかげで、もともと企業でダンボールの商品企画をしていた小寺さんの本領が発揮されはじめた。外部のデザイナーと組んでオリジナル商品を制作し、仕上げのレーザー加工は自分で行う。

はじめてのオリジナルは「ゴム銃」だった。ゴムを連射でき、分解してメンテナンスもできるとあって、たちまち人気商品となった。また、数年後にはゴム銃アーティストとのコラボ「MK34-v3」も制作。こちらは本格的な銃のフォルムが美しく、シックなカラーリングで一見するとダンボールだとわからないほどのクオリティだ。

(写真2) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

こうしてはじまったオリジナル商品の制作は、もう一つの事業につながった。ダンボールの工作教室やワークショップである。SL機関車や自動販売機、スピナーなど次々におもちゃを開発し、キット販売以外にワークショップも行う。なかでも夏休みの工作教室は子どもたちに大人気だ。

「自分たちで色を塗ったり、シールを貼ったりしてオリジナルがつくれます。子どもたちはこちらの予想を超えたものをつくるので楽しいですよ。野外イベントなどに出展するときは、通りすがりの人が気軽に参加できるよう、簡単なワークショップを実施します。好きな色のパーツを選べるハンドスピナーは好評でしたね」

ダンボール玩具のキットをつくり、つくる体験を実施し、それがまたキットのアイデアの元となる。さらに、それらのクオリティ高いおもちゃが企業の目にとまり、施設の土産物やノベルティグッズに採用されることもあるという。最新作は、刀身と柄のデザインを選べる日本刀だ。昨今の『刀剣乱舞』や『鬼滅の刃』のブームを考えると、この企画もヒットしそうだ。

(写真3) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真4) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真2) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真3) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真4) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

ダンボールの可能性を追求する

小寺さんが手がける製品は、どれも精度が高く遊び心にあふれていて、まるでダンボールクラフトのアーティストといってもよい活躍ぶりだ。だが、主眼を置くのは制作ではなく、ビジネスだという。

「僕はアーティストというよりビジネスマンです。キット販売やワークショップは、ダンボールビジネスの可能性を多角的に探っているうちに行き着いたもの。メーカーさんができない小ロットの製品を手伝ったり、新しいアイデアを提供したりと、企業相手のBtoBビジネスも大切にしています。コロナが流行してからは、ダンボール製パーテーションの引き合いが増えましたよ」

大切にしているのはものづくりそのものではなく、ビジネスを通してダンボールの魅力を伝えること。「ダンボールエバンジェリスト(伝道師)」を自称するのもそのためだ。小寺さんは大学時代からぶれることなく、ただひたすらにダンボールの可能性を探してこの道を駆けている。

(写真5) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

(写真5) | 深くて楽しい、ダンボールの世界 クラフトマンエッセンス - 白須美紀 | 活版印刷研究所

クラフトマンエッセンス 小寺誠

クラフトマンエッセンス 小寺誠

メール:kotera@pioneer-esence.com
ウェブサイト:https://craftsman-essence.com/item01/
webショップ(ダンボールクラフトストア):
https://store.shopping.yahoo.co.jp/dambool-crafts/bbd2b6a1b8.html

クラフトマンエッセンス 小寺誠