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京都大学図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]㊱
表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編
そして、あらたな試み「番外編」始まる。

㉟では、補修和紙を貼り付ける修理を施した本をプレスから外したところまででしたね。
さて、その後。
この背タイトルの部分はどうなったか。
補修和紙の上からでもうっすら見ることができるので、このままとするか。
はっきりと読めるようにパソコンで打ち出した背タイトルを貼り付けるのか。
どちらだと思われますか?

正解は、前者。
このままを活かす。
持ち込まれた図書館員さんの判断でした。

この「正解」ですが、どのような図書館においてもこの判断が「正解」という意味では決してありません。
その本の今後の活用のされ方、またいつかまた修理を要することになった時のことを想定したり、これ以上その本の修理に手間と時間をかける必要があるかどうか、など所蔵の図書館の方針によってもその「正解」は変わりますし、正解を断言はできないわけですが、このままでも書誌事項が読み取れること、余計な手を加えないこと、として私も納得できたわけです。

と決まれば、あとは本体からはみ出た和紙をカットして、完成です。
きれいに仕上がりました!
表紙を開いている写真では、外れていた表紙と本文のどの部分がしっかり接着できていることが確認できますね。

表紙 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

表紙を開いている写真 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

背タイトルの部分 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

自分で直す。直った姿を見る。直せることを実感する。直った本がまた再び書架に並び、利用される。一つの輪っかのようです。
本の修理は少々準備が必要なことではありますが、専門業者へ出すほどではない程度の補損した本が、修理が追い付かずに溜められているなどの現場を目にする度、少しずつその輪が広がれば良いな、と思います。

この本の修理はこれで完結。
3話連続で修理の過程を辿っていきました。

表紙 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

表紙を開いている写真 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

背タイトルの部分 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

私がこのワークショップに入って、気が付けば10年目。
このWEB MAGAZINEに寄稿させて頂くようになったここ2年ほどで、学外の方のご参加が増えたり、本の形態ではない資料の修理の機会もあったりとそういう日々の中で、本のしくみをもっと学ぶべきだという思いが大きくなりました。
やはり、修理するからには、その仕組みを知ること、つまり製本を知ることが必要なのです。

ということで、「直す」ことがメインの資料保存ワークショップから、「作る」ことをメインとした「資料保存ワークショップ 番外編」というものをこの度スタートしました。
月に一度、週末に学外で開催しています。
場所は、京都市内にあるスペース、ものことあとりえ一頁

この「番外編」の活動の趣旨は、
本の修理を行うための製本をみんなで実践しながら学ぶというもの。
それから、平日夜に開催している京都大学内でのワークショップには参加が難しい方のために本の修理や情報共有、相談窓口となるような場を目指すものです。

製本の内容は、具体的には、以前当ワークショップ内ではじめた「ブラデル製本」(表紙、背、裏表紙を最終一枚の紙でつなげるくるみ製本とも呼ばれるもの。現代では一般的な製本様式)から取り組みだしています。
無線綴じではない、つまり、糸綴じされた本を解体して、その仕組みを確認しつつ、解体した本を製本し直してゆくという改装を行います。

9月からスタートで、2回が過ぎました。
前回からは、近畿圏の某大学図書館で保存と修理の担当をされている方の新しい参加もありました。次回も公共図書館にお勤めの方のご希望も伺っています。
1人で1冊を仕上げるのに、月1回の開催となると、その完成はかなり先の話となりはしますが、お互いの図書館事情など話しながら本の仕組みを知ってゆく、図書館員らしい製本の会となって行けばよいなと思っています。

資料保存ワークショップ「番外編」の様子 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

そうそう、この番外編。
決して「製本教室」とは呼びません。
なぜなら先生がいていて指導を受けるという形式ではなく、参加者みんなで実践し、意見し合い、考え、学んでゆくというスタンスだからです。
図書館や資料館など、本を扱う現場におられる方を対象とした「修理のための製本を学ぶ会」です。

次回は11月23日(土)に開催予定です。

京都大学内での「資料保存ワークショップ」の活動もこれまで通り継続しますので、あわせて今後ともよろしくお願いします。

資料保存WS
小梅

資料保存ワークショップ「番外編」の様子 | 表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編 そして、あらたな試み「番外編」始まる。 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所