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生田信一(ファー・インク)
活版印刷+紙加工の魅力に満ちた卓上オリジナルカレンダー

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篠原紙工は、東京都江東区大島に工場を持つ、紙加工・製本を得意とする会社です。篠原紙工さんが手がける写真集や作品集、企業のリーフレット、冊子などは、どれも魅力的で独創的なアイデアに満ちており、いつも感心させられます。今回は、篠原紙工が手がけた 2017 年のオリジナルカレンダーを紹介しましょう。

2017 年版のカレンダーは、「モフル」という簀(す)の子のような目が入った柔らかで温かみのある用紙に、活版印刷の 2 色(黒と赤)で刷られ、スタンドは「特 A クッション」というクッションペーパーで作られています。組み立てるとコンピュータのモニターの下にちょこんと収まるくらいのサイズになり、かわいくて使いやすいです。

私は、去年このカレンダーを購入したのですが、見れば見るほど、どうやって作られているのか、不思議でたまりませんでした。そこで今回のコラムは、活版印刷を行った伸榮(しんえい)さんと、篠原紙工さんを訪問して、製作の現場を覗いてきました。ムービーも交えてお届けしますので、楽しんで読んでください。

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東京タワーの近くにある、活版印刷の伸榮さん

まず、活版印刷の工程です。

去年のカレンダーでは篠原紙工が自社の活版印刷機(「手キン」と呼ばれる手動の印刷機)を使って刷ったのですが、さすがに部数が多くなると手動ではキツイということで、今回は自動機を所有する伸榮に依頼することになったそうです。

印刷のディレクションを担当したのは、アートディレクターでプリンティングディレクターである守田篤史さん。私が、印刷日に合わせて、東京都港区芝の伸榮さんを訪れたのは 11 月 24 日。この日は東京で 54 年振りに初雪が降った日でした。入り口のドアを開けると、伸榮の小西五三夫さんが笑顔で迎えてくれました。ちょうど刷りが始まったばかりの時で、作業中におじゃますることになってしまいました。印刷は二日間の工程で、初日でスミ版、2 日目で赤版を刷るとのことです。

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伸榮さんを訪れた日は、東京で初雪が降り、東京タワーはもやっていました。

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東京タワー近くにある活版印刷の伸榮さん。こちらでは活版印刷のワークショップも行っているとのこと。

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伸榮さんを訪れた日は、東京で初雪が降り、東京タワーはもやっていました。

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東京タワー近くにある活版印刷の伸榮さん。こちらでは活版印刷のワークショップも行っているとのこと。

「プラテン」印刷機で刷る

印刷は、ハイデルベルグ社製の「プラテン」(Platen)と呼ばれる活版の自動印刷機で刷られました。プラテンは活版印刷機の名機で、小西さんは「50 年くらい使っているが、通常のメンテナンスは必要だけど、故障は一度もない」と話してくれました。確かに頑丈で丈夫そうな機械です。以下に守田さんが撮影したムービーも交えて紹介します。

印刷版は、3 ヶ月分を 1 つの版にして面付けされていました。表紙も含めて全部で 5 版です。後で行う断裁加工を考慮して、用紙の中央に印刷されています。

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印刷はドイツのハイデルベルグ社製活版印刷機「プラテン」(Platen)と呼ばれる自動印刷機。

「プラテン」のムービー。撮影は守田篤史さん。用紙を印刷版の位置に送り、印圧をかけて印刷し、排紙するまでの工程が自動で行える。スピード調整などの細かな設定も可能。

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印刷で使用した亜鉛版。印刷機にセットしやすいよう周囲はカットされている。

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3 面付けで印刷されたもの。写真はスミ版で刷った直後のものであるため、赤版は印刷されていない。

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表紙は版が小型なので、写真のような状態で刷り上がった。

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印刷はドイツのハイデルベルグ社製活版印刷機「プラテン」(Platen)と呼ばれる自動印刷機。

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印刷で使用した亜鉛版。印刷機にセットしやすいよう周囲はカットされている。

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3 面付けで印刷されたもの。写真はスミ版で刷った直後のものであるため、赤版は印刷されていない。

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表紙は版が小型なので、写真のような状態で刷り上がった。

「丁合」の工程

印刷された用紙は篠原紙工に納入されました。この後は、カレンダー本体の製本と、スタンド部分の製作です。篠原紙工の工場で、製本機械を使って仕上げていく工程を見ていきましょう。

カレンダーの用紙は表紙も含めると合計 13 枚あるので、これを製本します。まず用紙を順番に重ねる「丁合」 の作業を機械で行います。

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20 枚までセットできる丁合機。用紙をセットする際のミスは許されない。小口側に線を引いたり、用紙の切れ端を貼ったりしてミスを防止するような工夫が見られる。

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紙が抜けたりする心配はないのかと尋ねたところ、丁合後に機械側で紙の厚さを計測し、正しい枚数かどうかを検査する機能が付いてるとのこと。正しい厚さ(枚数)でないと、はじかれる仕組みになっている。

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丁合を終えたところ。サイズ違いの大きめの用紙が挟み込まれているのが確認できるが、これが一冊単位の区切りになる。後工程 で、天糊で固めた後、ナイフで一冊づつカットするのだが、その際の目印になる。

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20 枚までセットできる丁合機。用紙をセットする際のミスは許されない。小口側に線を引いたり、用紙の切れ端を貼ったりしてミスを防止するような工夫が見られる。

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紙が抜けたりする心配はないのかと尋ねたところ、丁合後に機械側で紙の厚さを計測し、正しい枚数かどうかを検査する機能が付いてるとのこと。正しい厚さ(枚数)でないと、はじかれる仕組みになっている。

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丁合を終えたところ。サイズ違いの大きめの用紙が挟み込まれているのが確認できるが、これが一冊単位の区切りになる。後工程 で、天糊で固めた後、ナイフで一冊づつカットするのだが、その際の目印になる。

カレンダーの天糊製本

次の工程では、丁合を終えた用紙を束ねて、天(上部)側に製本用の糊(ボンド)を塗ります。篠原紙工では糊を刷毛で塗っている。ローラーで塗る方法もあるが、刷毛で塗るのが一番きれいな仕上がりになるそうです。

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製本用の糊を塗るために、カレンダーを積み重ねてセットする。このボリュームでカレンダー 200 セット。手前の面がカレンダーの天(上部)の部分になる。

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天糊用の糊(品名:合成樹脂接着剤 MB-66B1575)をバットに入れて、刷毛に含ませる。

刷毛で糊を均一に塗る作業。作業するのは篠原紙工の新島龍彦さん。

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製本用の糊を塗るために、カレンダーを積み重ねてセットする。このボリュームでカレンダー 200 セット。手前の面がカレンダーの天(上部)の部分になる。

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天糊用の糊(品名:合成樹脂接着剤 MB-66B1575)をバットに入れて、刷毛に含ませる。

乾燥を待ち、ナイフでカットする

6 〜 8 時間ほど糊の乾燥を待ちます。糊が乾いたら、ナイフで一冊づつカットしていきます。

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丁合の際、一枚だけサイズ違いの紙が挟み込まれているので、その紙を目印にしてナイフでカットしていく。

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カットを終えたところ。この段階ではトンボが残っているが、この後、天以外の 3 方を断裁して仕上がりサイズになる。

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丁合の際、一枚だけサイズ違いの紙が挟み込まれているので、その紙を目印にしてナイフでカットしていく。

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カットを終えたところ。この段階ではトンボが残っているが、この後、天以外の 3 方を断裁して仕上がりサイズになる。

スタンドの製作

厚紙で加工されたスタンドの作り方を見ていきましょう。この工程は、取材した日の前日に終えてしまったの で、仕組みだけを簡単に解説します。スタンドは事前の考え抜かれた設計がポイントのようです。見た目にはわかりにくいのですが、製本工程をスムースに行い、さらにきれいに仕上げるための工夫が隠されています。

ベースになる紙は 1mm 厚の「特 A クッション」。これを全版サイズ(菊全、939 × 636mm)で 2 枚貼り合わせて合紙にし、2mm 厚にします。これを仕上がりサイズより少し大きめのサイズで断裁します。

断裁したものに、表面にはハーフカット 3 本と切れ刃(完全に切れた状態にカットする)1 本、裏面にはハーフカット 1 本を入れます。ハーフカットを入れるのは折りやすくするため。切れ刃は両端を少し残しているので、仕上げの断裁時に切り離されます。このように設計しておくことで、手作業の折り加工や糊付け、断裁の工程で、作業をスムースに進めることができるようになるとのこと。このあたりはプロフェッショナルならではのノウハウですね。

ハーフカットで折った部分は最終的に 2 箇所に糊付けをします。このようにして仕上げの断裁を行うと、断面がきれいな仕上がりになります。構造の説明が難しいのですが、構造A〜Cの写真を参照してください。

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[構造A]表面の写真。ハーフカット 3 本と、左側に切れ刃が 1 本入っている。右側部分は折られているので厚みが出ている。

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[構造B] 3 方断裁した後。右側の折って糊付けした部分が短くなっている。左側は切れ刃をいれているので、切り離される。

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[構造C]スタンドを組み立てたところ。単純に折るだけで丈夫なスタンドになる。

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[構造A]表面の写真。ハーフカット 3 本と、左側に切れ刃が 1 本入っている。右側部分は折られているので厚みが出ている。

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[構造B] 3 方断裁した後。右側の折って糊付けした部分が短くなっている。左側は切れ刃をいれているので、切り離される。

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[構造C]スタンドを組み立てたところ。単純に折るだけで丈夫なスタンドになる。

カレンダーを貼り合わせる

最後に、スタンドとカレンダー本体とを、両面テープで貼り付けます。

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スタンド本体に両面テープを貼る。

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カレンダーを貼って完成。

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カレンダーをめくっているところ。天は糊で固定されているが、ページの開きはよい。

企業などでまとめて部数を注文する場合は、社名を印刷することもできます。部数がまとまる場合は別途見積もりになりますが、お安くなるそうです。名入れの印刷の場合は、篠原紙工の手動印刷機で行っているそうです。

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名入れ用の版がセットされた手キンの活版印刷機。

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名入れを終えたところ。協力:有限会社ビックマン

カレンダーの詳細や購入については、篠原紙工のサイトで案内されていますので、以下を参照してください。

篠原紙工オリジナル 2017 年 卓上カレンダー

篠原紙工のオリジナルカレンダーは、紙加工や活版印刷の職人技がいっぱい詰まっています。コンパクトで用紙の風合いもよく、手で触って楽しむこともできます。年間を通して使うものですから、こだわりをもって選びたいものです。

カレンダーの季節にちなんで、今回のコラムでは、活版印刷に加えて、紙加工や製本現場の最前線をレポートしてお届けしました。そのほか、印刷会社さんが手がけるカレンダーは、ポスター風のものや多色刷りのものなど、素敵なものがいっぱいあります。アンテナを張っていろんな会社のカレンダーを見てみるのも面白いと思います。

最後になりましたが、今回のコラムで取材にこころよく応じてくれた篠原紙工の篠原慶丞さん、増渕みづ紀さん、新島龍彦さんほか社員の皆さん、伸榮の小西五三夫さん、プリンティングディレクターの守田篤史さんにお礼申し上げます。今回もいろんな方にご協力いただき、無事コラムが出来上がりました。

ではでは。

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スタンド本体に両面テープを貼る。

setting_2

カレンダーを貼って完成。

setting_3

カレンダーをめくっているところ。天は糊で固定されているが、ページの開きはよい。

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名入れ用の版がセットされた手キンの活版印刷機。

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名入れを終えたところ。協力:有限会社ビックマン

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ファー・インクで書籍やムックの企画・制作などを行うほか、教育機関でDTPや印刷の講座を受け持つ。デザインやDTPに関する執筆活動も行っている。30歳半ばまで画材メーカーに勤務し、画材や写真の技法を学ぶ。30歳を過ぎた頃からデジタルによる技法を学び、グラフィックソフトウェアの雑誌・書籍を手がけるようになる。

これまで手がけた共著書は、『プロなら誰でも知っている デザインの原則100』『Web+印刷のためのIllustrator活用術』『InDesign/Illustratorで学ぶ レイアウト&ブックデザインの教科書』(以上、ボーンデジタル刊)、『すべての人に知っておいてほしいIllustratorの基本原則』『デザインを学ぶ1 グラフィックデザイン基礎』(以上、エムディエヌコーポレーション刊)、『Illustrator 逆引きデザイン事典CC/CS6/CS5/S4/CS3』(翔泳社刊)、『Design Basic Book[第2版]はじめて学ぶ、デザインの法則』(ビー・エヌ・エヌ新社刊)などがある。

海外の翻訳書も数多く手がける。代表的なものに『要点で学ぶ、デザインの法則150 -Design Rule Index』(ビー・エヌ・エヌ新社刊)、『アニメーターズサバイバルキット』(グラフィック社刊)、『初めて学ぶ遠近法』(エムディエヌコーポレーション刊)などがある。

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