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生田信一(ファーインク)
市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回)

市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

2021年2月にオープンした、市谷の杜 本と活字館に行ってきました。建物は、東京都新宿区のJR市谷駅(都営大江戸線牛込神楽坂駅)から徒歩15分くらい、大日本印刷株式会社の敷地の一角にあります。

このレポートは連載でお伝えします。今回は建物の外観と、館内の展示から活版印刷工程の「作図」「鋳造」のコーナーをお伝えします。

市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

復元、再整備された歴史的な建物

建物は歴史的な重みを感じる造りです(写真1、2)。案内の小冊子から一部を引用します。

「時計台が特徴のこの建物は、1926(大正15)年に建てられました。来客用カウンターや応接室、役員室などがあり、工場の表玄関の役割を果たしていました。戦時中の空襲にも耐え、ずっとこの地にあり続けました。(…一部略…)

21世紀に入り、工場再整備の一環で、書籍や雑誌の大量印刷に用いる大型機械を郊外の工場に移設。この地区では周囲に「市谷の杜」を整えるとともに、この建物を文化施設として社外に公開し、出版印刷の象徴として新たな形で活用することにしました。(小冊子「市谷の杜 本と活字館」より)

(写真1) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真1)建物の前景。昭和の時代にタイムスリップしたような…。

(写真2) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真2)正面玄関に掲げられた看板は、当時のものがそのまま復元されています。

地階、1階、2階の建物で、1階が「印刷所」、往時の活版印刷工場がそのまま再現されています。館内では活版印刷の作業工程を順を追って見学でき、鋳造された活字の棚や印刷機などの制作現場の様子が当時のまま復元されています。

2階は「制作室」。印刷と本づくりを実際に体験し、モノをつくる場所です。購買もあり、活版印刷や製本の材料、グッズ、書籍資料、紙などが購入できます。

では、1階の展示から巡ってみましょう。

(写真1) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真1)建物の前景。昭和の時代にタイムスリップしたような…。

(写真2) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真2)正面玄関に掲げられた看板は、当時のものがそのまま復元されています。

本をつくる流れ

1階の「印刷所」の展示では、印刷手法のなかでも、明治から昭和にかけて主に行われていた、活版印刷による本づくりの工程を見ることができます。最初に導入として、本をつくる流れが解説されています。

本ができあがるまでの工程は、1. 作字、2. 鋳造、3. 文選、4. 植字、5. 印刷、6. 製本、の流れです(写真3)。

(写真3) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真3)1階入り口の解説パネル。まずは本づくりの工程の流れを把握しておきましょう。

導入では、金属活字を使って、植字(ページ組版)を行い、校正刷、印刷までの流れを示したものが示されます(写真4)。

(写真4) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真4)本ができあがるまでの流れを示した展示。

(写真5)は金属活字とその元になる母型(ぼけい)。(写真6)は植字の工程で作られるページ組版、(写真7)は組版したものにインキを付けて印刷した校正刷り(試し刷り)。(写真8)は印刷・製本を終えた本です。

印刷の基本的な流れは現在でもあまり変わっていません。活版印刷では、文字の元になる金属活字を文字種の数だけ作り、活字を1つずつ拾って文章を組む工程があります。大変手間がかかる作業ですが、現在ではこの工程はデジタルによる作業に置き換わっています。

展示では、文字の元になる金属活字を作る工程から始まります。

(写真5) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真5)奥にあるのが金属活字、手前にあるのが母型。

(写真6) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真6)本の1ページを組んだ印刷版。文字は金属活字を並べ、写真も金属凸版でできており、これらを1ページの大きさに組み上げます。

(写真7) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真7) 校正刷と呼ばれる試し刷り。文字の修正があった場合は、金属活字を差し替えて直します。

(写真8) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真8) 印刷を終えて製本された本。

(写真3) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真3)1階入り口の解説パネル。まずは本づくりの工程の流れを把握しておきましょう。

(写真4) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真4)本ができあがるまでの流れを示した展示。

(写真5) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真5)奥にあるのが金属活字、手前にあるのが母型。

(写真6) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真6)本の1ページを組んだ印刷版。文字は金属活字を並べ、写真も金属凸版でできており、これらを1ページの大きさに組み上げます。

(写真7) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真7) 校正刷と呼ばれる試し刷り。文字の修正があった場合は、金属活字を差し替えて直します。

(写真8) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真8) 印刷を終えて製本された本。

作字─1文字ずつ原図を描いて「型」をつくる

金属活字の時代は、どのように文字をデザインし、活字の「型」を作っていたのでしょうか? 展示では最初に金属活字の元になるデザインの原図を見ることができます。作字の流れは以下の通り。

作字の流れ。
「彫刻母型」をつくる作字工程は、次の3つに分けることができます。
1. 書体デザインの担当者が手描きの原図を作成します。
2. 原図を撮影し、腐食で亜鉛のパターンを作成します。
3. 活字パントグラフでパターンのへこみをなぞり、真鍮に文字の形を彫刻します。活字パントグラフは縮尺率を変えることができ、1枚のパターンで異なるサイズの母型の彫刻が可能です。
(展示パネルの解説より)

金属活字を作る方法は、戦前と戦後で大きく変わりました。戦前は活字の元になる「型」が職人の手で彫られていました。この型を元に文字の形が彫られた金属の「母型」を作ります。母型は凹状に凹んでいます。また反対に凸状で彫られたものもあり、これを「父型」と言います。

戦前の母型製作は「電胎法」が主流でした。これは電気メッキによる金属製品の複製法です。戦後、母型製作にパントグラフ(ベントン母型彫刻機)が導入され、作字の工程が大きく変わりました。これまで母型は実際のサイズの金属や木に逆字(反転した)の形で直接彫っていました。しかし、この技術をもつ職人さんは限られていました。

パントグラフによる母型製作では、文字のデザインを正字で紙に書いて仕上げることができます。これは文字デザインの工程においては大きな革命でした。

そのあとデザインされた文字のイメージを金属の板に焼き付け、「パタン」を作成します。これをパントグラフにセットし、金属に彫刻して母型を作成します。パントグラフの彫刻では、倍率を変えることができるため、1つのパタンからさまざまなサイズの母型が作れるようになり、金属活字の生産効率が大きく上がりました。

1階の最初の展示では、当時作られた原図やパタン(パターン)、パントグラフが展示されています(写真9〜12)。とても貴重な資料だと思います。展示物の近くのパネルやカードの解説を読むと、当時の製作の様子がわかりやすく解説されていています。写真と一緒にご覧ください。

(写真9) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真9)

(写真10) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真10)
(写真9、10)原図。
(展示の解説より)原図は、2インチ(約5センチ)角の用紙に、ペンや烏口などの製図道具を用いてすべて手描きで制作します。工程は分業されており、下書きは熟練者の担当で、新人の仕事は「墨入れ」でした。左肩の「A1」は本文サイズの明朝体であることを示し、下部には原図を最後に修正した日付が記されています。

(写真11) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真11)パターン。
(展示の解説より)完成した原図をカメラ撮影し、写真凸版の技術で亜鉛の「パターン」を作成します。墨入れした部分は腐食でへこみます。このへこみを活字パントグラフでなぞることで、真鍮に文字の形状を彫刻し、母型を作ります。母型は鋳造を繰り返すと破損するため、パターンも保管して再彫刻に備えます。

(写真12) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真12)パターン棚。
(展示の解説より)本文に使用する、通称「A1明朝」のパターンを収納した棚です。部種別に整理されています。

(写真9) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真9)
(写真9、10)原図。
(展示の解説より)原図は、2インチ(約5センチ)角の用紙に、ペンや烏口などの製図道具を用いてすべて手描きで制作します。工程は分業されており、下書きは熟練者の担当で、新人の仕事は「墨入れ」でした。左肩の「A1」は本文サイズの明朝体であることを示し、下部には原図を最後に修正した日付が記されています。

(写真10) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真10)

(写真11) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真11)パターン。
(展示の解説より)完成した原図をカメラ撮影し、写真凸版の技術で亜鉛の「パターン」を作成します。墨入れした部分は腐食でへこみます。このへこみを活字パントグラフでなぞることで、真鍮に文字の形状を彫刻し、母型を作ります。母型は鋳造を繰り返すと破損するため、パターンも保管して再彫刻に備えます。

(写真12) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真12)パターン棚。
(展示の解説より)本文に使用する、通称「A1明朝」のパターンを収納した棚です。部種別に整理されています。

パントグラフの展示

当時使われていたパントグラフ の実機が展示されています(写真13〜14)。現在ではほとんど見ることができないので、とても貴重な体験ができました。

(写真13) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真13)

(写真14) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真14)
(写真13、14)活字パントグラフ(母型彫刻機)。
(展示の解説より)三省堂が導入していた米アメリカン・タイプ・ファウンダース社のベントン母型彫刻機を大日本印刷と津上製作所が研究し、開発した国産の母型彫刻機。1948(昭和23)年の完成以降、大手印刷会社や新聞社が相次いでこれを導入し、活字の品質は大きく向上しました。戦後、急速に拡大する出版需要を支えた、影の立役者と言えます。

パントグラフ の仕組みは、まず文字のパタン(金属の原図)をセットし、文字の形を手でなぞっていきます(写真15)。この動きは上部にある母型を彫刻する機構と連動し、金属の表面が削られていくという仕組みです。彫刻される部分には母型の元になるが金属がセットされています(写真16)。

母型を彫刻するユニットを上下に移動させると、削る母型の大きさを調整することができます。1枚のパタンからさまざまなサイズの母型を作ることができるのは、この機構によるものとの説明をうかがいました。

(写真15) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真15)パタンをセットし、文字の形をなぞっていく。

(写真16) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真16)彫刻される母型を接写。内部に母型がセットされている。

パントグラフはメンテナンスが施され実際に動くそうです。動いている様子はモニターの映像で見ることができます(写真17〜19)。

(写真17) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真17)

(写真18) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真18)

(写真19) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真19)
(写真17〜19)作字の一連の工程を紹介する映像。バントグラフで彫刻する様子も見ることができます。

(写真13) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真13)

(写真14) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真14)
(写真13、14)活字パントグラフ(母型彫刻機)。
(展示の解説より)三省堂が導入していた米アメリカン・タイプ・ファウンダース社のベントン母型彫刻機を大日本印刷と津上製作所が研究し、開発した国産の母型彫刻機。1948(昭和23)年の完成以降、大手印刷会社や新聞社が相次いでこれを導入し、活字の品質は大きく向上しました。戦後、急速に拡大する出版需要を支えた、影の立役者と言えます。

(写真15) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真15)パタンをセットし、文字の形をなぞっていく。

(写真16) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真16)彫刻される母型を接写。内部に母型がセットされている。

(写真17) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真17)

(写真18) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真18)

(写真19) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真19)

(写真17〜19)作字の一連の工程を紹介する映像。バントグラフで彫刻する様子も見ることができます。

母型の展示

引き続いて、母型を収納する棚を見ていきましょう。活字鋳造の元になる母型は、「電胎法」によるものと、「彫刻法」によるものの両方を見ることができます。製造法による違いを比較して見ることができ、とても参考になりました(写真20〜22)。

(写真20) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真20)母型庫。
(展示の解説より)母型を収納する木製の引き出し棚です。内部にも細かく仕切りがあります。母型は使用頻度で区分けされた独特の配列で並べられ、探しやすいように文字のラベルが貼られています。活版印刷全盛期には、鋳造する文字種が多かったため母型の出し入れも多く、母型を棚に戻す担当者もいました。

(写真21) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真21)電胎母型。
(展示の解説より)銅めっきの手法で作られた母型。活字パントグラフが導入される前は電胎母型が主流でした。

(写真22) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真22)彫刻母型。
(展示の解説より)活字パントグラフで真鍮を直接彫刻した母型です。本文用活字の母型は、大半が彫刻母型です。

(写真20) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真20)母型庫。
(展示の解説より)母型を収納する木製の引き出し棚です。内部にも細かく仕切りがあります。母型は使用頻度で区分けされた独特の配列で並べられ、探しやすいように文字のラベルが貼られています。活版印刷全盛期には、鋳造する文字種が多かったため母型の出し入れも多く、母型を棚に戻す担当者もいました。

(写真21) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真21)電胎母型。
(展示の解説より)銅めっきの手法で作られた母型。活字パントグラフが導入される前は電胎母型が主流でした。

(写真22) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真22)彫刻母型。
(展示の解説より)活字パントグラフで真鍮を直接彫刻した母型です。本文用活字の母型は、大半が彫刻母型です。

鋳造─1文字ずつ型に金属を流し込んで「活字」をつくる

1文字ずつ型に金属を流し込んで「活字」を作ります。

私は以前、横浜の築地活字さんを見学させていただき、本サイトのコラムで紹介しました(「築地活字で活字鋳造の現場を見学しました」を参照)。こちらを読んでいただければ、活字鋳造の工程がわかると思いますので、参考にしてください。

当施設に展示されていたのは林榮社の万年自動活字鋳造機(写真23、24)。築地活字さんで拝見したものと同じタイプだと思います。

(写真23) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真23)

(写真24) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真24)
(写真23、24)万年自動活字鋳造機。
(展示の解説より)活字を1本ずつ鋳造する機械です。機械背面にある釜で鉛合金を溶かし、本体にセットした母型と鋳型に充填、即座に水で冷やして活字がつくられます。活字はそのまま印刷の版になるため、高い精度が求められます。テスト鋳造で高さ、大きさ、文字の位置ずれを検査したあと、本番の鋳造を行います。

また、鋳造で使用する道具が紹介されていました(写真25)。

(写真25) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真25)鋳造で使用する道具。
(展示の解説より)鋳造で使用する、活字の検査用の道具です。展示しているのは、活字の高さを確認する高低見とマイクロメーター、欧文のラインが揃っているかを確認する版面見、そして活字の大きさを確認する幅見です。

(写真23) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真23)

(写真24) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真24)
(写真23、24)万年自動活字鋳造機。
(展示の解説より)活字を1本ずつ鋳造する機械です。機械背面にある釜で鉛合金を溶かし、本体にセットした母型と鋳型に充填、即座に水で冷やして活字がつくられます。活字はそのまま印刷の版になるため、高い精度が求められます。テスト鋳造で高さ、大きさ、文字の位置ずれを検査したあと、本番の鋳造を行います。

(写真25) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真25)鋳造で使用する道具。
(展示の解説より)鋳造で使用する、活字の検査用の道具です。展示しているのは、活字の高さを確認する高低見とマイクロメーター、欧文のラインが揃っているかを確認する版面見、そして活字の大きさを確認する幅見です。

道具のキューブで理解を深める

ここまで読み進めてきて、さまざまな用語が出てきました。私も初めて聞く言葉や道具も多く、戸惑う人も多いと思います。そんな人のために、活字鋳造機の近くには“道具のキューブ”が設置されています。

透明のキューブにはいろんな道具が印刷されています。知りたいと思うキューブを選び、所定の場所に置くと、大型スクリーンにその解説が映し出されます。たとえば「紙型」のキューブを選び、丸い形のセンサーの上に置くと、その解説を見る(読む)ことができます。絵で見る早わかり事典で、ていねいにわかりやすく解説されています。訪れた際にはぜひ試してみてください(写真26〜28)。

(写真26) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真26)

(写真27) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真27)

(写真28) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真28)
(写真26〜28)道具のキューブを選んでセンサーに置くと、その解説がスクリーンに映し出されます。

(写真26) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真26)

(写真27) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真27)

(写真28) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真28)

(写真26〜28)道具のキューブを選んでセンサーに置くと、その解説がスクリーンに映し出されます。

ちょっと一休み

このコラムは数回にわたっての連載になります。ここらでちょっと一休み。

建物に入ってすぐ右側には喫茶のコーナーがあります。コーヒーや紅茶のほかに季節限定のメニューもありました(「夏の期間限定メニュー CMYKフロート」)。休憩は地下と2階の閲覧のコーナーにベンチがあり、ゆっくりくつろげます(写真29、30)。

(写真29) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真29)

(写真30) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真30)
(写真29、30)1階の喫茶でドリンクをオーダー。金属活字のベンチで一休み。

 

私が住む新宿区やその周辺には印刷会社が多く、出版にまつわる会社も集まっています。この界隈の方であれば、リアルタイムで活版印刷を経験された方も多いでしょう。私はデジタル環境に移行し始めた頃に今の仕事についたので、活版印刷の魅力や奥深さは知らないことのほうが多いです。

興味のきっかけを与えてくれたのは、私が勤務するデザイン専門学校の学生が取り組んだ卒業制作の作品作りでした(本コラムの第1回「活版印刷、ぶらり散歩 ─ 入門編」参照)。そのときに仕事場の近くに、現役で活字鋳造を行う印刷会社・佐々木活字店があることを知りました。さっそく会社に訪問、会社の中や鋳造の現場を見学させてもらいました。そのときの体験が強く印象に残り、さらに多くの気づきも得ました。デジタルで行う制作環境においても、活版印刷時代に培われた技術や知恵は今もなお息づいています。印刷の歴史を知ることはとても大事なことですね。

「市谷の杜 本と活字館」では、展示や解説にさまざまな工夫が凝らされ、当時の印刷の現場の様子をわかりやすく伝えてくれる貴重な文化施設です。入館料が無料であることがさらにうれしく、活版印刷に興味がある若い人にぜひお勧めしたいです。スタッフの方に声をかけるといろいろなことを教えてくれます。今回の取材でも親身に対応していただきました。お礼申し上げます。

このコラムは連載でお届けする予定です。次回をお楽しみに!

(写真29) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真29)
(写真29、30)1階の喫茶でドリンクをオーダー。金属活字のベンチで一休み。

(写真30) | 市谷の杜 本と活字館に行ってきました(第1回) - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真30)

市谷の杜 本と活字館

市谷の杜 本と活字館

住所 162-8001 東京都新宿区市谷加賀町1-1-1 大日本印刷内
電話 03-6386-0555
開館 平日/11時30分〜20時
   土日祝/10時〜18時
休館 月・火(祝日の場合開館)
   入場無料
URL https://ichigaya-letterpress.jp/
※来館には予約が必要です。上記のWebサイトで営業日や時間を確認し、予約手続きを行ってください。

市谷の杜 本と活字館