生田信一(ファーインク)
インディペンデントな人たちが集まる『TOKYO あ〜あ BOOK FAIR 2021』に行ってきました
2021年10月30日(土)、私の仕事場の近くの早稲田でZINEのイベントが催されました。このイベントは今回が2回目で、前回は2019年に清澄白河で開催されています。
『TOKYO あ〜あ BOOK FAIR』は、東京都現代美術館で『TOKYO ART BOOK FAIR』が開催される時期に行われ、ZINEのおもしろさを伝える精神を受け継いだ内容になっています。ただし「あ〜あ」というため息が加わるのです。本家のイベントにはないユニークな試みがあります。
今回は、場所が早稲田になったので、仕事場から近く、さっそく覗いてきました。会場の雰囲気をレポートし、購入したZINEを紹介します。
早稲田に集まったインディペンデントな人たち
今回紹介する『TOKYO あ〜あ BOOK FAIR 2021』は、本作りのインディペンデントな人たちが集まるイベントです。場所は新宿区早稲田の『ストアルームいい』。こちらのスペースで、イベントが催されることがSNSで告知されました(写真1)。イベントの主催者はストアールーム「いい」を運営する橋本太郎さんともろはしたくみさん。
イベントの概要は以下の通りです。
《イベント概要》
来る10月28日から4日間、東京都現代美術館において、インディペンデント出版シーンに多大な影響を与えているらしいアートなブックのイベント『TOKYO ART BOOK FAIR 2021』が開催されます。
一方で、
「TOKYO ART BOOK FAIRに出たくても出られなかった。」
「TOKYO ART BOOK FAIRになんか出たくなかった。」
「そもそもTOKYO ART BOOK FAIRって何?」
そんなインディペンデントの中のインディペンデントな人たちが集まった闇市『TOKYO あ〜あ BOOK FAIR 2021』を、新宿区早稲田の『ストアルームいい』で開催します。
《出店者》
・乞食ガールズ
・麓(ふもと)出版
・Chance The Curry
・ONLY FREE PAPER・MILK TEA SERVICE
・大浪漫商店 BIG ROMANTIC STORE
・台北アリーナ・mycoro
・早瀬のひもの
・いとうひでみ
・HITOMA
・hoshi mitsuki・SENDA HANA
・近藤尚
・NEW YOLK
・ゴヰチカ
・KONO&CO
・喫煙所
・もろはしたくみ
・ナイスガイ編集部
案内には“闇市”とありますが、会場の入り口はこんな感じでした(写真2)。写真に写っていませんが、左側には干物の即売コーナーがありました。
台湾グッズを集めたコーナー、くじ引きも…
入り口をくぐると、フリーペーパーや台湾のグッズを集めたコーナーに出会います。台湾を思わせるアクセサリーや音楽CD、Tシャツなどが並んでいます(写真3)。
奥には1回300円のくじ引きがあります。景品には台湾にちなんだものが用意されているとのこと。トライして、パイナップル風味のビールをゲットしました(写真4、5)。
『カレーZINE vol.2「カレーとニューノーマル」』がすごい
なかなかZINEに巡り会えません。さらに奥には「ふるまいカレー」のコーナーが出現。限定数で、無料でカレーをふるまっていただけるとのことで人気を集めています。残りが少なく、幸運にも私は最後の一皿をふるまっていただきました。めっちゃおいしかったです。
このコーナーでは、カレーをテーマにした『カレーZINE vol.2』が販売されていました。このZINEにはポスターがおまけで付いており、ポスターの表裏にはカレーの写真とカレーのコンセプトマップが付いています(写真7〜10)。
後日ネットで検索して調べたところ、『カレーZINE vol.1』は販売が終了し、現在は『カレーZINE vol.3「カレーと遊び」』の制作が決定しているそうです。カレーについて深く掘り下げた内容で、カレー好きの間では奇書と呼ばれているようです。
『カレーZINE』についてはnote「カレーのパースペクティブ」で情報を発信しています。
『町と旅を思い起こす文芸誌「Yawn」 創刊準備号』
お隣のブースには、麓(ふもと)出版の冊子が並んでいました(写真11)。
一冊を手に取りパラパラ眺めていたら発行者に山本梓さんのお名前を発見しました。私は2年前(2019年)に行われた『東京あ〜あ BOOK FAIR』の会場で山本梓さんのZINE『いとより』を購入しました。ミシンで綴じた本で、そのとき会場で山本梓さんのサポートを受けながらミシンがけを体験したのでした。
その当時のTwitterの記事が(写真12)です。そんなわけでZINE『いとより』は強く記憶に残っていたのですが、なにより驚いたのは、美しい旅の写真を主題にテキストが綴られていて、その構成の見事さです。「いとより」は海水魚「糸縒り鯛」のことで、ミシンの糸で綴じたことと結びつきます。綴じた糸は尾びれのようになびいた仕上がりになっていました。本の中身と作りが素敵にマッチしたZINEです。
懐かしく思いなから『町と旅を思い起こす文芸誌「Yawn」 創刊準備号』を手に取り、中身を拝見し、購入しました。内容は町と旅をテーマにした小文やエッセイ、短歌、マンガなどが集められています。リラックスして読めますし、文字組みもきれいで組版のお手本のような紙面です。この冊子は、麓出版 ONLINE STOREで購入できます。今回は創刊準備号ということですので、これからが楽しみです。
ゆる〜いZINEやグッズ、干物など、あれこれ
丸いちゃぶ台に並んでいるのは、今回のブックフェアの主催者、橋本太郎さんが編集長をつとめる雑誌や写真集、グッズなどです(写真14)。雑誌『ナイスガイ』は元々Vol.1〜14まではフリーペーパーとして発行していたのですが、これらの記事の選りすぐりが『スーパーナイスガイ』にまとめられています(1000円の頒布価格)。
中身は徹底してナンセンスにこだわり、役立つ情報が一切ありません(つまり「あ〜あ」な内容)。でもセンスはすごくいいです。とことん遊ぶというスピリッツに溢れた不思議な魅力をもったZINEです。
会場では、さまざまなフリーペーパーがその場で入手できることが、このイベントの大きな魅力になっています。中には無料でありながら、印刷に凝ったものやアート性が高いものもあります。しかし、2年前に行われたイベントと比較するとフリーペーパーの数はすいぶん少なくなったように思います。コロナ禍でイベントや外出が規制されたことも大きく影響しているのでしょう。
会場には、フリーペーパーと並んで、干物のパンフレットが置いてありました。なんと会場の入り口近くに干物を販売するコーナーがあり、その場で焼きたての干物をいただくことができました。
私は「いか焼」がほしかったのですが、人気で売り切れとのこと。試しにアジの干物を2枚購入して持ち帰りました。焼いて食してみると、とてもおいしく、ごはんがどんどん進みます。これなら追加でオーダーしたくなる気持ちがわかります。で、パンフレットと注文書が役に立ちます(写真15〜17)。
ZINEの定義は難しいのですが、一般的には個人やグループが自由なテーマ、手法で制作した冊子を指します。元々は欧米で生まれた文化で、これらを表す「fanzine(ファン雑誌)」という言葉があります。欧米でも、古くからSFやホラーをテーマにしたZINEが生まれ、その後音楽ジャンルではロックバンドやアーティストのファンの間で作る非公認のアマチュア出版物が隆盛した歴史があるようです。
ZINEの発祥は、印刷物の原稿がパソコンで作れるようになり、印刷のプロでないアマチュアでも冊子が作れるようになったことが大きく関与しています。私の勤務するデザイン専門学校でも授業の一環としてZINEが取り上げられることがあります。ZINEはデザインを学ぶ初心者にとっても魅力的なテーマです。最近では電子書籍でZINEを作る授業も行われているようですが、やはり最終的には印刷したものを手にして触わることができるのがZINEの魅力ではないかと思います。
『TOKYO あ〜あ BOOK FAIR』は今回が2回目で、前回の2019年に清澄白河で開催されました様子が、CHANCE THE CURRYさんのサイト記事で読むことができます。付け加えると、この時にいただいたカレーもめっちゃおいしかったです。
では、次回をお楽しみに!
ストアルームいい
住所:〒162-0041 東京都新宿区早稲田鶴巻町503広瀬ビル1階
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