図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]63
こちら、「資料保存ワークショップ『番外編』」。
かがり台を使って綴じています。
京都大学附属図書館内の一室で続けて来た資料保存ワークショップは、学内所蔵の本の保存環境について学んだり、壊れた本を直したりしてきました。
2009年からこのワークショップに参加した私。
それまで和装本以外の製本を学んだことがなかったため、修理への壁を感じ出していました。本の修理には、製本の知識と技術が必要なのでは、と。
ちょうど色々なタイミングが重なり、私の運営するアトリエ兼レンタルスペース「ものことあとりえ一頁」で、図書館員向けの製本を学ぶ勉強会を2019年9月から主宰のM.T.氏(このWEBMAGAZINEでは私と交替で記事を書かれています。)を中心に毎月開催できることになりました。
資料保存ワークショップ「番外編」と言う名前です。
開催当時は、コロナのコの字も世の中にありません。
まさかそれから半年後、世の中が一変してしまうなんて思いもよらなかったなぁ
と、振り返っています。
スローペースではありますが、M.T.氏を中心に、糸綴じの本を持ち寄り各々改装して行う「ブラデル」という製本様式を学ぶことからスタートしました。
2020年の2月~8月まではコロナ禍で休会を余儀なくされ、その後も緊急事態宣言や蔓延防止措置などの発令の度、予定を立てては休会、様子を見ては開催。
そんなことを繰り返しながら続けています。
肝心の大学内での開催は未だ再開の目途が立っていませんが、コロナ禍直前のあの時期に、学外でこの「番外編」が開始できていてよかったような気も。
さて、その番外編。
主に4~5人のメンバーで十分な間隔を取りつつ開催し、2年4ヶ月になります。
これまでの「番外編」の様子は、
・[図書館に修復室をツクろう!]㊱
表紙と背をつなぐ修理 ~修理法を見定める~ 完結編
そして、あらたな試み「番外編」始まる。
・[図書館に修復室をツクろう!]㊶
資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子
・[図書館に修復室をツクろう!]㊻
「番外編」活動再開しました!!
で取り上げています。
学び始めた「ブラデル製本」は、1人ずつ進み具合に差が出てきました。
先頭を行く方は、本文の綴じ~背への膠の塗布~丸背の丸み出しの調整途中。
私は、1月にやっとかがり台に本文を設置でき、やっと綴じの工程にかかりました。
綴じ方は「本かがり」といって、支持体になる麻紐を本文の背に当てた状態で糸綴じする洋製本の伝統的な綴じ方です。
製本の工程では、やはり「綴じる」作業が一番の山場な気がするのは私だけでしょうか。
それまでバラバラだった紙が、この工程で一つに繋がり、やっと1冊の「本」という形態になる。
とても大事な工程に思えます。
「ものことあとりえ一頁」には、寄贈頂いた本格的なかがり台もありますが、私は自作のかがり台を使わせてもらいました。
自作と言っても、東京の製本教室「古本と手製本 ヨンネ」さんで2019年8月に開かれた、かがり台と手締めプレスを作る講座に参加して製作したもの。
その頃の私は、かがり台を使ったこともなかったのですが、必ずやこの先使う!と心に決めて参加したのでした。
それから3年の月日を経て、やっと日の目を浴びることになった、自作のかがり台。
上部に渡された棒から、行き場が決まらずに頼りなげにぶら下げられたままだった麻紐の支持体は、満を持してピンと張られ、そこに本文に付けられた綴じ糸を通すための筋(穴)の部分を当ててゆきます。
自作のかがり台で初めての綴じ作業に胸躍らせ挑むも、苦戦。
私が改装に選んだのはアート紙の様なつるっと光沢と厚みのある本文紙の本。
グリーンブックス「茶の裂地 / 古賀健藏著」1980年 淡交社刊
初心者なのに手強い本を選んでしまったものです。
本が収納されていたケースも組み込んでの綴じ作業は、1つの目の折丁の厚みが他の折丁の厚みと異なり、また挟み込んだケースの背が少し出っ張ってしまっていたのと、糸鋸でつけた筋が斜めに入ってしまっていたりで、とにかく、綴じ糸がスムーズに進みません。
そんな綴じ糸を進行方向に引っ張ることばかりに気を取られていたら、糸を通すのを忘れていた箇所を見つけ、後戻りをすることになったり。
綴じる作業は、1つ目の折丁に糸を通したら、上に2つ目の折丁を重ねて、それに糸を通し、3つ目の折丁を重ね端まで針を進めたら、2つ目の折丁と1つ目の折丁の間に内側から外側に向かって針を通すケトルステッチを行います。
以降、折丁を載せる度にその作業が繰り返され、全ての折丁が繋がってゆきますが、私が糸を通し忘れたのは、そのケトルステッチ。
忘れていることに気が付いたのは、5つ目の折丁を折り返す時でした。
自分の不器用さにトホホ、と情けない気分になりますが、気持ち新たに。とにかく心を無にして、解いて、また進め直します。
行きつ戻りつ、また行きつ。
一折の端まで針が進められたら、支持体と支持体の間を小さな金槌で叩き、糸のたるみを取り、背の幅を詰めます。
綴じ進め、重なる折丁が背の厚みになってゆくのですが、製本形態に合わせて、厚みの目安が書かれた表をM.T.氏から借りたので、そこに書かれた厚みに合っているか確認しながら進めます。
綴じ方そのものは、全く酷いものですが、厚みはなんとか合格ラインの様。
とりあえず、次回の開催までにすべての折丁を無事に重ねたいところです。
この続きは、またこちらでご報告したいと思います。
日々の開催の記録は、ものことあとりえ一頁プログ
「いろはに一頁」
でもご覧いただけます。
資料保存WS
小梅