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京都大学図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]69
新たな取り組み「修理の日」。
画集の修理の記録 Vol. 2

6月から始まった資料保存ワークショップ番外編「修理の日」。
そこでの様子を
前回のWEB MAGAZINE 京都大学図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]67 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録

から連続でお伝えすることにしました。
図書館員による実験的本の修理の記録です。

前回6月4日(土)は、本文と表紙を外し、本文の綴じ糸を切り、全ページをばらしてクリーニングを行ったところまで。
今回は7月2日(土)に行った第2回目、本文から外した表紙のクロスの汚れ落とし実験の報告になります。

表紙のクロスの素材は、生成りの麻素材と思われます。
全体的に埃っぽい汚れ、まだらなシミはカビのようでもあり、空気中に含まれる細かな金属の粒子が付着して錆びた「フォクシング」と呼ばれるもののようにも見えます。
表紙はこういった汚れはあるものの、ボードも頑丈でしっかりとクロスと密着しているので、前回まではこのまま使用しようとしていましたが、せっかくなので、ボードについたままの状態で表紙クロスの汚れをどれだけきれいにできるか、実験してみようということになったのです。
汚れ落としには、アルカリ成分の含んだ洗剤が有効のようなので、市販のお掃除シートや洗剤を使用してみました。

※ここでご紹介することは、図書館の現場で行うのに適した修理方法では無いかもしれません。
使用した洗剤や薬品が経年で本自体にどのような影響を及ぼすかは正直予測できません。
そんな方法もあるのか~といった感覚でご覧ください!と先にお伝えします。
修理の依頼者には承諾を得た上で実験させてもらっています。

■表紙クロスの汚れ落とし

①クロス面全体の汚れ落とし
「弱アルカリ性のお掃除シートを使う。」

使用したお掃除シート:「CO・OP 重曹電解水食卓&リビング用クリーナー

シートに含んだ洗浄成分は重曹がメインのもの。
表紙・裏表紙・背のクロス全体を拭き取ります。
カビ菌を拡散させないように、少し拭いてはシートを折り返し、シートの使っていない部分を使うようにし、なるべくすぐに新しいシートに変えて行う。

①の結果:
汚れや付着していた絵の具と思われるものを落とすことが出来た。
背に印刷されているタイトル文字のインクが少しクロスに滲んだ。
インクの成分が気になるところ。
しかし、クロス全体的に細かな埃や汚れが取れさっぱりときれいになり、クロスの色が少し明るくなったような印象。

(写真1) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真1)①のお掃除シートと作業前の様子

(写真2) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真2)①作業風景

(写真3) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真3)①クロスの内側折り返し部分も拭き取る

(写真4) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真4)①拭き取れた汚れ

(写真5) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真5)①の作業後

②部分的な汚れ(シミ)落とし
「弱アルカリ性洗剤(希釈)を使う。」

使用した弱アルカリ性洗剤: 「花王 かんたんマイペット

部分的に実験した。
いきなり洗剤原液をかけるのは心配が多く、水で5倍に希釈したものを霧吹きに用意。
AとBの2パターンの方法で実験。

A.直接吹きかける。

3~4センチ角くらいに切り抜いた新聞をマスキングにしてクロスに当て、15センチほど離したところから霧吹きがミスト状になる様調整して吹きかける。
全体がしっとり濡れるくらい。
その後、乾いた当て布をし、10秒ほどプレス。
 ↓
当て布を外す。
Bの2回目のプレスにに合わせて乾いた布を当てて、再度プレス。

B. 浸み込ませた布を当てる。

3~4センチ角くらいに切った布(綿やガーゼなどで柔らかく平らな生地)に充分に希釈液を浸み込ませてクロスに当てて、10秒ほどプレス。
 ↓
濡れている当て布を外し、乾いた当て布をし、吸水のため、プレス。

最後のプレスは吸水のため5分ほど行った。
プレスに挟む際は、外した本文紙を紙で包んで表紙に挟み、本来の本の厚さを保持した。

②の結果:
AもBもさほど変化なく、汚れの様子も①の後からほとんど変化がないように見えた。
②ではBの方が希釈液はクロス面にまんべんなく浸透しているようだった。

(写真6) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真6)②Aの作業風景

(写真7) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真7)②Bの作業風景

(写真8) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真8)②プレスへ入れるため紙に包んだ本文を挟む

(写真9) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真9)②Aの作業後

(写真10) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真10)②Bの作業後

全体の感想:
①で使ったお掃除シートの効果が分かりやすかった!
その理由は、汚れ落としの初めの作業だったからか。弱アルカリ成分の濃度なのか。
拭き取るという効果なのか。はたまた、①の後の②だったから効果が感じられなかったのか。

実験、検証とは、こうして推測しだすととても気の長いことになりそう!
しかし、意見を出し合いながら「試す」という機会は、私たち図書館員の現場では中々体験できない時間だと感じました。
大人の夏の自由研究といった印象です。

クロスの乾きを待つ必要があるため、弱アルカリ性洗剤を使った汚れ落としの実験は、この日はここまで。
この日の様子はこちらでもご覧いただけます。

ものことあとりえ一頁ブログ
7月2日(土):資料保存ワークショップ番外編【修理の日】「実験!表紙クロスのクリーニング」

次回9月は、塩素系漂白剤!ハイターを使用しての汚れを落としを試みる予定です。
クロス張り表紙の汚れ落とし実験はもう少し続きそうです。

資料保存WS
小梅

(写真1) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真1)①のお掃除シートと作業前の様子

(写真2) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真2)①作業風景

(写真3) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真3)①クロスの内側折り返し部分も拭き取る

(写真4) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真4)①拭き取れた汚れ

(写真5) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真5)①の作業後

(写真6) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真6)②Aの作業風景

(写真7) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真7)②Bの作業風景

(写真8) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真8)②プレスへ入れるため紙に包んだ本文を挟む

(写真9) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真9)②Aの作業後

(写真10) | 新たな取り組み「修理の日」。画集の修理の記録 Vol. 2 - 京都大学図書館資料保存ワークショップ | 活版印刷研究所

(写真10)②Bの作業後