平和紙業株式会社
「連」と「斤」
コロナ禍にあって、なかなか海外に簡単に出かけられなくなりました。
日本から離れて、見慣れぬ習慣や食べ物に出会うと、まだまだ知らない世界が沢山あるんだなぁと、感じます。
時には日本の常識とは違うものごとに出会うこともあり、興味がつきないものです。
コロナ禍以前、台北に遊びに行くと、地下鉄の台北捷運蘆洲線の徐匯中学駅近くのホテルによく泊まっていました。
台北市内からは離れるものの、地下鉄やバスが利用しやすく、意外と便利なところでした。
このホテルから歩いて10分ほどのところに、地元の果物屋さん「新世紀鮮果」があり、時期毎の果物が店中に並べられていました。
台湾のこうした街中のお店は、大抵量り売りで、欲しい果物をレジに持っていくと、重さを計り、重さに応じて料金を支払うことになります。
この時の重さの単位は、地元の商店などでは「斤」と表示されていて、1斤=600gを表しています。また、街のスーパーマーケットなどでは、「公斤」と表示されていて、こちらは、1公斤=1kgのことです。
「斤」は、質量の単位として使われていたもので、1斤=160匁(1匁=3.75g)ですので、1斤は600gとなります。
1斤50元とあれば、600g当たり50元(約230円ほど)と言うことになります。
この1斤=600gという単位は、日本統治時代の影響なのかもしれません。
一方「公斤」は、1公斤=1kgですので、1kg当たりの値段と言うこととなります。少しややこしいのですが、台湾では、当たり前のようにこの「斤」と「公斤」は混在し、使われています。
このように、「斤」は、物の重さの単位と言うことになります。
紙の重さは、その紙が洋紙であれば、1,000枚の重さを単位に、板紙であれば100枚の重さを単位にしています。
この重さの単位を通常は「連量」と表記しています。1連は洋紙なら1,000枚のことを指し、3,500枚なら、3.5連と呼んでいます。
と、同時に、この「連量」の事を「斤量」と呼ぶこともあります。「斤量」と呼ぶ方は、失礼ながら、この業界では少し年配の方や、年季の入った業界の方が多いのではないでしょうか?
私もこの業界に入った頃は、「斤量」と呼んでいました。もともと紙の多くを輸入に頼っていたころ、紙の重さを表す単位は「ポンド」で、1ポンド=450g=1英斤としたことから、「斤」が重さの単位として、こうした呼び方になったようですが、現在では、「連量」と呼ぶことの方が多くなっています。
弊社の見本帳なども、「連量」と表記するようにしています。
そもそも「斤量」と呼んでいる方も、洋紙1,000枚の単位の事は、1連と呼んでいて、1斤とは言いません。
つまり「斤量」は重さの単位を表すだけのものだと言うことです。
「連量」も「斤量」も基本的には同じ意味ではありますが、使う人によって言い方が違うというのは不思議な感じがするものです。
ちなみに現在「斤」を単位としているものは食パンぐらいのもので、食パン1斤は、340g(以上)と公正競争規約で決められています。
海外に出かけることで、同じ漢字を使いながらも、国ごとにその意味するところが違うという発見もあります。
そして、その発見によって、あらためて日本のことを見直すきっかけにもなります。
「斤」という一文字だけでも、さまざまな意味や、考え方があるのだと言うことが分かってきます。
一刻も早く、コロナ禍以前のように、自由に海外に出かけられる日が来ることを願ってやみません。