生田信一(ファーインク)
“紙の新しい価値”を提案する本格スペシャルティコーヒーショップ「PAP.COFFEE」がオープンしました
2023年9月18日、東京・原宿にコーヒーショップ「PAP.COFFEE」がオープンしました。
このショップの運営は、紙加工業に50年以上携わってきた三洋紙業株式会社が行っていることをニュースで知り、驚きました。三洋紙業さんは「紙のミルフィーユ」という文具ブランドを手がけておられる会社さんで、ご存じの方も多いと思います。でも、そもそも紙加工の技術とコーヒーショップがどのように結びつくのか、想像できませんでした。
オープンの内覧会に合わせてショップに伺ったのですが、店内の内装や販売される商品パッケージ、ショップカードなど、いたるところに紙加工の成果物を見ることができました。
店内を案内します。ゆっくりお楽しみください。
紙の魅力を伝えるカフェが原宿にオープン
PAP.COFFEEのショップは東京・JR原宿駅から徒歩5分くらいの位置にあります。この地域は“奥原宿”と呼ばれ、表参道や竹下通りから内側の路地に入ったエリアで、 個性的な店舗が軒を連ねています。
竹下通りから路地を入り少し歩くと、ショップに着きました。入口にはポスターが掲げられていました(写真1)。このポスターは定期的に貼り替える予定とのこと。
PAP.COFFEEという名に込めた想い
ブランド名の「PAP.」は何を意味しているのでしょう? ショップのプレスリリースを読むと、以下の解説があります。
〝ブランド名の「PAP」は「PAPER(紙)」の頭の3文字であり、多様に展開する「P And P」でもあります。紙と人との関係性を探ることで紙と人を繋ぐ「Paper & People」。そしてコーヒー生産者と消費者のつながりに焦点を当てる「People & People」。カフェという空間を生かしながら実験的な試みを行い、世の中に発信し続けていきます〟
筆者はオープン前の内覧会とオープン後にショップを訪ね、お話を伺い、写真を撮らせていただきました。お話を伺ったのは、三洋紙業株式会社の村山竹宏さんと江見麻友子さん、ショップのアートディレクション・グラフィックデザインを担当されたBULLET Inc. の小玉文さん。それぞれ、ショップの見所などをお話しいただきました。
店内の内装や什器に紙素材が使われている!?
このショップは、紙素材のモデルルームのようです。至るところで紙の魅力に触れることができます。
まず、入口を入ってすぐの右側のカウンターには、レンガやブロックのように積み重なっているように見える壁面がありますが、これが50色の異なる色の「グレーの紙」でできているとの説明を受け驚きました。レンガやブロックではなく、貼り箱が埋め込まれているのです(写真2)。(写真3)は蓋(ふた)を外したところです。
壁面のディスプレイの棚も紙でできています(写真4)。テーブルや椅子にも紙に樹脂を染み込ませた特殊な素材が使われているとのこと(写真5)。驚いたのは、屋外にあるショップのネームプレートも紙素材でできているとのこと(写真6)。強度を要求される場面でも、紙素材は有用であることがわかります。
ジグソーパズルのコースター
三洋紙業は創業50年の歴史があり、長年、ジグソーパズルの製造を手がけてきた実績があります。この技術を生かして作られた紙のコースターが見事でした(写真7、8)。このコースターは紙の廃材を再利用して作られているとのことで、表面がゴツゴツした凹凸があります。指で触ると紙の質感を感じます。さらにその上から箔押しで熱圧着をかけて、PAP.COFFEEのロゴを鮮やかに浮かび上がらせています。この箔押し加工を手がけたは有限会社コスモテックさんとのこと。
個性的な形のショップカード
個性的な形のショップカードが作られました。色の境界部分には折り筋が入っており、折り曲げると立体的な形に生まれ変わります(写真9、10)。
PAP.COFFEE発行のZINE(ジン)
壁面の陳列棚には、PAP.COFFEE発行のZINE(ジン)が置かれていました(写真11)。
(写真12)は、ショップのデザインを手がけた、BULLET Inc. の小玉文さんの著書『パッケージデザインの入り口』です。
ドリンク、かき氷のメニュー
カフェのメニューからドリンクをオーダーしてみましょう(写真13)。
ドリップコーヒーをいただく
ドリップコーヒーは、タイ メ―チャンタイ村のドリップコーヒーが3種類あります。特徴は以下の通りです。
① Washed(ウォッシュド):柑橘系のすっきりとした酸味(Citric)
② Honey(ハニー):果実感あるジューシーさ(Apricot)
③ Natural(ナチュラル):ワインのような芳醇さ(Winey)
筆者は、①の Washed(ウォッシュド)をオーダーしました。柑橘系の香りが漂うテイストで、初めて味わう体験でした。とてもおいしかったです!!!
コーヒーの原産地、タイ メ―チャンタイ村については、前述のZINE(ジン)でタイの農園を訪問したレポートを読むことができます(写真14)。
焙煎豆の商品パッケージ
焙煎豆はショップで購入することができます(写真15、16)。パッケージに貼られたラベルは、表はマット感があるテクスチャー、裏がシルバーの組み合わせで、くるりと回転しているところチャームポイント。この処理は三洋紙業さんが考案した展開図により、うまく実現することができたとのこと。
異なる紙の質感を楽しめるカップスリーブ
異なる紙の質感、触り心地を楽しんでもらいたいという願いから、3種類の異なる紙と6種類の形でカップスリーブが制作されました。カップを持つときに必然的にカップスリーブに触れることになるため、自然と紙の質感を味わえるようになっています。それぞれスリーブには紙の銘柄や斤量(厚さ)のスペックが記載されています(写真17、18)。
渋谷セバスチャンから受け継いだかき氷
最後に、かき氷のメニューを紹介します(写真19)。今年惜しまれながらも閉店し、かき氷ブームの火付け役でもあった渋谷の名店「セバスチャン」の川又浩氏が監修するドルチェかき氷です。(ドルチェかき氷とは、ケーキのような工程で作られるスイーツです。)
※かき氷は予約が必要です。詳細はPAP.COFFEEのInstagram「予約について」を参照してください。
PAP.COFFEE Instagram:https://www.instagram.com/pap.coffee/?hl=ja
ショップはオープンしたばかりですが、今後は紙の魅力を伝えるべく、紙加工のワークショップの企画などが予定されています。原宿の新しい名所になるよう応援していきたいと思います。
では、次回をお楽しみに!
[店舗情報]
PAP.COFFEE
住所: 東京都渋谷区神宮前1-10-6 セリジェ神宮前102
Instagram: @pap.coffee
メールアドレス:pap.coffee@sanyoshigyo.com
電話番号:03-6447-1988