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生田信一(ファーインク)
書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました

台東区根岸にある書道博物館で催されている「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました。この企画展は漢字が生まれたルーツについて深く掘り下げた内容であるということを知り、強く興味を抱きました。とりわけ「甲骨文字」や「金文」など、中国の歴史的な資料を直接見る機会は少ないので、この機会にぜひ見ておきたいと考えました。

書道博物館を訪れるもう一つの目的は、本館で公開されている常設展示です。中村不折は3つの顔を持っていたと言われています。日本を代表する洋画家であり、書家であり、中国の書のコレクターでもありました。受付で入館の手続きを行うと、これら多彩な中村不折コレクションを展示した両方の施設を閲覧できます。

では、さっそく覗いてみましょう。

書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」の展示

書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」の概要は以下の通り。

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書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」
会期:2024年 7月23日(火)〜12月15日(日)
   前期:7月23日(火)〜9月29日(日)
   後期:10月1日(火)〜12月15日(日)
開館時間:9:30〜16:30(入館は開館の30分前まで)
休館日:月曜日、8月13日(火)、9月17日(火)、9月24日(火)、10月15日(火)、11月5日(火)
    ※ただし、8月12日(月・振休)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・振休)、10月14日(月・祝))、11月4日(月・振休)は開館
観覧料:一般・大学生 500円(300円)、
    高・中・小学生 250円(150円)
    ( )内は20名以上の団体料金
    ●毎週土曜日は台東区在住・在住の小、中学生とその引率者は無料です。
    ●障がい者手帳または特定疾患医療受給者は無料です。
住所:東京都台東区根岸2丁目10番4号
URL:https://www.city.taito.lg.jp/kusei/shisetsu/bunkashisetsu/kuritsu/shodou.html
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書道博物館(台東区根岸)は電車で向かうとJR鶯谷駅が便利で、駅から徒歩5分程度の距離です(写真1、2)。着いてみて驚いたのですが、書道博物館の通りを隔てた向かいの建物が、正岡子規が晩年を過ごした「子規庵」です(写真3)。中村不折は正岡子規が手がける雑誌『ホトトギス』や夏目漱石の小説『吾輩は猫である』の挿絵を手がけるなどの仕事を残しています。不折と明治期の文人たちとの交流が偲ばれ、感慨深く思いました。

(写真1) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真1)

(写真2) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真2)
(写真1、2)書道博物館の入口。

(写真3) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真3)書道博物館の通りを隔てた向かいに、正岡子規の旧居「子規庵」があります。

書道博物館は、本館と中村不折記念館の2つの建物から成り、受付で入場の手続きを済ませると、両方の施設を閲覧することができます。以下、「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」のパンフレットから抜粋します(写真4、5)。

(写真4) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真4)

(写真5) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真5)
(写真4、5)「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」パンフレット、表面/裏面。

パンフレットでは展示の内容を以下のように紹介しています。

「漢字のはじまりはいつごろで、どんな文字だったでしょう?そして何が書かれていたのでしょう?
動物の骨や亀の甲羅に刻された、現在最古の漢字といわれる甲骨文字は、今から3500年ほど前に使われていました。漢字は、読みやすさや書きやすさ、そして美しさなどが模索されながら、その時代に最もふさわしい形で表現され、発展していきました。本展では、甲骨文字や青銅器の文字、石碑の文字など、中村不折コレクションから、ホンモノの考古品で漢字のはじまりについて解き明かします。」

展示会場は撮影できなかったのですが、小学館の雑誌『サライ』9月号の表紙では、書道博物館で展示中の「甲骨文字第1期・牛肩甲骨」(通期展示)が紹介されています。さらに、漢字文化研究所所長の阿辻哲次先生が書道博物館の作品を用いて、漢字の歴史についてもわかりやすく説明されています(写真6)。

(写真6) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真6)小学館『サライ』9月号。表紙ビジュユアルは、書道博物館所蔵の「甲骨文字第1期・牛肩甲骨」。

実際の甲骨文字は、展示ケースに並べられ、間近に見ることができます。それぞれの文字が何を伝えているのか、解説を読み進めながら閲覧できます。

筆者は甲骨文字の実物を間近に見るのは初めての体験でした。亀や牛の骨は、年月を経て細かく砕けてしまったものも多いのですが、小さな骨の表面には細かい文字がびっしりと刻まれています。ルーペで覗きたくなるくらいで、おそらく太古の人たちは視力が抜群に良かったのでしょう。

個人的な話になりますが、筆者は以前から甲骨文字が好きでした。たとえば印刷博物館のシンボルマークが「見」の古代文字がモチーフになっていることを知り、愛着をもって眺めるようになりました。甲骨文字はかわいい図柄が多いので、シンボルマークのようにアレンジしたり、動きを加えてアニメーションにすると、とても愛らしくなります。

展示では、順路にそって進むと、文字のスタイルの変遷を眺めることができます。太古の骨に刻んだ甲骨文字から、青銅器に鋳込む金文へ、さらに筆で書いた隷書のスタイルへと変化していきます。さらに、草書、行書、楷書の文字スタイルは今日でも実用的に使われていますが、歴史的にはすいぶん古い時代から出来上がっていたことが見て取れます。

庭に出ると、中村不折の胸像(写真7)、中村不折が建てた明治時代の蔵(写真8)を見ることができます。不折の建てた明治時代の蔵は、これまで長らく所在が不明でした。平成23年、道路拡張工事のため、根岸三丁目にある花岡宅を取り壊すこととなり、消えゆく街並みの記録を残そうと、根岸地区の歴史を研究している根岸子規会の奥村会長が付近を撮影していたところ、偶然に発見された、ということです。 参考→「書道博物館に明治時代の蔵が復原されました!」

(写真7) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真7)中村不折胸像。

(写真8) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真8)中村不折が建てた明治時代の蔵。

 

今回ご紹介した書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」では、糸瓜忌(へちまき。歌人、正岡子規の忌日)によせて、中村不折の手がけた『ホトトギス』装幀など、中村不折と正岡子規の作品や書簡の一部が展示されています。

また、向かいの「子規庵」では、9月19日の子規の命日に合わせて、約1か月の行糸瓜忌特別展示が催されています。子規庵の公開日は以下の「子規庵」サイトをご照会ください。→https://shikian.or.jp/

では、次回をお楽しみに!

(写真1) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真1)
(写真1、2)書道博物館の入口。

(写真2) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真2)

(写真3) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真3)書道博物館の通りを隔てた向かいに、正岡子規の旧居「子規庵」があります。

(写真4) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真4)
(写真4、5)「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」パンフレット、表面/裏面。

(写真5) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真5)

(写真6) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真6)小学館『サライ』9月号。表紙ビジュユアルは、書道博物館所蔵の「甲骨文字第1期・牛肩甲骨」。

(写真7) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真7)中村不折胸像。

(写真8) | 書道博物館「企画展 中村不折コレクション 漢字のはじまり」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真8)中村不折が建てた明治時代の蔵。

書道博物館

住所:東京都台東区根岸2丁目10番4号
電話:03-3872-2645
開館時間:9時30分から16時30分(入館は16時00分まで)
休館日:月曜日(祝休日と重なる場合は翌平日)、12月29日から1月3日、特別整理期間等
    ※展示替等に伴う臨時休館もあります。くわしくは書道博物館ホームページにてご確認ください。
入館料:一般500円、小・中・高生250円
    ※20名以上の団体は、一般300円、小・中・高生150円
URL:https://www.city.taito.lg.jp/kusei/shisetsu/bunkashisetsu/kuritsu/shodou.html

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