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三星インキ株式会社
色がもたらす影響や意味合い「赤」

今回から、色についてお話致します。

コラムの表題にもなっているように、色ってイロイロありますよね。

以前も書かせて頂きましたが、日本人は色にはすごくシビアな所があり、ほとんど違いが分からないような色でも呼び名が違っていたりします。
では、日本人が色を認識するようになったのはいつ頃なのでしょうか?

昔の日本の書物である『万葉集』や『古事記』には赤・青・白・黒の4色しか出てこないそうです。
しかし、自然(山・空・川など)の色は美しいという文言は残っており、自然にはそれぞれ色がある事は分かっていたのですが、その色をどのように表現するか分からなかっただけに過ぎなかったとの事です。その後、日本人は世界に類を見ないたくさんの文字・言葉を作り出し、周りに存在するもの一つ一つに名前を付けるようになりました。

日本人は昔から言葉には霊が宿る(言霊(ことだま)が存在する)と信じており、モノに名前をつける事でモノに魂が宿ると考えていたと言われています。従って、自分が見つけた色に名前を付ける事でその色には生命が宿り、自分のものになると考えていたと言われています。そして多くの人に賛同を得られた色に対しては、誰もがその名で呼ぶ事になったとされ(諸説様々)、今でも非常に多くの色に名前が付けられています。

皆さんもご存じだと思いますが、色には人の心を動かす力があるとされており、それは心理学的にも知られている事です。

一般的に赤色は人の心を揺さぶり、青色は落ち着かせると言われています。この色による心境への働きかけを利用して、最近では夜間の駐車場などのライトを青色としている所もあります。これは青色が心を落ち着かせる色であり、車上荒らしなどの犯罪を起こそうという気持ちを抑制する事ができると言われており、実際に効果があるとも言われています。

では、それぞれの色がもたらす影響や意味合いについて、記載していきます。
まずは日本人(古代の人々)が最初に理解していた赤色から。

赤色は人間が生まれてきて最初に認識できる色と言われており、非常に目立つ色であります。赤色は暖色と言われており、赤色を見ているだけで暖かく感じ、赤で囲まれた部屋に入ると体感温度が2~3℃上がるとも言われています。これは赤の光が「交感神経」を刺激する事で脈拍を上げ、血流が良くなる為だと言われています(これは見えなくても効果があるとの事で、赤い下着等でも着用するだけでも冷えなどを抑えられるそうです)。

また赤色は購買色とも言われ、購買意欲を増幅させる色でもあり、売り出しやセールと言った文言は大抵赤で書かれています。
このように、赤色は人の心や身体を高ぶらせ、心理学的に「情熱・興奮」といった強いエネルギーをイメージさせる色で、やる気になっている時のエネルギーが満ち溢れた時や、逆に自信・元気・やる気が欲しい時などエネルギーを欲する時に好きになる色だそうです。
それゆえ自己主張が強く、単独でも非常に目立つ色である事から、信号機やパトランプ、消火器(写真1)などの危険を表すサインとして使われています。

(写真1)消化器 | 色がもたらす影響や意味合い「赤」 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)消化器

この赤色を好む民族として中国の人々が挙げられます。少し前は正月近くになると、中国では赤色と金色のインキが大量に消費されていました(最近は昔ほどではないと聞いています)。
では何故、中国では赤色を好むのでしょうか?
これは中国では赤色を幸運・祝賀・召集といった意味合いで捉えている為であるとの事です。
一方で、南アフリカでは赤色を『喪』、ケルト民族は『死・来世』と捉えられています。

つまり、色の捉え方は国や人種、時代によって異なるという事を憶えていて頂きたく、輸出関連のデザインを考える際は対象となる国や人種が捉える色の意味を良く知った上でデザインして下さい。そうしないと我々日本人の捉え方で幸福を表す良い色だと思っているものが、他の国では全く逆である可能性もあります。これは赤色だけに限った事ではなく、全ての色に言える事です。

また、赤色は古代から歴史的に大きな意味合いを持つ色であり、血や炎の色という事から、『太陽』『生と死』『戦闘』『怒り』『悪霊を防ぐ』色として用いられてきました。
古代エジプトでは、本来太陽を運ぶ船(赤い船)を護る神である『セト神』(写真2)が戦の神としても崇められていました。またローマでは豊穣神であるマルス・バッカス・処女神ディアナが赤色の衣類を身に着けており、北欧ではトール神(写真3)と呼ばれる神が、赤い髭をつけてハンマーをふるって雷や稲妻を起こす(怒り)など、色々な神を象徴する色として赤色が使われてきました。

(写真2)セト神 | 色がもたらす影響や意味合い「赤」 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)セト神(参照元:Wikipedia

(写真3)トール神 | 色がもたらす影響や意味合い「赤」 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)トール神(参照元:Wikipedia

日本でも古くから赤色は鳥居(写真4)などに使われており、鳥居で有名な伏見稲荷大社では、赤色は稲荷大神が持つ豊穣の力を表す色として説明されており、別に災いを防ぐ魔除けの意味合いもあるそうです。その他にも怒りを表現している不動明王は衣や炎が赤く、太陽神である天照大神も赤い衣を纏っている絵画などを見ます。

(写真4)鳥居 | 色がもたらす影響や意味合い「赤」 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4)鳥居

日本では鳥居を赤く塗る際に使用していた顔料として『朱(辰砂)』が使われていましたが、この『朱』と呼ばれる顔料は水銀化合物(硫化第2水銀)であり、更に精製が悪い場合は砒素(ヒ素)も多く含まれていたそうで、生物には非常に悪影響のあるものでありました。
この『朱』を塗っていた為に動物や虫が近寄って来なかった事から、赤い鳥居には魔除けや結界の役目があると思われたのかもしれません。また、『朱』は耐性が非常に強い顔料であり、千年以上経過しても鮮やかな赤色を残し、いつまで経っても変わらない事から、『朱』は不老不死を得られる物質であると考えられ、秘薬として一部の人(王族・貴族)は服用していたとされています。この秘薬(?)を求めて、中国から徐福という人が日本に渡ってきたという伝説も残っています(本当は逆に毒なのですが・・・)。

その他に赤色は血・生命・火・力・愛・情熱・女・革命・勇気・攻撃・電気・太陽等を意味し、政治的には左翼・社会主義・共産主義の色として使われ、国旗として使用される際は愛情・博愛という意味や流された血を意味する事が多いです。
以上のように、赤色はどちらかというと活動的なものや生命の輝きを象徴する色合いであります。是非憶えておいて下さい。

(写真1)消化器 | 色がもたらす影響や意味合い「赤」 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(写真1)消化器

(写真2)セト神 | 色がもたらす影響や意味合い「赤」 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(写真2)セト神
(参照元:Wikipedia

(写真3)トール神 | 色がもたらす影響や意味合い「赤」 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(写真3)トール神
(参照元:Wikipedia

(写真4)鳥居 | 色がもたらす影響や意味合い「赤」 - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

(写真4)鳥居