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紙ノ余白
干し板のお話

干し板のお話 - 紙ノ余白 | 活版印刷研究所

最近、ご縁があり、銀杏(イチョウ)の板が私の工房にやってきました。

和紙を「板干し」あるいは「天日干し」するためのもので、高さが約2100ミリ幅が約700ミリあります。
二三判と言われる和紙が縦に2枚干せるサイズです。

上下にはコの字型の檜(ヒノキ)が小口を覆うように取り付けられています。
イチョウが水を吸って、腐ったり、反ったりしないように、水に強いヒノキで補強されているのです。

ヒノキで補強された小口 | 干し板のお話 - 紙ノ余白 | 活版印刷研究所

ヒノキで補強された小口

1枚板のものもあれば、千切り(ちぎり)で継いであるものもあります。
イチョウが昔から干し板に使われてきたのは、肌が緻密で、油分を含み水はけが良いという特徴のためです。
また幹がまっすぐに伸び、木材にしても狂いにくいと言われています。

重さは約10キロ前後でしょうか。
昔から使い込まれているものは痩せて比較的軽くて扱いやすいですが、近年に新調して作られたものは、木が若いということもありますが、頑丈さを重視するあまり、金物が使ってありとても重いものが多いように感じます。

なにせ2メートルのものなので、重さより持ちこなすのに苦労をします。
私が研修で学んだ石州の工房で、初めてこの板を持ち上げた時は、大きさと重さに衝撃を受けました。
「コツが要るんよ」とヒョイと60代のおばちゃんが持っていくのには、いつも感嘆の眼差しを向けていたものです。
普通、両面とも和紙を張って干すので、掴めるのは縁だけ。
確かにコツがあって、腕だけではなく肩ごとストンと重さを受けると持ちやすいのですが、

室内で(無風でないと紙にシワが寄る)紙を干す

日当たりの良いところに持ち出す

ひっくり返して影になっていた面を日に当てる

しっかりと乾いたら室内へ取り込む。

と、かなりの頻度で持ち上げて移動するので、大変、と言っていいと思います。
干していて、にわか雨が降り出すと、皆で一斉に取り込みます。
あの時は重さを忘れます。
ここで濡らしてしまって、しみにでもなったら…と思います。

厚みによりますが、石州では5枚の和紙を重ねて干します。
(紙床から1枚ずつ剥がして、干し板の同じ面に5枚重ねます)
ですので、縦に5枚ずつで片面10枚を、両面で、1枚の板で20枚の和紙を干します。

私個人にとって驚愕だったのは、美濃では重ねることなく、1枚づつ、つまり、1枚の板で4枚の和紙を干します。
干しながら、最初に干して乾いた和紙を取り込み、またその板を使って干すということです。
その、板を運ぶ頻度に私はとてもびっくりしたものです。

美濃で私が一番印象に残った風景。

干し板の跡が残る | 干し板のお話 - 紙ノ余白 | 活版印刷研究所

干し板の跡が残る

実際に使用されていた板は今も保存されている | 干し板のお話 - 紙ノ余白 | 活版印刷研究所

実際に使用されていた板は今も保存されている

本美濃紙保存会の初代会長の故古田行三(こうぞう)さんの邸宅の間口。
鴨居に干し板の当たった跡がそこかしこについていました。
そう!当たるのです。
古田さんは身長も高かったそう。
きっと、板を持つ支点も高めだったのだろうなと思い、ここを板を持って通られた回数を思うと、何とも言えない熱さを胸に感じます。

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ヒノキで補強された小口 | 干し板のお話 - 紙ノ余白 | 活版印刷研究所

ヒノキで補強された小口

干し板の跡が残る | 干し板のお話 - 紙ノ余白 | 活版印刷研究所

干し板の跡が残る

実際に使用されていた板は今も保存されている | 干し板のお話 - 紙ノ余白 | 活版印刷研究所

実際に使用されていた板は今も保存されている