京都大学図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]㉑
書庫環境を整える
連日ものすごい猛暑が続いていますね。
図書館では、夏場の温度や湿度に特に気を使います。
環境を適切に保たないと、カビや虫が発生して資料を傷つけてしまうからです。
今回はそんな図書館の書庫環境整備についてお話しします。
いつもお話している本の修復は、事が起こってしまった後の措置ですが、書庫環境を整えておくことは、修復しなければいけない資料を減らすための予防的措置といえます。
【温湿度について】
資料の劣化を引き起こす最も大きな原因の一つに、温湿度があります。
資料の保存には、温度18~22℃、湿度40~60%が推奨されていて、60%を超えるとカビが発生する危険性が高くなり、40%以下では資料が壊れやすくなります。
図書館に、温湿度計が設置されているのを見たことがあるかもしれませんが、資料を適切に管理するためです。
温湿度以外に資料を劣化させる原因として、光と空気の汚れがあげられます。
【光について】
美肌の大敵でもある紫外線は資料にも有害で、照明には紫外線防止型蛍光灯を用いたり、紫外線防止フィルターをつけたりすることが望ましいとされています。
また近年普及が進んでいるLED照明も、紫外線をほとんど含まないため有効であるといわれています。
照明は資料を劣化させる原因なので、できるだけ使用を控えることが望ましく、図書館では必要なところだけ点灯できる分割照明にして、使われていないときは消灯するようにしています。
図書館の書庫というと薄暗いイメージがあるかと思いますが、資料の長期保存を考えたためなのです。
【空気の汚れについて】
空気の汚れについて、二酸化硫黄や窒素酸化物などの大気汚染物質は、紙の劣化を招きます。
図書館で窓が開け放たれていることは少ないと思いますが、自動車の排気ガスなどの外気を取り込まないようにしているためです。
図書館の書庫は、薄暗くて寒々しいイメージがあるかもしれませんが、「これも資料をきちんと保管するためなんだ」と思ってもらえると嬉しいです。
この記事は、京都大学で行っている「資料保存環境整備マニュアル」を元に書きました。
京都大学では定期健康診断のように、毎年各図書館・室の書庫環境を調査しています。
マニュアルはウェブ上で公開していますので、ご興味のある方は、参考文献からご覧ください。
【参考文献】
京都大学図書館業務改善検討委員会 図書館サービス部会. 図書館資料保存環境整備マニュアル(書庫環境編).2018-08-01.
(参照 2018-8-7)
国立国会図書館. 温湿度管理.
(参照 2018-8-7)
京都大学図書館資料保存WS
N.K.