web-magazine
web-magazine

三星インキ株式会社
UVインキについて⑥

UVインキについて⑥ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

前回まで紫外線で硬化するインキ(UVインキ・LED硬化型インキ:以後UVインキと表記)について書かせて頂きましたが、当該インキは紫外線を照射することで瞬間的に強固な皮膜を形成するため、後加工までの時間短縮などのメリットがありますが、その反面、使用に関してはやや難しい点などもあります。
今回はUVインキのこのような点を書かせて頂きます。

以前コラムでUVインキを使用する際に問題となる点を、以下の通り、書かせて頂きました。

①皮膜が平滑になる(レベリング)前に皮膜が形成されるので光沢が出にくい
②原反とインキの間に隙間が生じて密着性の低下が発生する
③照射条件が強すぎると皮膜自体や原反を傷つけて皮膜や原反が脆くなる
④透明性の高いインキ(OPニス・白インキ)を使用した皮膜や原反が黄色く変色する
⑤顔料を攻撃して褪色・変色させる(特に鮮明な色調を有する蛍光インキなど)。
⑥新たに紫外線を照射する設備を導入する必要がある
⑦成分的に高価であり、インキ自体も高価となる。

上記内容について、少し説明させて頂きます。

まず①と②について
これはUVインキの『紫外線が照射されるとすぐに皮膜を形成する』という特長によるものです。
瞬間的に皮膜が形成されれば、印刷時に裏移りが発生しないので棒積みができる、すぐに後加工へと回せる といったメリットはありますが、上記①②のような問題が起こります。

①については、インキが版(あるいはブランケット)から原反へ転移する際、インキが版と原反の両方から引っ張られて離れるため(いわば強引に引きちぎったような状態となる)、その状態で紫外線が照射されて瞬間的に皮膜を形成すると表面が凹凸になる傾向となります。
皮膜形成までに時間を有する場合は、原反に転移直後は凹凸であっても時間とともに徐々に表面が滑らかになり、平滑性が上がります(星形の絞り口から出たマヨネーズは絞った直後はきちんと星形を有していますが、時間とともに広がって形が崩れている感じです)。
ですので、基本的に瞬間的に皮膜を形成するUVインキは、ゆっくりと皮膜を形成するインキよりも光沢が劣る傾向にありますので、その点周知したうえで対応してください。

②は瞬間的に皮膜を形成する時にどうしても体積の収縮が起こるため、せっかく原反にきれいに転移したインキであっても、硬化することで原反から少し浮いたような状態となり、密着性が弱くなる傾向にあります。これは特に表面の平滑な原反(フィルムなど)を使用した際に起こりやすいです(このような原反に印刷する際は、事前に使用する原反を用いて密着性の確認テストをするのが良策と考えます)。
インキ面でも体積収縮を抑える処方を検討していますが、完全に体積収縮するのを抑えるのは難しく、どうしても密着性は弱い傾向にあります。従って、インキ面以外での対応(プライマーやアンカーコートニスと呼ばれるコーティングをフィルムに施した上からUVインキを印刷する、また原反表面に処理(コロナ処理・プラズマ処理)を行う)についても検討して頂ければと存じます。

次は③と④と⑤です。
これも以前より書かせて頂いている通り、紫外線は通常の光よりもチカラが強く、このチカラによって光開始剤を開裂させて電子を発生させUVインキを硬化させていますが、光開始剤だけに紫外線が当たる訳はなく、照射された顔料や樹脂にも影響を及ぼします。特に耐光性の弱い顔料(鮮明色・薄色・蛍光色)は紫外線を浴びることで構造が壊れて発色しなくなる、または色の変化などが起こります。
この辺りは以前のコラムを読んで頂けるとありがたいです。

⑥と⑦は・・・仕方ないですね。
天然から取れる油成分に対して化学的に製造したUV樹脂、また紫外線を浴びることで電子を発生する光開始剤などを原材料として使用しています。従って一般のインキに比べるとUVインキは高価となります。
その分、瞬間的に皮膜を形成できるというUVインキの特長は時間短縮(納期・保管場所)や作業軽減(板割り作業など)、作業環境(パウダー噴霧など)などでメリットが出ます。

以上、今までのコラムでUVインキを使用する際に難しいと書かせて頂いた事案を少し説明させて頂きました。
次回は今まで触れていないUVインキ使用時の難しさについて書かせて頂きます。

UVインキについて⑥ - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所