(株)和光
活(い)きた版 「凹凸紙への印刷」
前回、変わった製版方法の箔押しをご紹介致しますと予告をしておりましたが、10/22にとある展示会が開催され、弊社が出展することとなりました。(このコラムが掲載される時には終了しておりますが、)版の展示だけではおもしろく無いので、実際に来場者の方々に印刷を体験していただく事になり、そのテストをしましたので、その模様をご覧ください。
弊社は、主にシール・ラベル印刷会社様への版供給を行っております。
シール・ラベル印刷においては、活版印刷で風合いとされているデボスやかすれが特別な事がない限りはご法度です。
印刷方式は基本的に活版印刷と同じ凸版印刷(凹凸のある版の凸部分にインキを乗せて、紙に転写する印刷)です。そこで問題となるのが、上質紙や和紙などの平滑性のないデコボコした紙への印刷です。ヘコんだ部分へは版の凸部分が当りませんし、インキのにじみもそこまでおきないので、紙の色の点々が発生します。
いかにこの点々を無くすかがポイントとなり、同じ色を数回印刷したり、インキを盛ったりといろいろ工夫をして印刷されています。しかし、その事によってのデメリットも多く、皆さん苦労されています。
数年前より弊社はフレキソ用の版の製版も行っており、フレキソ用の版材は柔らかいので、平滑性のない紙への適性がよく、また、版から紙へのインキ転移性も良いことが分かり、平滑性の少ない紙への印刷におすすめしています。
通常の樹脂版でも柔らかい版材はありますが、印圧に負けて、凸文字や白抜き文字が潰れる現象が発生し、おすすめ出来なかったのですが、フレキソ用の版材は素材が違うこともあり、凸文字や白抜き文字等の潰れも発生しにくい事も分かりました。
今回の展示会では、それを実際に体験していただくのが狙いです。
早速始めていきましょう!まずは、紙のチョイスです。今回はクレープ紙を使用します。(写真1)
ご覧のように、平滑性が悪いです。個人的には好きな紙ですが、いざ印刷するとなると、二の足を踏んでしまいます。製版の手配を頂く時も、少々ブルーになります。試すにはもってこいの紙です。
次に版の準備です。(写真2)
上が通常の樹脂版で下のピンク色の版がフレキソ用の版です。通常、フレキソ印刷用の版は、1.14mmなどぶ厚いのですが、通常の樹脂版と同じ0.95mmの版材がありますので、それを使用します。
同条件で印刷して仕上がりの違いが分かるように、並べて同時に印刷します。
今回は九州に持っていくので、携行性を考えて、小さい印刷機を用意しました。(写真3)
インキを練ります(写真4、5)。インキ量と練り具合がキモです。インキが多すぎても版に必要以上に着いてしまい、白抜きやベタきわの印刷が綺麗に出来ませんし、インキが硬すぎても広い凸部分にインキが乗りません。今回の印刷デザインはベタ部分が多く、中に細い白抜き文字やアミもありますので、苦労しました。
版にインキを乗せていきます(写真6)。インキ練りや分量の修行が足りないせいか、1回では適量が乗せられないので、色々試して5回乗せにしました。
プラットフォームに紙をセットして印刷していきます(写真7)。このタイプは初めて使うので、ワクワクします。緊張してレバーが向こうになっていますが、そのままクルクルします。(写真8)
いかがでしょう?上が通常の樹脂版で印刷したもので、下がフレキソ用版で印刷したものです。(写真9)
通常の樹脂版では、低い部分にインクが転写されていません。クレープの紙の模様が出て、これはこれで良い風合いが出てますが、今回はベタ部分のインキを紙に綺麗に転写するのが目的なので、NGです。下のフレキソ用版の方は、綺麗に転写されています。しかも、アミ部分や「wako」の細い白抜き文字も潰れがありません。
デザインや仕上がりイメージによって版の種類をチョイスされると、印刷表現の幅が広がります。
また、インキの練りや量の加減が経験不足なので、今後の課題になりました。