図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]72
図書館資料保存ワークショップ 番外編
新たな一頁へ
「図書館に修復室を作りたい」と2003年から京都大学の図書館を会場に自主サークルのようなかたちで図書館所蔵本の修理ワークショップを続けて来ました。その間、ワークショップのブログ図書館資料保存ワークショップブログを始めて全国の思いを同じくする仲間ができたり、アメリカの資料保存専門図書館員の方に関心を寄せていただいてケンタッキー州立大図書館での研修に出かけたりと、修復室は未だに実現していませんが、様々な人との出会いがありました。
そして、この活版印刷研究所さんのWEB MAGAZINEという発信の場もいただきこの記事で72号になります。
そしてそして、2019年からのコロナ禍です。会場であった大学へは立ち入れなくなりました。幸いなことにこの年2019年11月のWEB MAGAZINEに学外で番外編と称して、本の成り立ちを知るためにルリュールの勉強会を始めることを報告できました。会場は京都市内のスペースものことあとりえ一頁 さんです。実はこのスペースはWEB MAGAZINEの筆者小梅さんが管理・運営なさっています。
そのころの経緯はこちらをご覧ください。
この間私のルリユールの師匠が亡くなり、そのアトリエの資材や材料引き継ぎについても図書館に修復室をツクろう!68に載せていただきました。
ルリユール用の大型カッター、プレス、手作業に使うカッターナイフ、革削ぎ包丁、ヘラなど、独特で日本では手に入りにくいものもあります。
大型のカッター、プレス、エトー(製本機)など。(写真1、2をご覧ください)
これらの資材始め紙、糸、革などの材料を引き続き使わせていただかないと私たちのルリユール勉強会や作品制作は不可能です。
ご遺族の引き継いで欲しいとのご厚意をいただきましたが、アトリエを構える場所がありません。
本年9月のある日、番外編のメンバーと山野上先生のアトリエへ、作品とアトリエ見学に伺いました。先生の遺作のリストとの照合をし、作品に直に触れることができました。
そこで、筆者は思い切ってものことあとりえ一頁 さんへアトリエを引き継いでいただけないかと申し出てみました。突然の申し出にもかかわらず、小梅さんとお父様には快くお引き受けくださいました。
10月29日、無事アトリエの引っ越しができました。カッターは分解して、クレーン車で釣り上げて運び出し、ものことあとりえ一頁 さんへ運び入れて組み立てる。運搬、組み立てにあたってくださったAKI鉄工所の職人さんたちの仕事ぶりには感動でした。
この日が来るまでに何度も下見をしての綿密な計画とダイナミックな作業は、お任せしてしまった私は直には拝見できませんでしたが、小梅さんがしっかりと映像に記録してくださいました。(写真3、4空飛ぶカッター)
そして新しい環境のアトリエができました。(写真5)
私たちは本に負担を掛けない、後の世のひとたちにも気持ちよく読んでもらえる修理を目指しています。まだまだ目標には程遠いのですが、アトリエの名前のように新しい1頁をめくり、そして2頁、3頁と頁を進めて行きたいと思いを新たにしています。
実は私たち、この11月1日に、もう一頁新しい頁を開きました。
図書館の所蔵資料を図書館司書自身の手で大切に保管、継承して行きたい。しかし、日本の図書館には資料の保存業務に携わる「修復室」がほとんど存在しません。それで、このWEB MAGAZINEのコラムタイトルも「図書館に修復室をツクろう!」と名付けています。
そこで、私たちと同じ思いをもった図書館司書たちの修理現場の実情を知りたいと、東京の仲間と行動を起こし、「図書館総合展2022」にアンケート調査を出展しました。
詳しくは先月号のWEB MAGAZINEの記事をご覧ください。
11月4日には中間報告として、回答結果第一弾を公開いたしました。アンケートは11月いっぱい続きます。このWEB MAGAZINEがアップされる11月15日までには、中間報告第二弾も公開する予定です。
全国の図書館員の仲間はどんな環境で所蔵資料の保存や修理に取り組んでいるのか知ることができるのではないでしょうか?
そして、私たち「修理系司書の集い」も今後何をしたら良いのか分かってくるはずです。
コロナ禍の状況で東京の仲間とまだ一度も一同に会することもできていません。京大でのワークショップも開催できていません。
しかし、そのような状況だからこそ編み出されたオンラインやインターネットを使って、今までは図書館総合展開催地の横浜まで出かけてしか参加することができなかった催しに参加が可能となりました。ピンチをチャンスに!でしょうか?
これを上手く利用して行動を起こし、どんどん新しい頁を開いて行く「番外編」と「修理系司書の集い」の仲間にどうぞご期待ください。
図書館資料保存ワークショップ
M. T.