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生田信一(ファーインク)
市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました

市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

今回のコラムは市谷の杜 本と活字館で開催されている企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」を覗いてきました。展示の主役は書籍の本文ページに使われる用紙たちです。

では、一緒に覗いてみましょう。

市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

書籍用紙の見本帳を作ろう

書籍は大別して、ソフトカバーと呼ばれる「並製本」の仕様のものと、厚くて頑丈な表紙で本文をくるんだ「上製本」の仕様のものとがあります。また、幼児向けの絵本は、本文が2枚の紙を貼り合わせた合紙(ごうし)でできていたり、角が丸く加工されているものもあります。

小説や評論などは、活字をじっくり眺めながら読むものですから、ページがめくりやすく、柔らかな紙が求められます。紙色は、白色よりもやや黄ばんだクリーム色のもののほうが、落ち着きがあって好まれるかもしれません。カラーの写真やイラストのビジュアルを鮮やかに印刷したいのであれば、カラーページに限って紙質を変えるという選択もありです。どの紙を選ぶのがベストか、本の制作現場では、紙の選択に迷うことも多いでしょう。

紙の選択に迷ったときに参照したいのが紙の見本帳です。こうした見本帳は特別なものなので、専門店で探し求めることになります。紙の製造メーカーからは、さまざまなものが販売されているのですが、なにしろ種類(銘柄)が多いので、目的に合った、使いやすい見本帳を探すのはなかなか大変です。

市谷の杜 本と活字館で開催されている企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」は、書籍用紙にターゲットを絞って、60種類以上の主要な銘柄を整理・分類して会場に並べ、紙の感触を確認できるというユニークな企画展でした。来場者は好みの用紙を選び、持ち帰ることができます。さらに好みの用紙を選んで、オリジナルの見本帳を製本・加工し、持ち帰ることができます。紙好きの方にはたまらない企画です。筆者も参加して見本帳作りにトライしました。(写真1)

(写真1) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真1)市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」会場。

書籍用紙というテーマは奥が深くて、少しとっつきにくいかもしれません。本来、用紙の種類(銘柄)が多く、その特徴をつかむには、実際に触わって確かめるしかありません。しかしながら、展示や解説のパネルは丁寧に作られており、初心者にもわかりやすく工夫されていたように思います。(写真2〜4)

(写真2) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真2)以下、解説より抜粋。
「今回注目するのは、華やかな装丁ではなく、本文(ほんもん)が書かれている紙。何の変哲もない白い紙に見えますが、実は日本には、書籍の本文用に使われている紙だけでも何十種類も存在します。本文用紙、書籍用紙と呼ばれるこの紙たちは、それぞれに個性があり、本の作り手たちによって意味を持って選ばれています。」

(写真3) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真3)以下、解説より抜粋。
「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界 眺めて触って違いを感じる書籍用紙。ただの白い紙だと侮るなかれ、書籍に使われている紙はそれぞれに特徴があります。一枚一枚を眺めたり触ったりしてその違いを感じてみましょう。」

(写真4) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真4)以下、解説より抜粋。
「書籍用紙見本帳の作り方。
1 並んでいる紙の中から気になる紙を1枚ずつ取ります。全種類でも、好きな、銘柄だけでもOK! 選んだ紙は、紙ファイルに入れましょう。
2 紙を選び終わったら、スタッフにお声かけください。
3 選んだ紙を制作室の製本機でとじたら。見本帳の完成です!」

集めた用紙をスタッフに渡すと、天のり製本機で糊付けしてくれます。保存に便利な見本帳が完成します。(写真5、6)

(写真5) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真5)

(写真6) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真6)
(写真5、6)見本帳の用紙をスタッフに渡すと、天のり製本機で綴じてくれます。

(写真1) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真1)市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」会場。

(写真2) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真2)以下、解説より抜粋。
「今回注目するのは、華やかな装丁ではなく、本文(ほんもん)が書かれている紙。何の変哲もない白い紙に見えますが、実は日本には、書籍の本文用に使われている紙だけでも何十種類も存在します。本文用紙、書籍用紙と呼ばれるこの紙たちは、それぞれに個性があり、本の作り手たちによって意味を持って選ばれています。」

(写真3) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真3)以下、解説より抜粋。
「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界 眺めて触って違いを感じる書籍用紙。ただの白い紙だと侮るなかれ、書籍に使われている紙はそれぞれに特徴があります。一枚一枚を眺めたり触ったりしてその違いを感じてみましょう。」

(写真4) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真4)以下、解説より抜粋。
「書籍用紙見本帳の作り方。
1 並んでいる紙の中から気になる紙を1枚ずつ取ります。全種類でも、好きな、銘柄だけでもOK! 選んだ紙は、紙ファイルに入れましょう。
2 紙を選び終わったら、スタッフにお声かけください。
3 選んだ紙を制作室の製本機でとじたら。見本帳の完成です!」

(写真5) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真5)
(写真5、6)見本帳の用紙をスタッフに渡すと、天のり製本機で綴じてくれます。

(写真6) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真6)

本文用紙を触って感じよう

本文用紙の展示スペースは圧巻でした。61種類の用紙が吊り下げられ、見本帳用にカットされた用紙はテーブルに並べられ、参加者は好みの銘柄の用紙を触って感触を確かめ、持ち帰ることができました。(写真7、8)

(写真7) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

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(写真8) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真8)
(写真7、8)本文用紙の陳列の様子。

本文用紙は種類別に整理され、好みの銘柄を持ち帰ることができました。分類は、微塗工上質紙、微塗工中質紙、上質紙、クリーム上質紙、書籍用紙(白)、書籍用紙(クリーム)、中質紙、ファインペーパーなど。(写真9〜13)

(写真9) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真9)

(写真10) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真10)

(写真11) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真11)

(写真12) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真12)

(写真13) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真13)
(写真9〜13)テーブルに並べられた本文用紙。全種持ち帰ることができます。

(写真7) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真7)
(写真7、8)本文用紙の陳列の様子。

(写真8) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真8)

(写真9) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真9)

(写真10) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

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(写真11) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真11)

(写真12) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真12)

(写真13) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真13)

(写真9〜13)テーブルに並べられた本文用紙。全種持ち帰ることができます。

坪量・連量・紙厚、紙のサイズ、紙の目など

紙の重さ、厚みを知る単位として、坪量(つぼりょう)と連量(連量)があります。定義がややこしいのですが、紙のスペックを表す単位として覚えておきましょう。コピー用紙の場合は、包みを確認すると、坪量(単位:g/㎡)で表示されていることが多いです。(写真14)

(写真14) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真14)以下、解説より抜粋。
「紙の重さは、「坪量」と「連量」という言葉で表現します。「坪量」は紙の1平方メートルあたりの重さのことで単位は「g/㎡」で表示します。米坪(べいつぼ)と呼ぶこともあります。「連量」は紙1000枚分の重さのことで、単位は㎏で表示します。

紙の規格サイズには、A列本判(625×880mm)・B列本判(765×1085mm)・菊判(636×939mm)・四六判(788×1091mm)・ハトロン判(900×1200mm)の5種類があります。(写真15

(写真15) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真15)以下、解説より抜粋。
「わたしたちが普段の生活の中で書籍やコピー用紙の形で触れている紙は、大きな紙(全判/全紙)をカットしたものです。全判は大きさの違いで全部で5種類。書籍用紙に使われている「菊判」と「四六判」は、日本独自の規格で明治時代から使われているんですよ。」

書籍を印刷・製本する前に、本の重量やページの開き具合をチェックする目的で、事前に「束見本」を作成する場合があります。束見本は印刷されておりませんが、印刷する前の段階で、製本加工した後の本の厚み(束)や重さが確認でき、ページの開き具合もチェックすることができます。

(写真16) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真16)

(写真17) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真17)
(写真16、17)以下、解説より抜粋。
「束見本の本棚 束見本を小口から見てみる 普段は見ることのない、「本の裏側」を観察してみましょう。本の束が見える小口側から本を眺めてみると、書籍用紙そのものの微妙な色の違いが見えてきます。」

同じ大きさの書籍で、本文用紙を「コート紙」、「嵩高紙」、「書籍用紙」に変更して重さを比較できるコーナーがありました。「嵩高紙」は、ひとことで言うと、従来の紙と比較して、紙繊維の密度が低く、軽い割りに厚みのある紙のことです。本が見た目より軽くなるので、通勤・通学などで本を持ち歩く場合は、読者の負担が軽くなります。(写真18)

(写真18) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真18)以下、解説より抜粋。
「束見本を持ち上げてみよう。同じ大きさで重さの違う紙を使った3種類の束見本をそれぞれ比べてみましょう。」

 

今回は、企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」を訪問したレポートをまとめてみました。私が訪れたのは平日でしたが、多くの人が集い、盛況でした。参加して眺めるだけではない、感じるイベントやワークショップをたっぷり堪能できました。ぜひご来場ください。

では、次回をお楽しみに!

(写真14) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真14)以下、解説より抜粋。
「紙の重さは、「坪量」と「連量」という言葉で表現します。「坪量」は紙の1平方メートルあたりの重さのことで単位は「g/㎡」で表示します。米坪(べいつぼ)と呼ぶこともあります。「連量」は紙1000枚分の重さのことで、単位は㎏で表示します。

(写真15) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真15)以下、解説より抜粋。
「わたしたちが普段の生活の中で書籍やコピー用紙の形で触れている紙は、大きな紙(全判/全紙)をカットしたものです。全判は大きさの違いで全部で5種類。書籍用紙に使われている「菊判」と「四六判」は、日本独自の規格で明治時代から使われているんですよ。」

(写真16) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真16)
(写真16、17)以下、解説より抜粋。
「束見本の本棚 束見本を小口から見てみる 普段は見ることのない、「本の裏側」を観察してみましょう。本の束が見える小口側から本を眺めてみると、書籍用紙そのものの微妙な色の違いが見えてきます。」

(写真17) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真17)

(写真18) | 市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」に行ってきました - 生田信一(ファーインク) | 活版印刷研究所

(写真18)以下、解説より抜粋。
「束見本を持ち上げてみよう。同じ大きさで重さの違う紙を使った3種類の束見本をそれぞれ比べてみましょう。」

市谷の杜 本と活字館 企画展「ようこそ魅惑の書籍用紙の世界」

URL:https://ichigaya-letterpress.jp/gallery/000428.html
会期:2024年10月19日(土)~2025年02月16日(日)
住所:162-8001 東京都新宿区市谷加賀町1-1-1
電話:03-6386-0555
開館時間:10:00~18:00
休館:月曜・火曜(祝日の場合は開館)、年末年始
   入場無料