図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]70
大学の資料保存について気懸りなニュース
ー再びー
『京都新聞』今年の8月31日夕刊のコラム「現代のことば」で、またまた気懸りな記事を読みました。同志社大特別客員教授で日本天文学会第49代会長を務められた柴田一成氏が書かれています。
その内容を掻い摘んで紹介します。NHK-BSで「アマチュア天文学の父 山本一清」という番組が放映されたことから始め、山本一清(1889~1959)とは?の紹介があります。山本一清とは京都大花山(かざん)天文台の初代台長を務め、1930年代には国際天文学連合の黄道光委員会の委員長を務めるなど日本の天文学の国際化にも貢献した。また、1920年に日本で最初のアマチュア天文同好会をたちあげ、1929年に花山天文台ができてからは、同好会の事務局を天文台に置き、そこを拠点にして、天文学の普及活動に邁進した。とあります。
WEB MAGAZINEの「図書館に修復室をツクろう!」52の ある向日庵本では、寿岳文章が戦後すぐに出版頒布した『ウヅワース博士追憶集』の一冊が山本一清博士の手にわたり、現在はまさにこの花山天文台が所蔵していることを書きました。また、NPO向日庵出版の『向日庵』で、文章の子息閏氏は天文学者でしたが、山本一清編の『天文学講座』で天文学の基本を学んだ。との記事を読んだ覚えがあります。
グローバルな視野を持って活動した山本一清と寿岳文章の交流がしのばれます。
さて、柴田先生のコラムの続きです。“2011年、山本博士のお孫さんから、博士が遺した大量の天文関係資料を京大に寄贈いただいた。その資料には、昭和初期の世界レベルの天文研究関係資料だけでなく、上記のアマチュア天文家育成にかかわる手紙や、関連文献さらには当時の様子を伝える新聞や雑誌などの文化的資料まで含まれていた。……省略……ところが、2017年以後、京大キャンパス内で保管する場所が確保できなくなり、現在は花山天文台の研究室2室に全資料を数百個の段ボール箱に詰めた状態で保管している。何とか失われないように保管しているが、段ボールから取り出すのが容易でないので、資料がほとんど活用できない。外部からの閲覧はお断りせざるを得ない状態だ。保管状態も仮保存として箱詰めした状態なので、何年もの保存に耐えられる状態ではない。というわけで、山本一清関連資料などを長期にわたって安全に保管し常時閲覧できる資料館の建設が花山天文台の喫緊の課題となっている。ぜひ、多くの市民のみなさんのご支援をお願いしたい。”とあります。
花山天文台は現在天文台としての役割を終えましたが、市民教育関係者からの「存続させ、見学会や観望会を引き続き開催してほしい」等の要望を受け、一般財団法人 京都花山天文台の将来を考える会を2016年に立ち上げ見学会やコンサート、講演会を開催して活動を続けて居られます。
昨今、文化財の修復、図書館や文庫などの活動、資料館などの建設・維持などに資金を募るクラウドファンディングが盛んです。確かに志を同じくする人たちが助け合って実現にこぎつけることは素晴らしいと思います。が、本来、国として公に取り組むべきことに民間の善意に頼るだけでよいものでしょうか?
先々月のWEB MAGAZINEで紹介させていただいた故山野上禮子先生のアトリエの資材一切と作品の継承も、微力な私たち弟子が苦慮している状況です。伝統工芸や文化財修復技術などの継承をどうしたら実現できるのか?わたしたちに何ができるのか?改めて思わせられます。
さて、上記故山野上禮子先生の作品リストの作成、現物確認など進めています。制作データをよくみますと、ルリュールは「本の再生」でもあり、修復と切り離せないものであると、あらためて思います。
特徴的な素材を使ったものなど掲載します。どうぞご覧ください。
リスト作成はアトリエのメンバー波多江貴子氏です。
図書館資料保存ワークショップ
M.T.