図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]㊼
文庫本の改装に挑戦!キットを使って。
本の修理には製本を学ぶことが必要だ!と雷に打たれてから、資料保存ワークショップ番外編でブラデル製本を学ぶこと(詳しくは、[図書館に修復室をツクろう!]㊶資料保存ワークショップ「番外編」その活動の様子などご覧ください。)それと並行して、東京で活動されている「古本と手製本 ヨンネ」さんが開かれている、本の修理と手製本の講座の受講を開始しました。
受講迫る頃、まずは予習。とばかりに、ヨンネさんで販売されている「手製本キット・文庫本をハードカバーに改装するキット(好きな布タイプ)」というのを取り寄せ、文庫本の改装に挑戦してみました。
今回はその記録をこちらに。
さて、どの本を改装するか・・・
これしかない!と決めたのは、
[図書館に修復室をツクろう!]㊺夏の読書感想文「菜の花工房の書籍修復家 : 大切な本と思い出、修復します」でご紹介した、
「菜の花工房の書籍修復家 : 大切な本と思い出、修復します」
日野祐希著
発行:宝島社 2019年3月
ISBN:9784800293473
こちらの文庫本。
理由は、本の修理を学ぶ女の子が主人公の小説だから。
これ以上の説明は必要ないでしょう!
本の修理を学ぶには、本を解体することもとても大事です。
何でできているか、どういう仕組みになっているか、それを知ることが出来ます。
ちょうど、少年が電化製品を分解する、そういう感覚と似ているかな?
とは言っても、無線綴じの本文はばらさずそのまま使用するので、綴じる作業がない、お手軽な製本体験になるでしょうか。
初心者にはぴったりです。
材料は、道具と糊類、表紙にしたい布以外の必要なものはキットに入っているので、思い立った時に始められます。
寒冷紗や、花布なんて普段から製本している方でないとお家にはないものかと思いますので。
まずは、文庫本の表紙を外してゆきます。(写真1)
標題紙をしっかり手で押さえ、反対の手で表紙とのどの接着部分に注意払いながら、ゆっくり表紙をひっぱってゆくと、意外と簡単きれいに表紙が剥がれてくれました。
それから、色見返しを紙の目を確認して半分に折り、本文の表紙側、裏表紙側に貼ります。
本文からはみ出た部分はカッターでカット。(写真2)
寒冷紗で背を固めて、栞紐を糊で付ける。
このあたりで、なんだか、いつも文庫本の背、天の隙間から見えていたところの中身を見ているような気分で、気持ちが昂ります。
普段見えない部分を見ているという興奮。
そして、花布を付けると、ハードカバーの本に近づいてゆく感覚でさらにわくわくしてきます。
ヨンネさんのキットは、見返しや栞紐、花布など、それぞれの色の取り合わせのセンスがよくて、組み合わせた時にその見た目の美しさも目に嬉しいものです。
そして、背の幅を測り、寸法に合ったクータを付けます。(写真3、4)
修理ではなく製本でクータを付けるのは初めてで、嬉しい。
次に、しっかりと厚みのあるボード紙でハードカバ―の表紙の芯を作ります。
この作業が私には一番難しかったです。
ボード紙は、表紙・背表紙・背の芯となる3つの部分を切り出すのですが、厚さに対して直角でカットすることが出来なかったのです。
金属製の定規を当て、大きいカッターで注意深く何度も切る。
きちんと立てているつもりでも、どこかでカッターの刃が寝てしまっているのでしょう。
切り終えて、断面を見て、ちょっとがっかり。
専門に製本をされる方は、製本用のカッターを使われる作業かと思いますが、持っていない人が出来る限り直角に切るには、なにかコツがありそうな気がしています。
それとも補助する道具があるのかも。
ここはこれから学んでいきたいところです。
形が均一にできなかった3つのボード紙の芯。
難点がなるべく目立たない仕上がりになるよう、どこをどう使うか。
出来上がりの形を想像して、ここで使用する向きを決めてしまい、表裏、天地、を表紙・裏表紙・背のそれぞれのボード紙に鉛筆で書き込みました。
それから、表紙のボードに、元の表紙からカットしたタイトルを貼り込むための溝堀りをするのです。
これも難しい!
貼り付けたいタイトルを表紙側のボードに当てて、配置する場所に印を付けます。
そこにカッターで線を引いて、端っこからボード紙を少しずつ掘り起こしてはめくる、という作業で、これはなかなか地味な作業。そして、手を彫らないように気を付けねばなりません。
版画の版の木彫を彫刻刀でするみたいな作業です。
でも彫り過ぎてもいけないし、なるべく均一な深さになるよう意識します。
彫る、というより、めくる、という感覚です。
この作業では、紙が何層にも折り重なってできているということがよく分かります。(写真5、6)
ある程度、めくったらタイトルを当ててみて、様子を見ました。
彫られた面と溝の淵の立ち上がりをヘラで慣らして、1日目はここまで。
クータ―まで付けた本文は、プレスに挟んで一晩置きます。
2日目には、表紙にする布をカットして、裏打ちされた接着芯をアイロンで付けます。
1日目にカットした表紙の芯となるボード紙を布に当てて、位置を決めてカットし、芯となるボード紙を貼りつけます。(写真7)
背と表紙の間の溝や、表紙のタイトルをはめ込む溝も丁寧にヘラでなでつけます。
後は、見返しとボードを接着、タイトルを表紙の溝に貼り付け、背タイトルも背に貼り付けて、完成です。(写真8、9)
ボードの厚みが直角でないことは布にくるまれたことで、心配していたほどにはならなかったですが、やはり、できる限り直角を目指したい!という思いは、次のステップへの糧に。
また大切な本への愛着が一層膨らみました。
資料保存WS
小梅