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池ヶ谷紙工所
第11回「ミニエンボス機の新しい可能性」

珍しい試作機

弊所は「ミニエンボス機」という少し変わったエンボス機を所有しています。通常のエンボス機は2メートル近くあるロールを使いますが、このミニエンボス機のロール幅はおよそ20センチ。B5くらいまでのサイズのシートにエンボス加工ができます。

このミニエンボス機は、大手ロールメーカーの由利ロール株式会社が試作で作った一台です。導入しやすいエンボス機として売り出そうと思ったものの、ロール幅が狭いので作業効率が良くなかったり、対応できる用紙が少ないことがネックとなって商品化を断念。お蔵入りになっていたところを、弊所が購入という形で譲り受けました。なんでまたそんなものを買ったの?と思う読者様もいらっしゃるかもしれませんが、小さいことのデメリット以上の可能性をこのミニエンボス機に感じたからです。

(写真1)一台だけ試作されたミニエンボス機。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真1)一台だけ試作されたミニエンボス機。

(写真1)一台だけ試作されたミニエンボス機。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真1)一台だけ試作されたミニエンボス機。

ミニエンボス機のメリット

まず大きなメリットとして、オリジナルのロール柄が作りやすいというのがあります。

既存の柄に入れたいものがない場合や、ブランド名や商品名をエンボスで入れたい場合などは、オリジナル柄のロールを新規製作します。しかし、2メートル近くある金属のロールに柄を刻んで作るわけですから、やはりそれなりのコストがかかり、そう気軽に作れるものではありません。その点、このミニサイズのロールなら、幅が狭い分ずっと安価にオリジナルロールが製作できます。仕様によりますが、大型ロールの半額以下の金額で作ることも可能です。例えばラベルやブランドタグなど、こだわりの質感を求めるオリジナリティが高いものに活用しやすいと思います。

このミニエンボス機の柄は「モアーレ柄」と「ダイヤ柄」の二種類。どちらもエンボスで表面を落ち着かせるというよりは、光を反射して個性的な印象に仕上げる「反射柄」です。需要に応じて様々な柄を増やしていければ、活用の幅もさらに広がっていくと思いますね。

サイズは小さいですが設計はかなり本格的に作られているので、大型機と遜色ないエンボス加工が可能です。深くしっかりとエンボスを入れることができますので、空押し印刷のような感覚でも使えます。
すでに印刷済みのものに加工できるのはエンボスの強みのひとつですが、取り回しのよいサイズであることを生かして、小ロットのエンボス加工なども積極的に手がけられないかなと考えています。先日はクライアントさんのお宅にこのミニエンボス機を持ち込み、結婚式の招待状にエンボス加工しました。華やかなパール紙に反射柄がよく映え、より荘厳な雰囲気の招待状にできました。
また、エンボスを入れた後にロールで巻き取る「ロール・トゥ・ロール」の作業時に、大型機のように広いスペースを占有しないことも利点。タック紙(裏面に粘着剤が塗布されているシール紙)を使ったラベル印刷などを多く手がけていこうと思っています。反射柄のエンボスを入れるととても目立つ個性的な見た目になりますので、お酒のラベルや商品ステッカーなどに特におすすめです。

(写真2)光をよく弾く個性的なモアーレ柄。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真2)光をよく弾く個性的なモアーレ柄。

(写真3)こちらはダイヤ柄。視覚効果が強めのエンボス。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真3)こちらはダイヤ柄。視覚効果が強めのエンボス。

(写真4)運べるミニサイズであることも大きな利点。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真4)運べるミニサイズであることも大きな利点。

(写真5)結婚式の招待状にエンボスを。パール紙に反射柄がよく映える。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真5)結婚式の招待状にエンボスを。パール紙に反射柄がよく映える。

(写真6)ロール・トゥ・ロールでの運用も容易。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真6)ロール・トゥ・ロールでの運用も容易。

(写真2)光をよく弾く個性的なモアーレ柄。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真2)光をよく弾く個性的なモアーレ柄。

(写真3)こちらはダイヤ柄。視覚効果が強めのエンボス。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真3)こちらはダイヤ柄。視覚効果が強めのエンボス。

(写真4)運べるミニサイズであることも大きな利点。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真4)運べるミニサイズであることも大きな利点。

(写真5)結婚式の招待状にエンボスを。パール紙に反射柄がよく映える。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真5)結婚式の招待状にエンボスを。パール紙に反射柄がよく映える。

(写真6)ロール・トゥ・ロールでの運用も容易。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真6)ロール・トゥ・ロールでの運用も容易。

エンボスの周知活動に

せっかく持ち運べるサイズなので、展示会などのイベントに出張してワークショップを行っています。まだ始めたばかりなので手探りな部分が多いのですが、評判はなかなか上々です。実際の作業を見てもらえる機会は思った以上に得るところが大きく、来場者のリアクションは思った以上に好意的で盛況です。
ただ、予想はしていましたが、やはり最初は「エンボス加工って何?」という声が多く、周知活動が全然足りないなと実感しています。何にしてもまずは知ってもらうことが重要だと思いますので、専門業に従事する身として、こういう活動はできるだけ続けていきたいと思います。
このようなイベントにフットワーク軽く参加できるのは、ミニエンボス機ならではの利点です。より本格的なワークショップの開催や、プリントショップへの貸し出しなど、様々な活用方法があると思いますので、前向きに検討したいですね。

(写真7)ワークショップなど、運べるサイズだからこそ出来る活動がある。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真7)ワークショップなど、運べるサイズだからこそ出来る活動がある。

(写真7)ワークショップなど、運べるサイズだからこそ出来る活動がある。 | 第11回「 ミニエンボス機 の新しい可能性」 - 池ヶ谷紙工所 | 活版印刷研究所

(写真7)ワークショップなど、運べるサイズだからこそ出来る活動がある。

この持ち運べるサイズの本格的なエンボス機は大変珍しく、国内はもちろん、おそらく世界的に見てもそう多くはないと思います。せっかく縁があって手に入ったものですから、うまく活用していきたいと考えています。