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(株)和光
活(い)きた版 「一段止め箔版」

「活(い)きた版18 箔押しその11」において、次回は色々な模様や製版方法を変えて試したいと予告をしておりましたので、今回はそちらのご紹介をしたいと思います。

ずばり!一段止め箔版です。

一段止め箔版の説明には、版の製版工程の理解が必要になりますので、まずはそれから。
金属版の製版には、機械彫刻、もしくはエッチング(腐食)させて凹凸を成形する方法を用います。金属版材の表面にレジスト(抗腐食膜)を形成して、エッチングされない所(印刷する所)とエッチングさせる所(印刷しない所)を分けます。レジスト部分がエッチングされない所になり、レジストがない所(金属が露出している所)がエッチングさせる所となります。(写真1)

(写真1) | 活(い)きた版 「 一段止め箔版 」 - (株)和光 | 活版印刷研究所

(写真1)

エッチング工程は、大きく2つの方法に分けられます。

1.パウダーエッチング

エッチングを複数回に分けて、必要な深さまでエッチングさせる方法です。
なぜ複数回エッチングをする必要があるのか?それは、エッチングが進行していくと、レジストの下側にもエッチングされてしまう(サイドエッチ)ので、それを防止するために少しエッチングさせては「キリン血」と呼ばれる低温で溶ける樹脂の粉末を使用してショルダー部分に抗腐食皮膜を形成し、サイドエッチを防止します。この工程を繰り返して、必要な深さまでエッチングさせます。(写真2)

(写真2) | 活(い)きた版 「 一段止め箔版 」 - (株)和光 | 活版印刷研究所

(写真2)

2.パウダーレスエッチング

パウダーエッチングは手間がかかり、職人技に頼る部分が多いので、次に開発された方法がパウダーレスエッチングです。
腐食液に添加材を混ぜ、添加材によって抗腐食皮膜を形成させながらエッチングを行い、1回のエッチング工程で必要な深さまでエッチングさせる方法です。
亜鉛版やマグネシウム版、銅版の多くは、この方法でエッチングされています。

弊社の真鍮版は、一般的なパウダーレスエッチングと違い、パウダーエッチングで製版しており、1.2mm厚の真鍮版ですと計5回に分けてエッチングを行って版を製造しております。

一段止め箔版とは、部分的を1回のエッチングのみで終わらせて、他の部分はそのまま残り4回のエッチングを行います。1回のエッチングで終わらせた部分は凸版の頂点より少しだけ低くなります。(写真3)

(写真3) | 活(い)きた版 「 一段止め箔版 」 - (株)和光 | 活版印刷研究所

(写真3)

この箔版で箔押しを行うと、凸版の頂点と一段止めの部分は箔が転写され、一段止めの部分は、版が低い分、浮出し(言い換えれば、凸版頂点部分がデボス)がかかった箔転写が可能になります。言葉ではイメージが湧かないと思いますが、転写後の画像を楽しみにしておいてください。
「活(い)きた版18 箔押しその11」のテクスチャー箔押しとの違いは、前回が線のピッチが狭く、必然的に箔押しされるのに対し、より広範囲での表現が可能になる点が違います。

まず、データを作成します。今回のデザインは、「梨地(なしじ)」です。大小の点々で凹凸をつけて果物の梨の皮のような模様を表現したいと思います。梨のイラストが上手く描けなかったので、漢字の梨地の中を梨地模様にしました。(写真4)

(写真4) | 活(い)きた版 「 一段止め箔版 」 - (株)和光 | 活版印刷研究所

(写真4)

文字の輪郭を罫線で囲んでおりますが、その中の白い部分を一段止めにして製版をします。
次回、製版と箔押しのトライアルです。レタープレスコンボキットで一段止め箔押しはできるのでしょうか?お楽しみに!

(写真1) | 活(い)きた版 「 一段止め箔版 」 - (株)和光 | 活版印刷研究所

(写真1)

(写真2) | 活(い)きた版 「 一段止め箔版 」 - (株)和光 | 活版印刷研究所

(写真2)

(写真3) | 活(い)きた版 「 一段止め箔版 」 - (株)和光 | 活版印刷研究所

(写真3)

(写真4) | 活(い)きた版 「 一段止め箔版 」 - (株)和光 | 活版印刷研究所

(写真4)