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三星インキ株式会社
UVインキの貯蔵安定性について

UVインキの貯蔵安定性について - 三星インキ株式会社 | 活版印刷研究所

今回は今まで触れてこなかったUVインキの使用に関する難しさについて書かせて頂きます。

まずはUVインキの貯蔵安定性について

インキメーカーより各インキについて品質保証期間が報告されていると思います。
ですが、一般の印刷インキに比べるとUVインキは期間が短いような気がしませんか?
これにはUVインキ特有の理由があります。

UVインキは紫外線が光開始剤に照射されると開裂して電子が発生し、これが樹脂に存在する官能基を活性化させて架橋・重合するという反応により皮膜を形成すると何度か書いています。
言い方が悪いかもしれませんが、光開始剤は光(紫外線)が当たっただけでも壊れてしまう(開裂する)非常に脆い(安定性が劣る)物質であると言えます。
従って、光以外の刺激によっても光開始剤が開裂することがあり、光が当たらなくても電子が発生して樹脂間を移動し、架橋・重合を開始してインキの増粘や硬化(固化)が発生する懸念があります。
この現象は一般的に『ゲル化』と呼ばれることが多いです。

上記の光(紫外線)以外の刺激としては、「温度」や「触媒」などがあり、温度に関しては高温になればなるほど反応は起こりやすく、インキメーカーはUVインキをできるだけ冷暗所で保管することを推奨しています。
更に高温になるだけではなく、温度変化が大きい場合も刺激となりやすいのです。
冷暗所(冷蔵庫)で保管していたインキを取り出してしばらく放置し、業務終了後にまた冷蔵後で保管するといった作業は日常行われる事だと思います。
しかし保管時(冷蔵庫内)の0℃付近から印刷機周辺の外気温まで温度が上昇し、再び0℃まで下がるということは過酷な環境(上下20℃程度の寒暖差)であります。
従って、UVインキはできれば低温(冷蔵庫など)で保管された方が良いですが、それに加えて温度変化が少ない冷暗所などで保管された方が良いです。

あと、温度以外の刺激として「触媒」と書かせて頂きました。少し難しい言葉かもしれません。
「触媒」とは、存在することで通常起こりうる反応をより促進させる効果を有する物質のことを指し、反応によって「触媒」自体は見かけ上、化学的に何も変化が起こりません。
一般的な酸化重合型インキに使用している乾燥剤も一種の触媒と呼ぶことができ、乾燥剤が空気中の酸素を取り込んで樹脂を反応(重合)させる働きを行いますが、乾燥剤自体は空気中の酸素を取り込むだけで化学的に変化がないため、酸素と未重合の樹脂成分が存在する限り、長期にわたってこの反応が続きます(通常の反応では、反応すればそこで終了となります)。
この乾燥剤は金属石鹸とも呼ばれ、コバルトやマンガンなどの金属を主成分とした組成となっており、金属にはこのような触媒のような働きを有するものがあります。
つまりUVインキに活性の高い金属が接触すれば、その金属が「触媒」としての働きを行い、紫外線が当たらなくても反応を引き起こすことがあるのです。

「印刷機や版は金属でできているから接触する可能性もあるが、UVインキ自体には乾燥剤も使っていないし金属なんて含まれていないのでは?」と思われるかもしれません。

しかし印刷インキの原材料には多くの金属が使用されているのです。

それは顔料です。

簡単に挙げると、原色藍や草顔料は『銅』、金赤顔料は『バリウム』、紫顔料は『モリブデン』、白顔料は『チタン』などの金属を骨格とし、様々な化学反応を施して発色・安定化させています。
反対に、化学反応を施していない金属(表面処理はしていますが)を顔料として使用しているインキとして、金インキ(真鍮(銅‐亜鉛合金))、銀インキ(アルミニウム)などがあります。

従って、化学反応を施しておらず活性の高い金属を混ぜ込んだUV金・銀インキは、一般のUV色インキに比べると安定性が劣る傾向があり、品質保証期間もその分、短くなっています。
このことからUV金・銀インキの保管については、他のUV色インキよりも更に十分留意して頂きたいと思います。

なお、UV金・銀インキについては、一般のUV色インキとは異なる特殊な原材料を使用してゲル化を抑制する配合を施していることが多いのですが、UV金・銀インキに一般色インキを混ぜて作成する特色対応を行うことがあると思います(現場あるいはインキメーカーにて)。
その場合、たとえインキメーカーが製造したUV特色メタリックインキであっても、一般UV色インキが混ざることで安定性のバランスが崩れやすくなり、未開封でもゲル化する可能性が高くなります(特に現場で異なるインキメーカーのインキを混合する場合は顕著に現れます)。
従ってUV特色メタリックインキについては、できるだけ早く使い切る、必要最低限量での発注・あるいは調色を行う、現場で調色する場合はできるだけ同一メーカーのインキを使用する などを留意して頂きたいと思います。

また、上記以外でも水分や異物などが混入することでゲル化の発生が起こりえます。
インキ壺に残ったインキを再度缶に戻して保管し、再使用されているかもしれません。

インキ壺上のインキは湿し水や紙粉、その他ごみなどが混入することがあります。
また蛍光灯などの照明を浴びて光開始剤の開裂が起こっているかもしれません。

上記のような使用したインキを再利用するという行動はトラブル発生の要因となりますので、できる限り避けて頂きたいと思います。

次回ももう少しUVインキを使用する際の難しい点について。

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