図書館資料保存ワークショップ
[図書館に修復室をツクろう!]98
「修理系司書の集い」のイベント第2弾開催!
2024年12月17日東京五反田の株式会社ブレインテック 東京オフィス(本社) ショールームをお借りし”修理実験だよ!全員集合リアル!修理系司書の集い第2弾“と称してリアルイベントを開催、無事成功裏に終了しました。
今回のイベントでは、2023年の図書館総合展で実施した「修理する?しない? -資料保存の現場見える化アンケート第2弾!-」にいただいた回答やご意見を細かく分析して行くうちに、浮かび上がって来た事柄について実験してみることになりました。
実験の第一は、一口にでんぷん糊といっても、さまざまな種類があること。各糊で修理用和紙を種々の紙に貼る場合、その感触は?強度は?再修理の時などの剝がし易さは?
いろんな紙にいろんな糊で和紙を貼ってみよう。
実験の第二は、革装や合皮の表紙の辞書などの汚れやカビはアルコールで拭いて清掃、消毒するとされているが、果たして色落ちなどの影響を受けるのではないか?という疑問から、アルコールで革や合皮を拭いてみよう。となりました。
修理実験を紹介します。
第一の実験
糊は8種類(写真2:糊の種類、写真3:糊の種類2、写真4:実験に使用した物品、表:実験に使用した物品)を「酸化した紙と色見返し」(写真5:事前作成見本)、「コピー用紙」(写真6:事前作成見本)に貼ってみます。
なお、生麩糊を粉から電子レンジで作成した動画を会場モニターで上映していただきました。(写真7:生麩糊作成動画モニター)
参加の方たちには各自貼りつけた紙を持ち帰っていただきました。水だけで剥がしてみたり、時間経過による和紙の色変化などを見てもらえます。
第二の実験
革をアルコール(消毒用エタノールに加水したもの)で拭ってみる実験(写真8:アルコール色落ち実験資材、写真9:アルコール色落ち実験説明道具、写真10:アルコール色落ち実験風景)です。
小さいサイズで分かりにくいのですが、写真の「アルコール色落ち実験風景」右下に拭った後、色の着いた綿棒が写っています。
これまで図書館総合展ポスターセッションに参加したアンケート関係資料の展示やお茶とお菓子で休憩・おしゃべりコーナーも設けました。(写真11)
”修理実験だよ!全員集合“イベントのまとめはまだできていないのですが、昨年の図書館総合展サテライトとしてのリアルイベント開催と比べて、また違った工夫が必要でした。
昨年の会場は「ものことあとりえ一頁」さんでしたので、和紙を糊で貼ったり、水濡れ資料吸水体験に必要な道具や材料などをすべて新たに用意する必要はなかったのですが、今回はブレインテックさんのショールームでの開催でしたので、修理関係の材料や道具一切は持ち込まなければなりませんでした。一方、日頃から自社イベントを多数開催されている図書館システムメーカーさんなので、前述の大型モニターやディスプレイ用品などの充実したイベントグッズをお借りすることができました。ちょうど私たちのイベントの翌日、ショールームを多目的スペース「tekute cross」としてリニューアルオープンされたそうです。図書館関係者の交流の場として期待できそうです。
さらに、東京での開催とあって、昨年の開催地京都伏見と比べると遥かに広域で、しかも平日(火曜日)の午後。参加くださる人数も予測困難でした。
しかし、今年も26人の方たちが訪れ、熱心に修理体験に参加してくださいました。がそれにとどまらず、図書館資料修理、保存全般に渡ってのご相談、情報交換にも関心を寄せてくださる参加者も少なからず居られました。
気軽に図書館資料保存、利用のための修理などに関する情報交換、集いの場をつくる。というわたしたちの本来の目的にいよいよ本気に取り組みたい。と背中を押された思いです。
図書館資料保存ワークショップ
堤 美智子(M.T.)