生田信一(ファーインク)
「ようこそデザニャーレ-東京どうぶつえん すいぞくえんデザイン室-」に行ってきました(後編)
井の頭自然文化園で開催中の特設展「ようこそデザニャーレ-東京どうぶつえん すいぞくえんデザイン室-」をお伝えするレポートの後編です。今回のコラムではショールーム、資料室の展示の様子を紹介します。
では、一緒にのぞいてみましょう。
資料室、インタビュー
資料室では、デザイナーたちが制作した印刷物や参考にしている本などを手にとって見ることができます(写真17、18)。
資料室のパソコンのモニターでは、過去に作られた制作物を集めたデジタルアーカイブが閲覧できます(写19、20)。
さらに資料室では、園内でデザインを担当するスタッフのみなさんのインタビューのムービーを見ることができます(写真21)。
ムービーでは、動物園や水族園に勤務する3名のデザイナーさんがインタビューに答えて、制作現場の裏側を語っています。この仕事を選ばれたきっかけは? どんな苦労があるの? 将来の夢は? といったテーマで語られた20分ほどのインタビューで、興味深く拝聴しました。以下に一部を抜粋して紹介します。
まず、動物園・水族園デザイナーのスタッフの役割についてです。動物をデザインすると言っても、動物の展示方法を企画・デザインするのではなく、私たちが担当しているのは、たとえばイベントのポスターやチラシを作ったり、園内に掲示するサインや解説のパネルなどを作る仕事がメインになります。
デザイナーがいない動物園や水族園もありますが、そうした場合は、看板屋さんに作ってもらったり、デザインを外注に出す場合もあるとのこと。また、簡単なものであれば職員で作ることもあるそうです。
生きものを絵で表現する場合は、例えば、前後の足の指の本数を間違えないようにするなど、違和感がないように正確に描く必要があります。実際に生きものを観察したり担当飼育係に確認したり、事務所にある図書コーナーで資料を探したりして仕上げていきます。
デザインを進めていくなかでは、関わる人たちとコミュニケーションをとることが大切だと語ります。飼育担当の方や外部の業者さんと打ち合わせを重ね、すり合わせしながら作っていくそうです。
外国からのお客さんとのコミュニケーションで苦労されていることは? という質問では、「解説や注意書きを掲示する場合にも、英語表記を付けたり、ピクトグラムやイラストを使って伝わるように工夫しています。子供からお年寄りまで、幅広いお客様に伝わるようにしています」と語ります。
「デザイナーのみなさんはどういう課題があると感じておられますか?」という質問には、「都立動物園・水族園にデザイナーが在籍しているといっても、まだ人数は少ない。国内の動物園や水族館ではデザイナーがいない園館もあります。教育系の部門で、デザインができる人を雇う場合もありますが、そもそも教育系の部門がない園館もあります。生きものの魅力をよりわかりやすく、より楽しく伝えるために、デザインの大切さを多くの人に知ってもらいたい」と語ります。
会場を出たところに設置されたスタンプコーナーでは、過去に開催したスタンプラリーのスタンプを押すことができます(写真22)。
かけ足で「デザニャーレ」の展示をお伝えしました。動物園や水族園を訪れるみなさんが楽しんでもらうためにも、デザインは大切な役割を果たしていることを改めて実感しました。このイベントは2024年9月1日まで開催されています。ぜひ訪れてみてください。
ようこそデザニャーレ-東京どうぶつえん すいぞくえんデザイン室-
期間 2024年3月31日(日)〜9月1日(日)各日9時30分~16時30分
場所 井の頭自然文化園 動物園(本園)資料館1階
特設サイトURL https://www.tokyo-zoo.net/event/designyare/
特設InstagramアカウントURL https://www.instagram.com/designyare/